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大腸がんとは 症状、原因、治療の選択肢について

大腸がんとは 症状、原因、治療の選択肢について
愛洲 尚哉 先生

福岡山王病院 消化器外科 部長、福岡国際医療福祉大学 特任准教授

愛洲 尚哉 先生

目次
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大腸がんは日本全国で1年間に約158,000人が診断される病気です。早期の段階では痛みなどの自覚症状が現れないため、検診による早期発見早期治療が非常に重要となります。福岡山王病院 消化器外科部長の愛洲 尚哉(あいす なおや)先生に大腸がんの症状や検査の方法、治療の選択肢などについてお話を伺いました。

大腸は長さ1.5〜2mほどある、食べたものが最後に通る臓器です。小腸で消化吸収された食物の残りは大腸に入り、水分が吸収されて便になります。

大腸がんは、この大腸に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)のことです。がんが発生する場所によって大きく“結腸がん”と“直腸がん”に分けられます。良性のポリープ(粘膜の一部がいぼのように隆起したもの)ががん化して発生するものと、粘膜から直接発生するものがあります。日本人はS状結腸と直腸にできやすいといわれています。

MN作成
大腸の構造
イラスト素材提供:PIXTA/素材加工:メディカルノート

大腸がんは早期の段階において自覚症状がみられないのが特徴です。

進行すると、血便(便に血が混じる)、下血(赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、便秘、下痢、閉塞(へいそく)による腹痛といった症状が現れます。下血や閉塞が起こっている場合は、すでにかなり進行している状態と考えてよいでしょう。

大腸がんの約20%は遺伝が関係しているといわれていますが、残りの約80%は遺伝とは関係なく発症しています。

大腸がんに関わる遺伝性の病気に、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)と家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)があります。血縁者にこれらの病気の方がいる場合は若いうちから大腸がん検診を受けるなど、気を付ける必要があります。かかりつけ医や遺伝専門外来などで相談しましょう。

大腸がんは男性にやや多く、30歳代から増加するといわれますが、実際の医療現場では男女関係なく、若くても大腸がんになる方はいらっしゃいます。また、食生活の欧米化(赤肉や加工肉の摂取)、喫煙、飲酒、肥満などの危険因子も指摘されていますが、大腸がんはライフスタイルに関係なく誰でもなり得る病気だと捉えていただいたほうがよいでしょう。定期的に検診を受けることが重要です。

大腸がんは、早期では無症状のため、検診によって発見することが非常に大切です。年に1回は大腸がん検診を受けましょう。

大腸がん検診といってもはじめから腸を直接診察するのではなく、便に潜む血液の有無を調べる“便潜血検査”が行われます。がんやポリープがあると、便が腸内を移動する際に血液が付着しますが、便潜血検査ではこの目に見えないわずかな血液の反応を調べることができます。2日分の便の採取は自宅で行うことができ、食事制限の必要もない簡単な検査です。

大腸がん検診は40歳以上の健常者の方は、毎年受けることが推奨されています。便潜血検査を受けた人は、大腸がんによる死亡率が大幅に減ることが報告されていますので、毎年受けて健康状態を見ることが大切です。ただ残念なことに、便潜血検査が陽性となっても精密検査を行わない方が多く、早期発見が遅れてしまう例も少なくありません。異常ありの結果を受け取った場合は必ず精密検査を受けていただきたいと思います。

便潜血は通常は微量で目には見えません。目に見える出血がある場合はがんが進行している可能性があります。出血は()によるものではないかという声もよく聞かれますが、見た目で診断することは医師でも難しく、そのままにしておくとがんが進行してしまうこともあります。自分で判断せず、病院を受診して検査することをおすすめします。

大腸がんが疑われる場合、主に以下の検査が行われます。がんかどうかの確定診断や治療を進めるにあたり、がんのある部位や広がりを調べます。

直腸診

指を肛門(こうもん)から直腸内に入れ、しこりや異常の有無を調べます。直腸がんが肛門から届く範囲にあれば、この指診のみで診断がつくこともあります。

注腸造影検査

肛門からバリウム(造影剤)と空気を入れてX線写真を撮る検査です。がんの位置や大きさ、形、腸の狭さの程度などが分かります。検査前日から当日にかけて下剤を服用し、腸管内をきれいにする必要があります。バリウムによる合併症など患者さんの負担が大きいこともあり、近年ではCTコロノグラフィ検査に代わることが多くなっています。

大腸内視鏡検査

細長いチューブの先端にカメラを内蔵した内視鏡を肛門から入れ、大腸を詳しく調べます。ポリープが見つかれば、悪性か良性かどうかを調べるために一部を採取することもあります。注腸造影検査と同じく検査前日から当日にかけて、下剤により腸管内をきれいにする必要があります。

CTコロノグラフィ検査(大腸3D-CT検査)

肛門から二酸化炭素を入れ、腸を膨らませた状態でCT撮影を行う検査です。内視鏡を挿入せず、内視鏡と同様の画像を撮ることができます。血管や骨などの画像を重ねることにより手術のシミュレーションができるため、大腸がんの診断がついた場合に行うこともあります。

下剤により腸管内をきれいにする必要がありますが、先に紹介したバリウムを使う注腸造影検査などと比べ合併症がほとんどなく、患者さんの負担が少なく済みます。

CT検査、MRI検査

CT検査はX線を使い、広い範囲(胸部から骨盤まで)の治療を開始する前に、周辺の臓器へのがんの広がりや転移がないかどうかを調べるために行います。MRI検査は磁気を使い、狭い範囲(特に骨盤内)やその周辺の臓器へのがんの広がり、リンパ節転移がないかどうかを調べるために行います。

PET検査

放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射して、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を撮影します。全身のがん細胞を検出することができ、治療前にがんの転移がないかを調べるほか、治療の効果、治療後に再発がないかなどを確認する目的で行われます。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーとは、がんの種類により特徴的に作られる物質のことです。血液、尿などの検査により測定しますが、がんの早期段階で異常値を示すことは少なく、この検査だけでがんの有無は確定できません。主に薬物療法の効果判定や再発のチェックのために行われます。

患者さんとお話ししていると「CTを撮れば、がんかどうか分かるのではないか」「PET検査もしくは腫瘍マーカーが正常だったから大丈夫ではないか」と思われている方が多いと感じます。しかし、これらの検査では早期の大腸がんを見つけることは難しいため、実際に腸を観察することが重要です。今の医療では大腸内視鏡検査がもっとも見落としが少なく、早期にがんを見つけられる方法だと思います。

そのため、当院では大腸がんが疑われる患者さんには大腸内視鏡検査を積極的に行い、早期発見に努めています。また、手術が必要ながんが見つかったときには、続けてCTコロノグラフィ検査を行って詳細に調べ、手術に向けて外科と共有する流れにしています。内視鏡検査もCTコロノグラフィ検査も下剤を使う検査のため、2回に分けず同時に行うことで患者さんの苦痛ができるだけ少なくなるように工夫しています。

大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。

大腸がんはがんの深達度や転移の有無によってステージ0〜IVに分けられますが、それによって治療が選択されます。

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大腸がんのステージ分類
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大腸がんの治療の選択肢

上記の図のように、ステージ0~IIIでは、まずがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合は内視鏡治療または手術を行います。切除できない場合は薬物療法を中心とした治療になります。ステージIVの場合は、患者さんの状態によって治療方法を総合的に判断します。

特に手術については患者さんの不安があることと思いますが、治療の目的はどれも“がんの部分をしっかり取り除くこと”です。ステージによって方法は異なりますが、目的は同じだとお伝えしたうえで、開腹手術や腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)などの選択肢の説明をしています。

内視鏡治療

内視鏡を使って大腸の内側からがんを切除します。ステージ0もしくはステージIでがんの深さが軽度(1mmまで)の場合、リンパ節に転移している可能性がほとんどない場合が対象となります。

手術(開腹手術、腹腔鏡下手術)

主にステージI〜IIIの段階で、内視鏡治療ではがんの切除が難しい場合、手術が選択されます。手術では、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。

こちらのページでは、手術の具体的な内容について解説しています。

薬物療法

手術後のがん再発を予防するための補助治療として、あるいは手術による治癒が難しい場合にがんの進行を抑え、また進行症状を緩和する目的で行われます。

放射線治療

主に直腸がんにおいて手術前にがんを小さくし、骨盤内の再発を予防する、肛門を温存するなどの目的で放射線治療が行われます。また、切除が難しいがんの痛みや出血、骨の転移による痛み、脳の転移による吐き気、嘔吐、めまいなどの神経症状の改善を目的に行われることもあります。

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