日本人のがんの死亡原因の第2位(男女計)は大腸がんといわれています。この大腸がんとは、どのような病気なのでしょうか。死亡率やリスクファクター(病気を引き起こすリスク要因)、大腸がんに対する基礎知識や治療方法について、渡邉純先生に教えていただきました。
口から入った食物は、食道、胃、小腸を経て大腸へ到着します。大腸の役割は食物の栄養分の残りと水分を吸収し、残ったものを便にして肛門へ運ぶことです。具体的には、糞便を硬くするために、腸管の壁にある血管で水分と塩類を吸収したり、反対に糞便をなめらかにするために粘液を分泌したりしています。この一連の大腸の運動は、自律神経により調節されています。
大腸は結腸・直腸に分かれ、広げた長さは全長1.5~2mにも及びます。
結腸は、次のとおりさらに細かく分類されます。
直腸は、結腸の後に続く約15cmの真っすぐな部分のことをいいます。そして、最後の肛門括約筋のあるところが肛門管です。
食物は、筋肉の運動によって盲腸から直腸へ移動します。直腸が拡張することで便意が生じ、溜まった便を肛門から押し出します。これが排便の流れです。
先に書いたとおり、大腸は「結腸」と「直腸」に大きく分かれていますが、結腸に発生したがんを「結腸がん」、直腸に発生したがんを「直腸がん」といいます。ここでは、その違いを簡単にまとめてみましょう。
結腸に発生したがんを「結腸がん」といいます。盲腸と上行結腸のがんは腸内の直径が太く、便通異常が起こりにくいため、発見が容易ではありません。一方、下行結腸やS状結腸では、がんにより腸内管の直径が狭くなると便が通過しにくくなるので、下痢などの異常がみられ、比較的発見しやすいとされています。
直腸に発生したがんを「直腸がん」といいます。直腸がんは、出血により便に血液が付着して発見されることが多いがんです。直腸がんによる出血は比較的赤い鮮血のことが多いといわれています。
このように大腸がんは「結腸がん」と「直腸がん」に分けられますが、罹患率の割合では、結腸がんが約60%(盲腸約6%、上行結腸約13%、横行結腸約8%、下行結腸約5%、S状結腸約28%)、直腸がんが約40%と、結腸がんのほうが若干多くなっています。
「結腸がん」と「直腸がん」では症状の出やすさに違いがあります。一般的に肛門から遠ければ遠いほど症状が出にくく、そのため上行結腸や横行結腸のがんは初期症状が少ないといわれています。便の中に混ざる血液も、肛門から遠いほど酸化して黒くなり、また便にまぎれてしまうために目に見える血便は現れにくいとされています。
一方、肛門に近いS状結腸や直腸にできたがんによる出血は、血が赤いうちに体外に排出されるため、目で確認できることもあります。
しかし、治療で考えると、結腸がんより直腸がんのほうが大がかりになることが一般的です。理由としては、直腸は骨盤の深いところに位置し、周囲に神経や筋肉が多いためです。また、術後に排尿障害や性機能障害などが起こることもあります。がんの進行具合により肛門まで切除することがありますが、この場合、人工肛門(ストーマ)を造る必要があります。
これは全ての病気にいえますが、大腸がんはなるべく早く見つけることが重要です。そのために、定期的な検査はもちろん、毎日の便の色を観察するなど、自分でできる確認がとても大切なのです。
大腸がんの罹患率は1990年代前半まで増加の一途をたどり、その後は横ばいになりました。
死亡率は1990年代半ばをピークに、その後は減少傾向にあります。
がんは日本人の死因の1位です1。部位別にがんによって死亡した方の数をみると、大腸がんは肺がんに次いで第2位となっています。また、女性だけでみると乳がんや子宮がんをおさえ、死因第1位です2。それほど日本人にとって身近な「がん」といえます。
日本人の死因に大腸がんが多い理由として、自覚症状が少ないことが挙げられるかもしれません。大腸がんは悪性度こそそれほど高くはないものの、自覚症状に乏しく発見されたときには進行した状態であることも多いため、死亡数が多くなると考えられています。
1平成 29 年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況. 厚生労働省.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/index.html.
2国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」. 2019-05-16.
関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授
関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授
日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医日本消化器病学会 消化器病専門医日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医・大腸肛門病指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医日本臨床腫瘍学会 暫定指導医
世界も認める大腸がん腹腔鏡手術のニューリーダー
大腸がんの腹腔鏡手術を専門とする消化器外科医。
少年時代に受けた胸腔鏡手術の経験から医学の可能性を見出し、医師を志した。
患者さんへ最良の手術を提供することを信念に、腹腔鏡手術を中心に大腸がん治療を提供。
内視鏡手術の技術認定医であり、その技術力の高さは国際的にも定評がある。
これまで述べ1,500例を超える腹腔鏡手術を執刀。
横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター 外科 准教授を経て、2024年より関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授に就任。
渡邉 純 先生の所属医療機関
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