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大腸がんの腹膜播種に対する検査と診断について

大腸がんの腹膜播種に対する検査と診断について
合田 良政 先生

国立国際医療研究センター病院 外科

合田 良政 先生

目次
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大腸がんの腹膜播種は、大腸内に発生したがん細胞が大腸の壁を貫いて、おなかの中にばら撒かれた状態(播種性転移)を指します。従来、大腸がんの腹膜播種は診断が難しく根本的な治療法もないとされてきましたが、まずは手術が可能かどうかを調べるために適切な検査を行うことが重要だといいます。

今回は、大腸がんの腹膜播種の分類や検査方法について、国立国際医療研究センター病院の合田(ごうだ) 良政(よしまさ)先生に伺いました。

大腸がんの腹膜播種を分類する方法は、日本と欧米で次のような違いがあり、実はこの評価の方法が重要なポイントとなります。

日本の分類方法は、腹膜播種の状態によってP1、P2、P3と分けられる“P分類”です。『大腸がん取り扱い規約』に従来から記載されている分類方法です。

  • P1:近接腹膜にのみ播腫性転移を認める
  • P2:遠隔腹膜に少数の播種性転移を認める
  • P3:遠隔腹膜に多数の播種性転移を認める

つまり、P1は大腸がんから近い部分の腹膜にわずかに播種があるという、軽度の腹膜播種です。手術で取り除ければ病気がよくなる可能性も高くなります。

P2はP1とP3の中間で、少し遠い部分に少し播種があるということです。

P3は、遠い部分の腹膜にたくさんの播種があるということです。

欧米では、peritoneal cancer index(PCI) score(以下、PCIスコア)を用いて評価します。腹腔内を9か所+4か所(小腸)の合計13か所に分けるという方法です。小腸だけ独立しているのは、それだけ小腸の分類が重要であるためです。

そして、播種の大きさにより、0~3点に点数化します。播種がない場合は0点、5mm以下の播種の場合は1点、5mmから5cmまでの播種の場合は2点、播種が集簇(しゅうぞく)(群がり集まっていること)している、もしくは5cm以上の場合は3点です。

13か所×3点=39点、つまり、もっとも重度の患者さんは満点の39点ということになります。

日本の分類方法は、日本独自の優れた分類方法ではありますが、欧米の分類方法と比べて若干曖昧です。もっとも重度のP3に分類された患者さんは全員、治療が困難に思われてしまうというリスクがあると考えています。

そこで当院では、欧米の分類方法を採用し、より具体的に患者さんの状態を判断することで、できる限り治療につなげるよう努めています。

大腸がんが発見されたら、必ずCT検査(コンピューター断層撮影)を行います。そこで腹膜播種の可能性が考えられたらPET検査(陽電子放射断層撮影)を追加します。それでも確定しない場合は、審査腹腔鏡を実施します。

CT検査のスライス厚は5mm間隔であるのが一般的ですが、当院では腹膜播種の可能性が考えられる場合には、より細かい1~1.25mmスライスで検査を行います。小さな播種でも、より見つけやすくするためです。

CT検査によって腹膜播種を疑う所見があれば、PET検査を追加します。しかしながら、PET検査では1cm以下の播種を検出するのは難しく、また播種ではなく炎症が起こっているときでも陽性となりますし、組織型というがんのタイプだと陽性が出にくい場合があります。PET検査で陰性になっても腹膜播種の状態ではないと言い切れないことが課題となっています。

CT検査やPET検査で腹膜播種が疑わしい場合は、審査腹腔鏡を行う場合もあります。一般的な審査腹腔鏡は、おなかの中をのぞいて腹腔内の播種の程度を“P分類”で評価し、細胞を採る“生検”という検査を行うことで、確定診断することが多いです。つまり、一般的な審査腹腔鏡の目的は主に二つで、(1)播種の有無を肉眼で確認すること、(2)生検により確定診断を行うことです。

“診査”腹腔鏡における目的

当院の場合は、“審査”ではなく“診査”腹腔鏡と表記しています。当院で行う診査腹腔鏡は一般的な審査腹腔鏡とは異なり、ほかの遠隔転移がない限りは、腹膜播種の疑われる場合、ほぼ全ての患者さんに行います。

当院における診査腹腔鏡では、先述した(1)(2)に加えて、(3)腹膜切除の実施が可能か診断する、(4)PCIスコアをつける、これら4点を目的とします。中でも、もっとも大きな目的は、(3)腹膜切除の実施が可能か診断するという点です。

一般的に、腹膜播種は治療が難しいとされ、手術で腹膜播種を切除するという考え方自体、多くありません。しかし、当院では、腹膜切除できる可能性を諦めず、まずは手術することが可能かどうかを調べることを重視しています。

大腸がんの肝転移や肺転移はCT検査で診断できることが多いですが、腹膜播種は診断が難しいといわれています。CT検査やPET検査などの画像検査は、1cmよりも小さな播種を見つけることが困難です。おなかを開けて行う開腹手術や、複数箇所に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術のとき、腹膜播種が偶然発見されるケースも珍しくありません。

CT検査で腹水の貯留が認められた場合は、腹膜播種の可能性を考えてより注意深く検査を進めます。腹水はほかの病気などが原因でたまってくることもありますが、大腸がんのすぐ近くや、腹膜播種が生着しやすい大網(だいもう)という腹膜の一部に、もやもやした感じやしこりが見られる場合も注意が必要です。また、女性の患者さんで卵巣が腫大している場合にも腹膜播種の可能性を考えます。女性の場合、血行性ではなく腹膜播種の形式で卵巣に転移することがあるためです。

手術の前に腹膜播種があると確定させることは難しいこともありますが、手術の前に可能性を考えておくことはできます。そこで、腹水や小さなしこりが見られる患者さんには、手術の前に「CT検査をしたところ、現時点では肝臓や肺への転移はないようです。腹膜播種は、おなかの中を開けたら見つかることがあるので、手術するまで分かりません」といったことをお話しするようにしています。

大腸がんの腹膜播種は、肝転移や肺転移と異なり、診断することも、手術で取りきることも難しく、かつ化学療法も効きにくい、治すことが困難で極めて見通しの悪い状態であるとされてきました。つまり従来から、根治は難しく匙を投げられていたといっても過言ではありません。

しかし、大腸がんの腹膜播種に対する手術が可能な患者さんもいらっしゃると私は考えています。諦めずに、治療実績がある病院へのセカンドオピニオンを受診し、専門的に診療を行っている医師の意見を聞くことをおすすめします。

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