食道は胃とのどをつないでいる管です。食道の極めて近い位置には、肺や心臓というとても大事な臓器があります。さらに食道は、気管の後ろ(背中の近く)というかなり深い部分にあるのです。そのために、食道がんの手術は非常に難しい手術とされており、実際に術後の合併症も多く起きてしまっていました。
そのようななかで、東京大学胃食道器外科教授の瀬戸泰之先生は患者さんの負担を少しでも軽くできるような食道がんの手術をするため、どうすべきかを常に考え続けてこられました。患者さんのために尽力し続けてきた瀬戸先生が世界で初めて開発された、ダビンチ®による食道がんの最新治療について4回にわたってお話し頂きます。第1回は食道の特徴と従来の手術の問題点についてです。
食道は、のどと胃をつなぎ食べ物を胃に運ぶ働きをしている、胸部にある管腔(かんくう:管状の器官のこと)の臓器です。食道上部は気管の後ろに位置しており、実は背中に近い位置にあります。さらに、食道の左右を肺が囲んでいます。食道中部・下部は心臓の真後ろに位置しており、肺や大動脈が周囲にあります。このようにのどと胃をつないでいる食道の周囲には、ヒトが生きていく上でなくてはならない臓器がたくさん近接しているのです。
食道がんとは食道に発生する悪性腫瘍のことを言います。食道がんの90%以上が「扁平上皮がん」と言われるもので、飲酒歴や喫煙歴がある60歳以上の男性に多く見られます。
食道がんは、約半数が食道の中央付近から発生し、1/4が食道の下部から発生します。食道がんの大きな問題点は、前述したように食道の周囲に非常に大切な臓器(具体的には肺・気管・大動脈・心臓など)が多くあることです。また、食道のまわりはリンパ流が豊富です。がんはリンパの流れに乗って転移していく性質を持っているため、手術をする際には食道周囲のリンパ節をとらなくてはいけません。食道癌そのものや転移したリンパ節が大きくなっていくと、食道の周囲にある大切な臓器に対しても様々な影響がでてしまいます。
このように食道は重要な臓器と隣接している場所にあります。そのため、食道がんを手術で治療するときには、どうやって重要な臓器を傷つけないように腫瘍のある部位へ到達していくかが課題となります。
たとえば、胃がんの手術ではお腹を開けてしまえばそのまま胃を見ることができます。しかし食道ではそのようにはいかないのです。まず、体の前方には胸骨があり、後方には背骨があります。もし胸骨を割ったとしても、気管や心臓が現れるだけで食道には到達できません。そのため、これまでは食道に到達するために「開胸」という手術をする必要がありました。具体的には右胸壁の肋骨と肋骨の間を切開していきます。同時に胸膜を切開する必要もありました。しかし、右胸壁を開いてもそこに見えるのは右肺です。食道を手術するためには、ここからさらに「片肺換気」という特殊な麻酔を用いることにより、右肺を縮ませる必要があります。これらの手順を踏んではじめて食道に到達できるのです。
胸壁を切開することや片肺換気の使用は患者さんの体に大きく負担がかかります。そのうえ、手術後には肺炎や呼吸機能の低下などが高い頻度で起きてしまっていました。そのため、食道がんの手術は患者さんにとって負担の大きな手術の代表例とされてきました。
国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長
日本消化器内視鏡学会 会員日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本外科学会 外科専門医・指導医日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本内視鏡外科学会 会員日本胃癌学会 会員
東京大学医学部附属病院長の医師としてのキャリアは縁から生まれた
胃がんや食道がんを中心とした上部消化管の領域の専門。研修医時代の友人の薦めで上部消化管を専門にすることを決意した。それがのちにさまざまな縁となり、上部消化管を専門にする医師としてのキャリアが積まれることになる。今の自分を作り出した縁を大切にしたいという思いから、若手の医師との縁も大切にしている。
瀬戸 泰之 先生の所属医療機関
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食道腺癌の内視鏡手術を終えました。術後は順調なのですが、定期的に内視鏡検査をして経過観察をした方がいいと言われました。再発の心配があると言う事なのでしょうか?どれくらい経過観察で通院しないといけないのかを主治医に聞きたいのですが、なかなか聞き出せずにいます。基本的には癌の経過観察はどのくらいの期間、通勤すればいいのか、お時間あれば教えて頂きたいです。
食道癌で術後1カ月半
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