まれな病気といわれている腹膜偽粘液腫。国立国際医療研究センター病院は、腹膜偽粘液腫の根治的治療である“完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)”に取り組む施設の1つです(2020年3月時点)。
腹膜偽粘液腫の患者さんが治療を受けた後に、気をつけるべきことはあるのでしょうか。今回は、同病院の合田 良政 先生に、腹膜偽粘液腫の治療後の生活についてお話しいただきました。
腹膜偽粘液腫の治療後は、通院することができる患者さんであれば、基本的に3か月ごとに血液検査によって腫瘍マーカーを測定します。また、半年ごとにCT検査を行います。これらの検査によって、再発がないかを定期的に確認するようにしています。
一方、遠方にお住まいの患者さんでは、3か月ごとの通院が難しい場合もあります。そのようなケースでは、地元のかかりつけの先生と連携し、3か月ごとに血液検査の結果を送っていただきます。さらに半年に1回は受診していただきCT検査をするようにしています。
もしも再発が認められる場合には、抗がん剤による治療を検討します。
腹膜偽粘液腫の手術後の制限はほぼありません。食べてはいけないものや、やってはいけないことも特にありません。
ただし、直腸の一部を切除したケースでは、腸と腸がうまくつながらない縫合不全という合併症が起こることがあります。直腸に縫合不全が起こると、便が漏れ出してしまうことがあります。それを防ぐために、一時的に人工肛門をつくることもあります。なお、当院では、手術してから約3か月後に人工肛門をなくす手術をしますので、最終的には人工肛門はなくなります。
手術の際、卵巣に腹膜偽粘液腫が広がっていると認められた場合には、卵巣を切除するケースがあります。さらに、その場合、子宮にも粘液が付着しているために、子宮も合わせて切除するケースがあります。
当院では、女性で、将来的に妊娠・出産を希望される場合には、手術前に卵子を採取し凍結保存したうえで、子宮を残すこともあります(妊孕性温存)。その後、再発しないようであれば、人工受精によって妊娠を試みることもできるからです。
なお、子宮の表面に病気が広がっている場合には、病気が広がっている部分のみ切除することもあります。
腹膜偽粘液腫は、まれな病気であるため、イメージが先行し「難しい病気だから助からないのではないか」と不安を抱く患者さんもいらっしゃいます。
当院には、腹膜偽粘液腫のセカンドオピニオンにいらっしゃる患者さんも少なくありません。私のところに来てくださったときには、大きく落ち込んでしまっているような患者さんもいらっしゃいます。しかし、イメージのみを膨らませることなく、この病気を専門とする医師の意見をきちんと聞いていただきたいと思います。
病気の進行度や全身状態によって、治療や経過は異なります。ただし、数多くの治療経験がなければ適切な治療方針を選択することはできません。治療によって改善する可能性もありますので、まずはセカンドオピニオンを受診してしっかりと専門である医師の見解を聞き、共に治療を検討していただきたいと思います。
国立国際医療研究センター病院 外科
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