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写真・画像でみる大腸がんの腹腔鏡手術

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  • #消化器(食道・胃・腸)の病気
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  • 公開日:2016/08/10
  • 更新日:2017/01/14
写真・画像でみる大腸がんの腹腔鏡手術

目次

日本人の死亡原因の第1位は大腸がんといわれています。この大腸がんとはどのような病気なのでしょうか。死亡率やリスクファクター(病気を引き起こすリスク要因)など大腸がんに対する基礎知識や治療方法について、横須賀共済病院 外科副部長の渡邉純先生に教えていただきました。

そもそも大腸とは?

大腸の位置
大腸の位置

口腔から入った食物は、食道、胃、小腸を経て大腸へ到着します。大腸の役割は食物の栄養分の残りと水分を吸収して、残ったものを便として肛門へと運ぶことです。具体的には糞便を固くするために腸管の壁にある血管で水分と塩類を吸収したり、反対に糞便をなめらかにするために粘液を分泌したりしています。

大腸は結腸・直腸に分かれています。結腸も部位により盲腸、上行結腸(盲腸から上に向かう部分)、横行結腸(折れて横に向かう部分)、下行結腸(下に向かう部分)、S状結腸(S字状に曲がっている部分)に細かく分類されます。食物はまず盲腸に到達します。直腸は結腸の後に続く約15cmの真っすぐな部分のことをいいます。そして、最後の肛門括約筋のあるところが肛門管です。大腸を広げると長さは全長1.5~2メートルにも及びます。

食物は筋肉の運動によって盲腸から直腸へ移動します。そして、直腸が拡張することで便意が生じ、溜まった便を肛門から押し出すという流れになります。この一連の大腸の運動は自律神経により調節されています。

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大腸がんの種類

先に書いたとおり、大腸は大きく「結腸」と「直腸」に分かれていますが、結腸に発生したがんを「結腸がん」、直腸に発生したがんを「直腸がん」といいます。ここでは、その違いを簡単にまとめてみましょう。

大腸詳細
大腸詳細

●結腸がん

結腸に発生したがんを「結腸がん」といいます。盲腸と上行結腸のがんは腸内の直径が太く、便通異常が起こりにくいため発見が容易ではありません。一方、下行結腸やS状結腸では、がんにより腸内管の直径が狭くなると便が通過しにくくなるので、下痢などの異常が見られ、比較的発見しやすいとされています。

●直腸がん

直腸に発生したがんを「直腸がん」といいます。直腸がんは、出血により便に血液が付着するので発見されることが多いです。直腸がんによる出血は比較的赤い鮮血のことが多いといわれています。

結腸がんと直腸がんの割合は?

このように大腸がんは「結腸がん」と「直腸がん」に分けられますが、罹患率の割合では、結腸がんが約60%(盲腸約6%、上行結腸約13%、横行結腸約8%、下行結腸約5%、S状結腸約28%)、直腸がんが約40%と結腸がんのほうが若干多くなっています。

渡邉純先生

結腸がんと直腸がんの違いー症状の出やすさが異なる

「結腸がん」と「直腸がん」では症状の出やすさに違いがあります。一般的に肛門から遠ければ遠いほど症状が出にくく、そのため上行結腸や横行結腸のがんは初期症状が少ないといわれています。便の中に混ざる血液も、肛門から遠いほど酸化して黒くなり、また便にまぎれてしまうために目に見える血便は現れにくいとされています。

一方、肛門に近いS状結腸や直腸にできたがんによる出血は、血が赤いうちに体外に排出されるため、目で確認できることもあります。

しかし、治療で考えると結腸がんより直腸がんの方が大掛かりになることが一般的です。というのも直腸は骨盤の深いところに位置し、周囲に神経や筋肉が多いためです。また、術後に排尿障害や性機能障害などが起こることもあります。がんの進行具合により肛門まで切除することがありますが、この場合、人工肛門(ストマ)を造る必要があります。

これはすべての病気についていえるのですが、大腸がんはなるべく早く見つけることが重要です。そのために定期的な検査はもちろん、毎日の便の色を観察するなど自分でできる確認もとても大切なのです。

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データから見た大腸がんー死亡率など

大腸がんの罹患率は1990年代前半まで増加の一途をたどり、その後は横ばいになりました。死亡率は1990年代半ばをピークに、その後は減少傾向にあります。

大腸がんが死因となる確率は高い?

がんは日本人の死因の1位ですが、その内訳を詳しく見ると「大腸がん」は「肺がん」に次いで第2位という日本人にとって身近な「がん」といえます。

また、女性だけでみると「乳がん」や「子宮がん」をおさえ第1位です。その理由として、自覚症状が挙げられるかもしれません。大腸がんは悪性度こそそれほど高くはないものの、自覚症状に乏しく発見された時には進行した状態であることも多いため、死亡率が高くなるのです。

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大腸がんの要因ー原因や予防

大腸がんの原因ー生活習慣が大きい

大腸がんのはっきりとした原因は解明されていませんが、研究によりいくつかの可能性が指摘されています。

大腸がんの3つの原因

●食文化の欧米化

大腸がんの要因として指摘されているものは、飲酒や肥満といった生活習慣に関わることと、赤肉(牛・豚・羊の肉)や加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)などの食生活の欧米化です。

これらの高脂肪・高たんぱくかつ低繊維成分の食事は便が大腸にとどまる時間が長くなり、便に含まれる発がん性物質が影響してがんが発生しやすくなると言われています。

●たばこ

たばこは大腸だけではなく身体全体に影響を与えるといわれています。発がん性物質を取り込むため、たばこを吸う方はそうでない方に比べて約7倍大腸がんになりやすいともいわれています。

●過度の飲酒

大量のお酒を摂取することもリスク要因になるといわれています。欧米人に比べ日本人の方がアルコールの影響を受けやすいため、がんに罹患しやすいと報告されています。

●運動不足

デスクワークの多い方は大腸がんになりやすいといわれています。リスクを軽減するためにも日々のなかに運動を取り入れることは大切です。

●肥満

男性では特にBMIが27以上の肥満の方に罹患する可能性が上昇するという報告があります。

●遺伝

大腸にポリープができやすい体質の方がいますが、これには遺伝的要因が考えられています。現在、遺伝的要因として明らかなものとして、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス大腸がんがあります。他にも高身長の方ほど発症リスクが高いといった身体的要因や、リンチ症候群の方がいると発症リスクが高いといった遺伝的要因が指摘されています。

がんの予防は可能?

がんの予防策として、以下が挙げられます。他の疾患と共通する部分が多いですが、日常生活での少しの心がけが、がんに罹りにくい体づくりの基本といえるかもしれません。

・バランスの取れた栄養素を摂る
・毎日変化のある食生活を意識する
・食べ過ぎを避け、脂肪分は控えめにする
・お酒は飲んでもほどほどにする
・タバコは吸わない
・食べ物から適量のビタミンと繊維質を多く摂る
・塩辛いものは少なめにして、熱いものは冷ましてから食べるようにする
・焦げた部分は避ける
・カビの生えたものには注意する
・日光に当たりすぎない
・適度に運動をする
・身体を清潔にする

大腸がんの発生経路は?

大腸がんの発生には、大腸の内側の粘膜にできた良性の腫瘍(ポリープ)が変化して悪性のがんになる場合と初めから粘膜に直接がんが発生する場合の2つがあると言われています。

いずれも粘膜で発生し、大腸壁の外側の層に向かって進行し、進行度によってはリンパ節や他の臓器に転移します。このような進行過程の中で、癌の浸潤が粘膜下層までに留まった状態のものを「早期大腸がん」、粘膜下層を超えて固有筋層や漿膜下層、漿膜にまで深く浸潤している状態のものを「進行大腸がん」と呼びます。

つまり、ステージ0の段階が早期大腸がんで、ステージⅠ~Ⅳの段階が進行大腸がんということになります。

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大腸がんの症状

早期の大腸がんは自覚症状がほとんどないため、大腸がん検診や人間ドックなどの便潜血検査で見つかることが多いです。進行した大腸がんでは腫瘍の大きさや部位により症状が変わります。

大腸がんの疑いのある症状

早期大腸がんの特徴や症状

早期大腸がんの場合、自覚症状はほとんどありません。早期とは、腫瘍が粘膜表層より深いところまで広がっていない段階のことです。がんが粘膜を越えて大腸の壁の外側に広がるにつれて症状が現れるようになります。

早期発見・早期治療が重要な大腸がんですが、自覚症状がまだない状況で発見するには、市町村の検診などで行われる便潜血検査を定期的に受ける必要があります。また、日常的に便を観察することでも気付ける可能性があります

進行大腸がんの特徴や症状

進行大腸がんによる一般的な症状として次のようなものがあります。

・排便の変化

血便、下血(肛門からの出血)、便が細くなる、下痢と便秘の繰り返し、便が残った感じがする

・お腹の変化

お腹の張り、腹痛、お腹にしこりがある

・その他

貧血、嘔吐、体重減少、食欲不振、腸閉塞、腰痛

進行がん画像
大腸の進行がんの写真

固有筋層以降までがんが浸潤した進行大腸がんでは、様々な症状が現れてきます。例えば、排便において血便が出るのはもちろんのこと、肛門から出血したり、便が細くなったり、下痢と便秘を繰り返したり、残便感を感じたりするようになります。また、腹部の張りやしこり、腹痛が起こることもありますし、貧血や嘔吐、急激な体重減少なども症状として現れます。

また、ひとくちに進行大腸がんというと、その範囲は広くなってしまいます。腫瘍の大きさと部位により症状が異なりますが、部位により特徴があるのでそれを確認しましょう。

●右側にできた結腸がん

この部位にできた大腸がんは症状が出にくいという特徴があります。症状があったとしても軽い腹痛や腹部の違和感程度です。かなり大きくなると腹部のしこりや原因不明の貧血が起こり、検査を受けた際に発見されることもあります。

●左側にできた結腸がん

比較的早期から便に血が混ざったり、血の塊がみられたりする症状が現れます。他にも腹痛や便が細くなる、残便感、便秘と下痢を繰り返すなどの症状が現れ、放っておくと便やガスも出なくなり腸閉塞の状態となります。

●直腸がん

左側にできた結腸がんと同様の症状が見られます。肛門に近い部位のため痔と間違えられる出血があります。がんが膀胱や子宮に浸潤(拡がる)すると排尿障害や血尿、膣から便が出るなどの症状があります。

大腸がんの自覚症状は便に関するものが多いです。そのため毎日排便があることや、便自体の状態がよいことが重要です。大腸がんで特徴的といえるのが血便です。特に血便の頻度が高くなると大腸がんの可能性も高くなるといわれているため、血便が見られた場合には病院の受診を検討したほうがよいでしょう。

痔と大腸がんの見分け方ー出血の仕方が異なる

痔になると大腸がんと同様に血便が出ますが、痔と大腸がんでの出血には違いがあります。痔と大腸がんでは疾患に雲泥の差があるので、その違いを理解しておきましょう。

痔の場合は、排便時の便の通過によって出血するため、便の周りに血がつくことはありません。また、比較的出血量が多く、便器に垂れたりもします。

一方で、大腸がんの場合は少しずつじわじわと出血し続け、出血量が増えると便の周りに血がつくようになります。ただし、上行結腸や横行結腸のがんなど肛門から遠いところにできたがんは、血液が途中で便に紛れてしまい、血便として現れにくいことがあります。

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大腸がんの検査と診断

便潜血検査

便潜血検査
便潜血検査キット

大腸がん検診の基本になるものが「便潜血検査」です。

別名はヒトヘモグロビン法といわれ、名前の通り便に血が混じっていないかを検査します。大腸がんの多くは出血しやすいですが出血量は少量ですので、目には見えません。そのため血液の主要成分のひとつであるヘモグロビンが含まれていないか調べて、大腸がんの可能性を確認しようという方法です。

・検査の目的

便潜血検査を行う目的は「大腸がんかどうか判断する」というよりは「確率の高いグループと低いグループにふるい分ける」ことです。そのため、便潜血検査は陽性となっても、実はその約95%以上の方は大腸がんではないとされています。これは大腸がんを見逃さないよう、便潜血検査で少しでも大腸がんの可能性があれば「疑いがある」と判定するためです。

また、この検査では痔などによる肛門からの出血でも陽性が出てしまいます。反対に胃や十二指腸の少量の出血は消化されてしまい反応しません。

・がんである確率

便潜血検査で陽性が出た方は陰性の人に比べれば、がんの確率は10倍といわれています。大腸がん検診で陽性が出たら詳しい検査をするためのよいきっかけだと思いましょう。ただし、大腸がん検診で陰性(便潜血反応陰性)の場合でも、がんである可能性がゼロというわけではありません。

便潜血検査は公費の補助により行われ、費用対効果がとても優れています。ときに大腸がんでない方でも陽性反応を示すなど欠点もありますが、進行した状態で発見されてからでは取り返しがつきません。

症状がないのに検査をするのは億劫に感じるかもしれませんが、がんから命を守るためにも積極的に検査を受けるようにしたいものです。

精密検査

イラスト

便潜血検査で陽性結果が出た場合は、大腸内視鏡やバリウムを使用した大腸透視などの精密検査へと移ります。精密検査ではまず小型カメラが取り付けられた内視鏡を用いて大腸内を観察する「内視鏡検査」を行います。

がんが見つかれば、肛門からバリウムと空気を注入してレントゲン撮影を行う「注腸造影検査」、さらに転移の有無や転移部位を確認するために、胸部腹部CTや腹部超音波検査、MRIなどの検査が行われます。

1:内視鏡検査

小型カメラが付いた内視鏡を肛門から入れ検査をします。モニターにて大腸の状態を詳しく調べることができ、細胞の採取や小さな腫瘍を切除することもできます。注腸造影同様、前日か当日に下剤を飲む必要があります。

◎全大腸内視鏡検査:内視鏡を肛門から入れて大腸の全体を調べます。大腸がんを95%以上発見できることがメリットですが、下剤の服用や検査中に出血することがあるなどデメリットもあります。

◎S状結腸内視鏡検査:メリットは全大腸内視鏡検査よりも検査前の処置が容易なこと、デメリットは全大腸内視鏡検査よりも検査できる範囲が狭くなることです。

2:注腸造影

バリウムと空気を肛門から注入し大腸のレントゲンを撮影します。がんの位置や大きさなどを確認できますが2~3日前から繊維の少ない食事をしたり、前日に下剤を飲み大腸を綺麗にするなど事前準備が必要です。

大腸に造影剤(バリウム)を注入し、X線を撮影します。メリットは内視鏡を入れることができない方でも検査が行えることです。デメリットは精度の面で大腸内視鏡検査に劣ることと、検査前の処置や検査中の負担です。癒着や痛みがあり内視鏡検査を行えない場合、この方法を用いることがあります

3:胸部X線検査

大腸がんが進行してリンパ節へ転移すると、がんが全身に遠隔転移します。そのため、がんが重症化している可能性があるときには、肺へ転移していないか検査を行います。

4:腹部超音波(エコー)検査

超音波を腹部に当て、がんの位置の確認や肝臓・リンパ節に転移していないかなど調べることができます。

5:CT検査

コンピュータ断層撮影検査といい、身体を輪切りに画像化し、がんの位置・形・大きさ・肝臓やリンパ節などに転移がないか調べます。注射で血管に造影剤を入れて撮影することもあります。

6:MRI検査

磁気共鳴画像法といいます。磁石を使用しCTと同様身体を輪切りにして画像化します。

7:PET検査

陽電子断層撮影法といいます。がん細胞は正常な細胞に比べ、3~8倍のブドウ糖を取り込みます。この性質を利用し、ブドウ糖の取り込み分布を撮影し全身へのがんの転移を検査します。

対策型大腸検診と任意型検診

広がっていない初期の段階で見つけることができれば、大腸がんが治る確率は95%以上といわれています。早期発見のため、大腸がん検診は是非とも受診しておきたいところです。大腸がんの検診には、対策型検診と任意型検診の2種類があります。

●対策型大腸がん

市町村などの自治体や職場が主体となり行う大腸がん検診です。40歳以上の方が対象で1年に1回受診することが勧められています。大腸がんで死亡する確率は40歳を過ぎると急激に上昇するため40歳以上の方は定期的に検診を行い、がん予防と早期発見・早期治療を行うことが大切です。

●任意型検診

個人の希望により行う大腸がん検診です。検査を行う施設により受ける検査は異なります。有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、対策型検診と同様の便潜血検査を行うことを推奨しています。その他では、全大腸内視鏡検査、S状結腸内視鏡検査、便潜血検査+S状結腸内視鏡検査、注腸X線検査などがあります。

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大腸がんの診断・ステージ

大腸がんは大腸に発生する悪性腫瘍であり、その進行度(ステージ)は以下の3つの観点で区別されています。どのステージにあるかは精密検査で把握することができます。

大腸がんのステージ
大腸がんのステージ

大腸の壁に対する深達度

大腸の壁は5層からできており、内側から粘膜、粘膜下組織、固有筋層、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜と呼ばれています。粘膜は直接便に触れる腸管の最表面で、大腸がんはまず初めにここで発生します。この粘膜で留まっている状況は深達度Tisに分類されます。

粘膜下層は粘膜の下に位置する層で、血管やリンパ管が多く存在します。この粘膜下層まで進行した状態は深達度T1に分類され、転移の可能性が出てきます。次いで、固有筋層は大腸を動かす筋肉の層で、ここまで達した状態は深達度T2に分類されます。

そして、固有筋層を超えて進行した状態は深達度T3に分類され、血管やリンパ管の通り道である漿膜下層まで進行していることになります。さらに、大腸の最外層である漿膜まで達する、あるいはこの層を超えると深達度はT4に分類され、周辺の臓器にまで浸潤する可能性が出てきます。

リンパ節への転移の有無

体内から排泄された物質を運ぶリンパ液が通る管をリンパ管と呼び、そのリンパ管同士が繋がっているリンパ節に大腸がんが転移する可能性があります。リンパ節への転移状態によって3つに分類されます。全く転移が見られない状態をN0、リンパ節への転移が1~3個存在する場合をN1、4個以上存在する場合をN2と分類します。

他の臓器への転移の有無

大腸がんは肺や肝臓、腹膜などに転移することがあります。このような他の臓器への転移が認められない場合はM0、認められる場合はM1と2つに分類されます。この3つの観点から大腸がんのステージは0~Ⅳまでの5段階に分類され、ステージが進むほど、大腸がんが進行しているということになります。各ステージでのがんの状態と5年生存率は以下の通りです。

※カッコ内の数値は5年生存率

・ステージ0  (94.0%):大腸壁の最も内側、粘膜までで留まっている状態
・ステージⅠ  (91.6%):固有筋層まで進行している状態
・ステージⅡ  (84.8%):固有筋層を超えており、リンパ節への転移リスクが高い状態
・ステージⅢa(77.7%):固有筋層を超えており、3個以下のリンパ節転移が認められる状態
・ステージⅢb(60.0%):固有筋層を超えており、4個以上のリンパ節転移が認められる状態
・ステージⅣ  (18.8%):他の臓器に転移が認められる状態

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大腸がんの治療概要ー内視鏡治療や外科手術など

ステージによって異なりますが、大腸がんの治療には、内視鏡治療・外科手術・化学療法・放射線療法などがあり、患者の状態に合わせてこれらの治療法を組み合わせて行うのが一般的です。

内視鏡治療

内視鏡とは、肛門などからカメラと光源のついた管を通し、大腸の内部をカメラで観察しながらがんを切除することができる医療機器です。(内視鏡治療については後述)

外科手術

手術風景
手術風景

外科手術(開腹もしくは腹腔鏡)は体内からがんを直接取り除くことができるため、進行がんの治療方法として高い効果が期待できます。大腸がんには「結腸がん」と「直腸がん」の2つがありますが、それぞれでいくつかの手術方法があります。結腸がんの場合は、がんのある腫瘍部から10cm程度離れた部分の腸管を切除し、その後腫瘍を取り除いた部分の腸管どうしを縫い合わせてつなげます。

また、ステージによってはリンパ節に転移している可能性や実際に転移していることもあるため、腸管近くにある腸管傍リンパ節や腸管に流入する血管に沿った中間リンパ節、その血管の根元に存在する主リンパ節を合わせて切除するリンパ節郭清(かくせい)も行われます。後述の直腸癌手術とは異なり、外科手術では手術後の排便や排尿などの機能障害が起こることはほとんどないとされています。

手術方法としては、回盲部切除術や結腸右半切除術、結腸左半切除術、横行結腸切除術、S状結腸切除術があります。次いで、直腸がんの手術方法は腫瘍の位置や大きさによっても異なりますが、いずれも腫瘍の周囲の組織あるいは腫瘍前後の腸管を切除して、その後切除部分を縫い合わせてつなぎます。

その際、排便や排尿、性機能を制御する神経も合わせて切除することがありますし、肛門を含めて切除する場合もあり、その場合には人工肛門が必要となります。なお、手術方法としては直腸局所切除術や前方切除術、直腸切断術(マイルズ手術)、括約筋間直腸切除術(ISR)が挙げられます。

(※外科手術については後述)

化学療法

化学療法とはがん細胞を死滅させたり、がん細胞の増殖速度を抑える働きのある抗がん剤を用いた治療方法です。抗がん剤の投薬方法は内服と注射の2つがあります。化学療法を行うことには従来は2つの目的があります。

1つは手術後の再発予防です。外科手術によってがんを切除したといっても、目には見えない小さながん細胞が残っている可能性はゼロではなく、これらが再び増殖することで再発を引き起こします。このような再発を防ぐための抗がん剤投与による治療を術後補助化学療法(アジュバント療法)と呼び、再発の可能性が高いステージⅡやⅢの患者で適応されます。2つ目の目的は手術が困難な場合や再発した場合のがんの進行抑制です。

さらに最近では術前化学療法(ネオアジュバント療法)とよばれる投与方法があります。これはいきなり外科手術を行っても根治が期待できない大きさのがんに対して、はじめに化学療法を行うことでがんの縮小やステージの低下を狙うものです。化学療法の効果がでれば、その後に外科手術を組み合わせて行い、根治を狙います。

放射線療法

放射線療法は非常に大きなエネルギーを持ったX線や電磁波(γ線など)を癌細胞およびその周辺の正常な細胞に照射し、癌細胞のDNAを傷つけて破壊し、癌細胞の増殖を抑える治療方法です。

正常な細胞にも照射されますが、時間の経過とともに元の状態に回復します。放射線の照射目的は2つあります。1つは、直腸がんに対して手術前の腫瘍の縮小とそれにより肛門を温存する手術とすること、また手術後の再発抑制を目的としたものです。2つ目の目的はがんによる痛みや出血などの症状を緩和するためで、切除が困難な末期大腸がんが対象となります。

ステージによって異なる治療方法

ステージごとの治療方法
ステージごとの治療方法

ステージ0やステージⅠの大腸がんで進行が比較的軽度な場合、内視鏡治療が行われます。ただし、がんが切り取れないほどの大きさだったり、転移の危険性が高いと判断されるような場合には、外科的な手術が必要になることもあります。

ステージⅠやⅡ、Ⅲに入っている場合

次に、早期がんからステージⅠに進行している場合、さらにステージⅡ、Ⅲに入っている場合は固有筋層を超えてがんが浸潤しているので、リンパ節への転移リスクが高くなります。開腹手術もしくは、炭酸ガスで膨らませた腹部に小さい穴を開けてカメラと細長い手術器具を入れる腹腔鏡下手術によって、大腸がんと共に転移している可能性のあるリンパ節を合わせて切除します。手術で実際の進行度がわかると、術後に追加で化学療法を行うことがあります。

●ステージⅣまで進行した場合

ステージⅣまで進行したがんの治療については、基本的には外科手術で大腸がんおよび転移部分を切除することになります。しかし手術が難しい場合は抗がん剤を投与する化学療法やがんに放射線をあててがん細胞が増殖するのを抑制する放射線療法が行われます。

また、いずれの治療も困難な場合には、がんによる痛みや気分の落ち込みなどを緩和する治療が行われます。

外科手術や抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法はいずれも合併症が現れる可能性があります。治療中だけでなく治療に入る前から医師とよく相談しながら、大腸がん治療を進めていかなければなりません。

また、手術後もがんを切除したからといって再発や転移が起こらないとは限りません。大腸がんの再発率はステージによっても異なりますが、ステージⅠでは3~4%、ステージⅡやⅢと進むにつれて再発率は高まり、ステージⅢの後期では再発率が40%とも言われています。また、大腸がん再発の約8割は手術から3年以内と言われており、特にこの期間の経過観察が重要です。

さらに、がん細胞がリンパや血液の流れに乗って他の臓器で新たにがんが発見される可能性もあります。大腸がんの場合、肝臓や肺への転移が多いとされており、特に肝臓への転移は他の転移部位も含めて全体の90%程度を占めます。ステージが進んでいればいるほど、再発や転移の可能性が高まるため、手術後も抗がん剤の服用や放射線治療などを継続したり、定期的にフォローアップ検診を受けて異常がないかどうかをチェックする必要があります。

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内視鏡治療ー開腹がなく低侵襲

早期大腸がんの内視鏡治療

大腸内視鏡は本来、大腸の中を観察して大腸がんの有無や進行の程度を確認するために用いられますが、大腸壁の粘膜で進行が留まっているステージ0の早期大腸がん、あるいは粘膜下層まで進行しているステージⅠの進行大腸がんでも比較的浸潤が浅い場合には内視鏡を用いた治療が行われ、この内視鏡治療が早期大腸がんの第一選択となっています。

内視鏡治療では小型のカメラを肛門から挿入し、大腸の内部や患部を直接画像として映し出しながら患部を特定し、その場で同様に肛門から挿入した小型の手術器具を用いて腫瘍を切除することができます。大腸の粘膜には神経が通っていないため、腫瘍部を切除されても痛みを感じることはなく、体への負担も小さいので、比較的短期間で退院が可能です。

内視鏡で大腸がんを切除する方法とは?

内視鏡で大腸がんを切除する方法は、腫瘍の形や大きさによって異なり、大きく分けて「ポリペクトミー」、「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」の3種類があります。

●ポリペクトミー

まず、ポリペクトミーですが、これは腫瘍がキノコのような形をしており、粘膜から細い茎が形成されていて、その先に太い傘(腫瘍部)がある場合に用いられる治療方法です。

およそ2cm未満の大きさの腫瘍が対象です。治療は、内視鏡の先端から出る細い金属の輪(スネア)をキノコ状の腫瘍の茎の部分に引っ掛け、スネアでその茎の部分を縛り、高周波電流を流して腫瘍部ごと茎の部分を焼き切るということが行われます。

●内視鏡的粘膜切除術(EMR)

次に、内視鏡的粘膜切除術(EMR)ですが、こちらは腫瘍部に茎が形成されていない場合に行われる治療法です。スネアを用いる治療方法であるため、対象となる腫瘍の大きさはおよそ2cm未満となります。

治療方法としては、まず内視鏡の先端から出る注射器で粘膜下層に生理食塩水などを注射し、腫瘍を固有筋層から持ち上げてポリペクトミーのように腫瘍と粘膜の間に茎となる部分を形成します。そして、その茎の部分にスネアを引っ掛けて縛り、高周波電流で焼き切ります。

また、腫瘍を一括で切除できないような大きさのがんが対象となる場合は、分割して腫瘍を切除する「内視鏡的粘膜分割切除術(EPMR)」が行われますが、その治療方法は基本的に内視鏡的粘膜切除術(EMR)と同じです。

●内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

最後に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)ですが、内視鏡的粘膜切除術(EMR)では切除することが困難な大きさの腫瘍の切除で行われます。

全身麻酔を行った上で、内視鏡的粘膜切除術と同様に生理食塩水などを腫瘍の下に注射して腫瘍を固有筋層から持ち上げ、電気メスを使って粘膜下層を剥離して切り取ります。この治療方法は、主に胃癌の治療に用いられ、大腸がんで用いられることはまだそれほど多くありません。それは大腸壁が胃壁よりも屈曲していて、なおかつ薄いゆえに、穿孔(大腸壁に穴が開く)や出血で腹膜炎などの合併症のリスクが高くなるためです。

一方で、ポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術に比べて小さな腫瘍の取り残しが少ないというメリットもあります。なお、ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術は外来で対応可能です(場合によっては、内視鏡的粘膜切除術では入院が必要となることもあります)が、内視鏡的粘膜下層剥離技術は数日の入院が必要となります。

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外科手術

進行大腸がんの手術形態は、腹部を大きく切開する開腹手術と腹部に小さな孔を数箇所開けて内視鏡や手術器具を挿入する腹腔鏡手術があります。患者への体の負担が小さいのは腹腔鏡手術ですが、進行大腸がんの場合は腫瘍の広がりや位置(特に骨盤の中にある直腸)によって時に対応が難しいとされています。

一方で、腹腔鏡手術では操作する組織を拡大してみることができるため細かい作業が可能であるといった利点もあり、腫瘍の進展、部位や医師の熟練度などを総合的に判断して患者にとって最も利益につながる手術方式が選択されます。

手術画像1
手術中の画像1
手術画像2
手術中の画像2

結腸がんの手術

結腸がんの手術は腫瘍が存在する部分を含めて大腸を切除し、腸同士を縫い合わせてつなぎます。腫瘍が結腸のどの部位にあるかによって切除範囲や切除術が決まります。例えば、以下の術式があります。

・回盲部切除術 :右下腹部にある盲腸と回腸(小腸)の中間部位にあたる回盲部の腫瘍を切除します。

・結腸右半切除術:右側腹部にある盲腸や上行結腸の間に存在する腫瘍を切除します。

・結腸左半切除術:左側腹部にある下行結腸に存在する腫瘍を切除します。

・横行結腸切除術:小腸の上に位置して右結腸と左結腸をつなぐ横行結腸に存在する腫瘍を切除します。

・S状結腸切除術:下行結腸末端と直腸上部を結ぶS字型の屈曲した結腸に存在する腫瘍を切除します。

直腸がんの手術

直腸がんの手術も腫瘍が存在する場所や進行の程度などから切除範囲や切除術が決まります。直腸は肛門の直上から15cm程度奥の場所にあり、骨盤に囲まれた狭い場所に位置すること、生殖器や泌尿器に関連した自律神経が存在していることなどから、結腸がんの手術に比べると難易度が高いとされています。術式としては以下があります。

●直腸局所切除術

切除範囲が小さく限られた範囲で、リンパ節郭清を行わない場合もあります。また、肛門は切除せずに温存することが可能な術式です。

●前方切除術

直腸S状部や上部直腸にある腫瘍を切除します。直腸の腹膜反転部より上で腸をつなぐ方法を高位前方切除術と呼び、腹膜反転部より下で腸をつなぐ方法を低位前方切除術と呼びます。また、下部直腸に腫瘍があり、肛門から2cm程度直腸を残して切除する方法を超低位前方切除術と呼びます。この術式も肛門は切除せず温存することが可能です。

●直腸切断術(マイルズ手術)

肛門付近に存在する腫瘍を切除します。直腸と合わせて肛門も切除し、肛門部を縫合するため人工肛門が必要となります。

●括約筋間直腸切除術(ISR)

肛門付近に存在する腫瘍を切除する術式であるものの、肛門の開閉に必要な筋肉のうち、内肛門括約筋を一部切除し、その外側にある外肛門括約筋を温存することができるため肛門を温存できます。ただし、内括約筋を一部切除するため肛門機能はある程度低下することは避けられず、排便障害が生じることもあります。

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進行大腸がん手術の合併症

進行大腸がんの手術に伴う合併症の種類は様々で、出血や縫合不全、吻合部狭窄、膿瘍、腸閉塞、感染症、排便・排尿障害、性機能障害などが挙げられます。手術後に合併症が現れるかどうかは、症状や選択した術式などによっても異なると考えられますが、およそ数%以下の確率といわれています。以下に代表的な合併症の例を紹介します。

●出血

手術中に生じる出血の量は手術の難易度に比例し、早期大腸がんよりも進行大腸がん、また結腸がんよりも直腸がんで多くなります。手術時の閉創前止血確認はもちろん行われますが、それでも手術後に再出血する場合があります。再出血量が多い場合は輸血、あるいは再手術での止血が必要となります。

●縫合不全

腫瘍およびその周辺の腸管を切除した後に腸同士を縫って繋ぎあわせますが、その縫合部から腸内容が漏れだすと、周囲に感染や炎症が広がって腹痛や発熱を生じ時に重篤化することもあります。軽症であれば食事制限と点滴治療で治りますが、炎症が強い場合などは縫合部の上流の腸管に一時的な人工肛門を作成し、縫合部の治癒を待つことになります。

●吻合部狭窄(ふんごうぶきょうさく)

吻合部(腸管どうしの縫合部)に生じる一過性の炎症などが原因で吻合部が狭くなることがあります。このような状態になると便の通過に支障をきたすため、満腹感や食欲不振、嘔気、嘔吐などの症状が現れます。吻合部の拡張処置や再吻合の手術を受けることで改善されます。

●腸閉塞

腸同士や腸と腹壁が癒着することで起こります。これにより満腹感や食欲不振、嘔気、嘔吐、腹痛などの症状が現れます。食事を制限して点滴治療を行ったり、鼻からチューブを挿入して胃液や腸液を排出することで改善されます。

●感染症

手術の創(傷)に細菌が付着して化膿すると腫れや痛み、発熱などの症状が現れます。手術中には感染防止のための装具を使用したり、抗生物質の投与を行いますが、大腸には細菌を多く含む便が通るため、他の消化管手術よりも感染のリスクが高くなります。多くの症状は抗生物質の投与や創を開放して排膿を図ることで改善します。

●排便障害

直腸切除後に肛門を温存した場合でも、排便の様子に変化が現れます。最も顕著なのは排便回数の増加と短時間の間に複数回の排便を生じる分節排便です。また、便を貯める能力の低下などで便失禁が起こる場合もあります。多くの場合は手術後から数ヶ月で自然に改善されます。

●排尿障害

直腸がんを手術した際の自律神経の損傷によって起こる障害です。排尿ができなくなったり、残尿が増加したりします。自己導尿が必要な場合もありますが、この障害も手術後から数ヶ月で自然に改善されることが多いです。

●性機能障害

男性の勃起・射精障害で多く見られ、排尿障害と同様で手術時の自律神経の損傷によって引き起こされます。手術後から数ヶ月で改善する場合もありますが、永久的に障害が残る場合もあります。

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渡邉 純

渡邉 純先生

横須賀共済病院 外科 副部長

低侵襲な大腸がんの腹腔鏡下手術を得意とするエキスパート。洗練された手術手技で地域医療に貢献する一方、術後合併症低減のための研究やリンパ流評価によるオーダーメイドの手術療法の開発等の臨床研究を積極的に行っている。

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