患者さんがストーマ(人工肛門)を受け入れていくにはいくつかの段階があり、それなりに時間も必要です。皮膚・排泄ケア認定看護師として患者さんをサポートしている、横浜市立大学附属市民総合医療センター看護部の宮田晶代看護師に、手術後のストーマケアの進め方や術後のトラブルなどについてお話をうかがいました。
手術を終えて麻酔が覚めた直後には患者さんも余裕がありませんから、あまりストーマのことに意識が向いていない方が多いようです。しかし、ストーマになるかならないか手術をしてみなければわからないようなケースでは、手術の結果どうなったのかを真っ先に気にされる方もいらっしゃいます。
手術後、最初のうちは看護師がストーマ装具の交換をします。患者さんご自身でストーマのケアや管理ができるようになるまでの期間は人それぞれですが、横浜市立大学附属市民総合医療センターでは次のように段階別に指導をしています。
第1段階
第2段階
第3段階
第4段階
これらのプロセスについては術前にもお伝えしますが、実際には流動的になるため予定の日付などは入れず、ひとつひとつ段階を踏んで進めていくということをお話ししています。場合によっては患者さんの体調次第で看護師がすべて行うこともありますし、いったんひとつ前の段階に戻ることもあります。
見るのも触るのも嫌だとおっしゃっている患者さんの場合無理強いはせずに、患者さんの気持ちを確認しながら進めていきます。ご自身のストーマを見ることができる・触ることができるというのがスタートラインになりますので、それができるように働きかけます。
一般的には術後3日ほど経過したころから離床と共にストーマを見ることから指導を開始し、2週間後には退院して自宅に戻ることを目標としていますが、もちろん手術そのものの経過、傷の治り具合などにも左右されます。
ストーマ造設後に一番多く見られるのは、ストーマの周囲、近接部の皮膚のトラブルです。今は皮膚保護剤が非常に良くなり、種類も増えたので、アレルギーがある場合などで、皮膚保護剤が合わずかぶれるということも少なくなってきています。しかし、便がすき間に入ってしまったりすると接触性の皮膚炎を起こすことがあります。そうならないためには、患者さんに合った装具を選択することが大切です。
いくら品質が良くなっているといっても、やはり装具を常につけているのは違和感を感じるものです。私自身、新しい製品が出ると自分でも貼ってみますし、新しく入ってきたスタッフにも研修のときに自分で貼ってもらい、どのように感じるかを体験してもらうようにしています。袋に水を入れて貼り、その状態で一日仕事をするという体験も行っています。
お腹に袋をぶら下げて生活するということが患者さんご本人にとってどのように気になることかということを、ケアをする立場の人が知っておくことは大切です。周りからみればあまり気にならないようなつくりになっていますが、貼っている本人はとても気になるものだということを自分たちで体験するようにしています。
また、トラブルというわけではありませんが、肛門から便を排泄することがなくなっても便意を覚えることがあります。手術の方式によっても違いますが、残像した結腸にたまった粘液が肛門から排泄されることもあり、そのような相談も外来では受けることがあります。
実際に便器に座ってみると肛門から粘液などが出てきて驚かれることもありますが、それは出てきてもおかしくないものだということをお話しするようにしています。多くの場合、時間の経過とともにそういったことは少なくなっていきますが、腸の炎症が強いときや出血を伴う場合もありますので、担当医とも相談をするようにしています。
宮田 晶代 さんの所属医療機関
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