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腹膜偽粘液腫の治療――​​病気の根治につながる治療法とは?

腹膜偽粘液腫の治療――​​病気の根治につながる治療法とは?
合田 良政 先生

国立国際医療研究センター病院 外科

合田 良政 先生

目次
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腹腔内(ふくくうない)にゼリー状の粘液が散らばる腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)。腹膜偽粘液腫の治療法として “完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)”があります。病気が進行していない場合、これらの治療によって根治を目指すことが可能になるそうです。国立国際医療研究センター病院は、完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)にセットで取り組む施設の1つです(2020年3月時点)。

今回は、同病院の合田(ごうだ) 良政 (よしまさ)先生に、腹膜偽粘液腫の治療についてお話しいただきました。

腹膜偽粘液腫の治療法には、主に、“完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)”、“姑息的減量手術”があります。

腹膜偽粘液腫の標準的な治療法は、完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)をセットで行うこととされています。これは、根治を目指せる唯一の方法として考えられています(2020年3月時点)。

まず、手術によって粘液が広がっている腹膜と臓器を全て切除します。ただし、粘液のある腹膜のみです。具体的に切除しうる臓器は、原発(虫垂もしくは卵巣)、子宮、大網、小網、胆嚢(たんのう)脾臓(ひぞう)、直腸、結腸などです。小腸は多く切除すると予後が悪化する可能性のある臓器であるため、小腸に粘液が少ない方がこの治療法の対象となります。小腸にある粘液の有無はCT検査では判断が難しく、最終的には開腹しないと分からないことが多いです。

目で見える限りの粘液を切除した後に、目に見えない小さな腫瘍細胞を死滅させるために、抗がん剤を溶かした生理食塩水を42度程度に温め、腹腔内に注入し循環させます。これを術中腹腔内温熱化学療法と呼びます。1時間抗がん剤を循環させた後、最終的にお腹を縫って閉じます。

術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)に用いられる機械
術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)に用いられる機械

なお、完全減量手術は保険内で行いますが、術中腹腔内温熱化学療法は自由診療の治療法です。一緒に行う場合には混合診療となるため全額自費診療となり、患者さんの状態によって個人差はありますが、300万円程度の費用が必要となります。これらは、1回の治療が基本とされます。

完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法の治療では、術後出血など重症化する可能性のある合併症が起こることがあります。術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は完全減量手術と同時に行うので、HIPECだけの合併症を同定することは難しいです。ただし、一般的には、HIPECにより血球減少や縫合不全による出血、消化管穿孔(しょうかかんせんこう)などの頻度が増えうると考えられています。

術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の様子
術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の様子

小腸に粘液が多い場合は完全切除が難しく、姑息的減量手術と呼ばれる治療を行います。この手術は、腫瘍を全て取り切ることはできないため、現状の症状あるいは将来起こりうる症状を和らげることを目的に行います。姑息的減量手術では、まず、お腹にたまっている粘液を外にかき出します。併せて、原発巣を切除し、女性で卵巣に粘液がたまり腫れている状態になっている場合には、両方の卵巣を切除します。胃にぶらさがっている脂肪のカーテンである大網が硬くなっている場合には、大網の切除も併せて行います。

なお、姑息的減量手術では、腫瘍を完全に切除することはできません。そのため、手術後には、抗がん剤による治療を続けることもあります。

治療の流れ

小腸に病気が広がっている場合には、完全減量手術の選択が難しくなります。なぜ小腸に病気がおよんでいると難しくなるかというと、小腸は切除することが難しい臓器であるからです。小腸を切除してしまうと、水や栄養を吸収できなくなり、短腸症候群が起こり、点滴をしなくては生きていけないようになってしまいます。そのため、小腸に病気が広がっている場合には、完全減量手術ではなく、姑息的減量手術が適応されます。

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