大腸がんの手術では、従来から行われてきた開腹手術と共に、腹腔鏡を用いた腹腔鏡下手術が一般的になっています。近年では、腹腔鏡下手術によって、より患者さんにとって負担の少ない手術が可能になってきていると考えられています。
大腸がんの手術後に、痛みはないのでしょうか。また、術後にはどのような合併症が起こる可能性があるのでしょうか。今回は、厚生連高岡病院の小竹 優範先生に、大腸がんの手術後の生活や術後のフォロー体制についてお話しいただきました。
当院では、大腸がんの手術後、退院から約2週間後に外来を受診していただきます。個人差はありますが、術後1〜3か月程度で、手術前の生活に戻ることができるケースが多いです。
大腸がんの術後には、手術による傷が痛むことがありますが、この痛みは術後早期に治ることが多いです。その後も痛みは多少残りますが、数か月や半年などの期間で徐々におさまっていくことが多いでしょう。
ただし、いつもより痛みが増したり赤みが生じたりする場合には、合併症の可能性もあるため、なるべく早く受診していただきたいと思います。
退院後は、基本的によく噛んで食べてもらえれば、食事の内容に制限はありません。ただし、患者さんの状態によって食事の内容に調整が必要なケースもあります。
大腸がんの手術後には、便の回数が多くなったり下痢や便秘が起こったりすることがあります。これらの症状は、徐々に改善していくことがほとんどです。回復の過程で、あまりにも便が硬かったり、下痢が続いたりする場合には、薬によるコントロールを行うこともあります。
記事1『大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?』でお話したように、大腸がんの手術後には、一時的に人工肛門*をつくり回復後に人工肛門を閉じるケースもあれば、永久人工肛門を使用するケースもあります。当院では、人工肛門の管理に詳しい専門の看護師が手術前に詳しい説明を行うため、術後、スムーズな導入と管理を可能にしています。
人工肛門:お腹から腸の一部を外に出してつくる肛門に代わる便の出口
大腸がんの再発のスピードは患者さんによって異なりますが、再発する場合は、基本的に手術後3年以内が多いです。ただし、5年を過ぎても再発の可能性を否定できないため、フォロー期間の目安は術後5年といわれています。
大腸がんの術後に生じる可能性のある合併症として、縫合不全があります。縫合不全とは、切除した腸管のつなぎ目から便が漏れる合併症です。便が漏れることによって、腹膜炎と呼ばれる炎症が起こり、発熱や腹痛などの症状が現れることがあります。
縫合不全が起こると局所再発率が高くなるといわれているため、当院では、手術時に腸管をつなげた吻合部に、縫合不全の原因となる血流障害を起こさないようにするなど、縫合不全を減らすよう努めています。
縫合不全が起こった場合には、症状が軽ければ薬によって症状を和らげる治療を行います。痛みが強いなど、症状が重い場合には、縫合不全を改善するために再手術を行うこともあります。
大腸がんの術後、当院では約2週間後に通院いただき、手術による傷の確認を行います。その後の経過観察では、当院では、基本的に血液検査とCT検査を同時に行うようにしています。2つの検査を1度で完了させることで、患者さんの通院の負担を減らし、より正確な診断につながると考えています。
なお、受診頻度は、ステージによって異なります。ステージ0やステージⅠなど早期の大腸がんで再発率が低い場合には、1年に1度、血液検査とCT検査を行います。
ステージⅡでリンパ節への転移がなく再発予防のための抗がん剤治療が必要ない方は、半年に一度、血液検査とCT検査を行い転移していないかを確認していきます。
リンパ節に転移があるステージⅢでは、術後に再発予防のための抗がん剤治療を半年間行います。半年後、採血とCT検査を行い再発がなければ、基本的に4か月に1度受診していただき経過観察を行います。
大腸がんの術後のフォローでは、かかりつけの医師に診療していただくことが望ましいと考えています。日常的な排便のコントロールなどは、気軽に状態を相談されたい患者さんも多いと思います。そのため当院では、地域連携パス*を使用し定期的な検査を行いながら日常的な腸のケアは地域のかかりつけの医師と連携するようにしています。
そのうえで、検査や治療を必要とする症状が現れた場合には、当院を受診していただきたいと思っています。
地域連携パス:地域で医療・介護に関わる人々が情報共有をしながら、チームとして患者さんを支えていく仕組み
大腸がんは、早期発見による早期治療を心がけてほしいと思います。手術を行うとしても、早期で発見されれば、より負担の少ない手術が可能になるからです。
記事1『大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?』でお話したように、当院では、ほぼすべての大腸がんの手術で腹腔鏡下手術を行っており、がんの根治と共に、排便機能や排尿機能などの温存につながる負担の少ない手術を行うことができるよう努めています。手術に不安があったとしても、安心して受診していただきたいと思います。また、術後は、定期的な検査によって再発の早期発見に努めていただき、患者さんと一緒になって大腸がんの治療に取り組んでいきたいと思います。
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富山県厚生農業協同組合連合会 高岡病院 消化器外科 診療部長
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