大腸がんは、近年増加がみられるがんの1つです。2017年のデータによると、がんによる死亡者数では、男性は肺がん、胃がんに次いで第3位、女性は第1位が大腸がんでした。しかし、大腸がんは手術などでがん腫瘍を取り切れれば、治る可能性が高まるがんともいえます。
今回は、大腸がんの原因や症状について解説します。
大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸からなる結腸と、直腸S状部、上部直腸、下部直腸からなる直腸とに分けられます。右下腹部から始まり、お腹の中を「?」の形でぐるっと回り、肛門につながる臓器です。全長は1.5〜2mほどと長く、食事によって摂取した食べ物の最後の通り道となっています。
その大腸の主な役割は、食物残渣(体内を通過した食べ物の残り)から水分を吸収することと、便を作ることです。食物残渣が大腸を通っていくなかで、水分を吸い取られ、固形の便に姿を変え、肛門から排出されます。
文字どおり、大腸にできるがんが、大腸がんです。早期の大腸がんは、自覚症状はほとんどありません。しかし、大腸がんが進行すると、血便が出る、便秘と下痢を繰り返す、便が細くなる、便が残る感じがする、お腹の張りを伴う腹痛、貧血といった症状が現れる、腫瘤(しこり)ができる、腸閉塞を引き起こすというケースもあります。これらの症状は、大腸のどこに、どの程度の大きさのがんができているかによって現れ方が異なります。
盲腸がん、上行結腸がん、横行結腸がんといった、人体の右側に発生する大腸がんは、大きくなるまで症状が出にくい傾向にあります。これらは腫瘤として発見されることが多く、腹部の張りや、慢性的な出血による貧血もみられます。
一方、下行結腸がん、S状結腸がん、直腸がんといった人体の左側に発生する大腸がんは、血便などの出血、便秘、下痢、便が細くなるなどの症状で発見されることが多いのが特徴です。
また、大腸がんの発生には、下記の2つの経路があるとされています。
多くは1.から発生すると考えられています。
日本では、1年間に10万人あたり103人の方が大腸がんにかかります。男女比で見ると、男性が女性の約1.4倍の罹患率となり、男性のほうがかかりやすいといえるでしょう。また、年齢別に見ると、大腸がんにかかる割合は、40歳代より上昇し、50歳代で加速する形になります。
大腸がんの発症リスクを高める要因には、生活習慣が大きく影響しています。高カロリーおよび高脂肪の食事、つまり欧米風の食生活や、飲酒、喫煙の過多も理由に挙げられます。
大腸がんはもともと欧米に多い病気であり、アジアでは少ないとされていました。しかし、前述のとおり、日本においても大腸がんの患者さんが増えています。その理由として、下記のことが考えられます。
近年の食生活の変化が、発症要因の1つとされています。欧米風の食生活は、動物性脂肪の摂取量が増える傾向にあります。動物性脂肪の中でも、特にコレステロールは大腸がんの発生に影響を与えます。
また、欧米風の食生活では食物繊維の摂取量が減少します。食物繊維は便通を整え、腸内細菌との相乗効果で、がんの発生を抑制することが期待できるため、摂取量の減少が影響していると思われます。
大腸がんに限らず、喫煙はがんの発生に影響があるとされています。喫煙の習慣がある方は注意が必要です。
飲酒は適度な量であれば、発がんへの影響は少ないとされています。しかし、1日あたりの平均アルコール摂取量が、純エタノール量換算で46g以上になると、がんになるリスクが高まります。多量の飲酒は大腸がんの発生要因となりますので、節酒が求められます。
大腸がんは、早期の場合には自覚症状がほとんどありません。しかし、がんが進行すると、出血、排便の異常、腹痛といった症状が現れます。これらは患者さんご自身が「つらい」「苦しい」と感じたり、出血を目で見て驚いたりするような症状です。思い過ごしと考えたり自己判断したりするのではなく、次のような症状には気を配ってください。
下血ともいいますが、肛門からの出血を指します。鮮血のような真っ赤な場合もあれば、黒くどろっとした血が出る場合もあります。大腸は長い臓器なので、大腸のどこの部分で出血したかによって、血液の状態は異なります。
腹痛自体は、お腹を下したりした場合にも発生します。しかし、腹痛の症状が一度だけに収まらず何度も続く場合や、ある動作の際に決まって発生する場合には注意が必要です。大腸がんの場合は、排便時やガス(おなら)が出る前にキューっと痛みが走り、排便するとその腹痛が楽になることが多いとされます。または、お腹の張りを伴う腹痛には注意が必要です。
排便習慣はそれぞれ個人差があることが多いと思います。毎朝、決まった時間に排便する、日に3度排便するなどです。その習慣が変わってきた場合には注意が必要です。また、便秘や下痢、両方の症状が繰り返し続く場合も注意が必要です。
これらの症状は、直腸での異常の場合は血の色が真っ赤になる、腹痛が強くなる、排便の異常の頻度が高くなる、という傾向にあります。
大腸がんに限らず、“初期のがん”は小さいものです。それが大きくなるにつれ、急激に進行していく傾向にあります。最初は月単位で進んでいたがんでも、成長するにつれて日単位で大きくなっていくのです。
大腸がんの症状はがんが大きくならないと出てこないものが多いので、症状が出てきた際は、ある程度進行していることが考えられます。ですから、症状が出る前にがんを見つけて治すという努力をすることが重要になります。そのため、早期発見がとても重要です。
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