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大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?
大腸がんの手術では、近年、腹腔鏡*を用いた腹腔鏡下手術が一般的になってきています。腹腔鏡下手術には、開腹手術と比べて手術による傷が小さいために痛みが少なく回復が早いという特徴があります。また、排...
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大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?

公開日 2019 年 02 月 01 日 | 更新日 2019 年 02 月 06 日

大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?
小竹 優範 先生

厚生連高岡病院 消化器外科部長

小竹 優範 先生

目次

大腸がんの手術では、近年、腹腔鏡*を用いた腹腔鏡下手術が一般的になってきています。腹腔鏡下手術には、開腹手術と比べて手術による傷が小さいために痛みが少なく回復が早いという特徴があります。

また、排尿機能や排便機能、性機能などの温存につながるといわれています。それはなぜなのでしょうか。今回は、厚生連高岡病院の小竹 優範(まさのり)先生に、大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴についてお話しいただきました。

腹腔鏡:先端にカメラがついた小型の内視鏡

大腸がんの手術方法

大腸がんの手術には、主に開腹手術と腹腔鏡下手術があります。

開腹手術

大腸がんの手術として従来から行われてきた開腹手術では、腹部を切開し、がんの切除と共に、がんが広がっている腸管や周辺のリンパ節の切除を行います。一般的に、腹腔鏡下手術が普及した近年でも、がんが広範囲に広がり切除する部位が大きい進行がんに対しては、腹腔鏡下手術による切除が難しいため開腹手術が選択されることが多いです。

腹腔鏡下手術

開腹手術と共に、近年では、腹腔鏡を用いた腹腔鏡下手術が一般的になっています。腹腔鏡下手術では、二酸化炭素をお腹の中に入れて膨らませ、へそから腹腔鏡を挿入し、お腹の中をモニターに映し出しながら、がんが広がっている腸管の切除や、切除した腸管をつなぎ合わせる吻合(ふんごう)、がん周辺のリンパ節を切除するリンパ節郭清(かくせい)を行っていきます。

腹腔鏡下手術では、鉗子(かんし)*を挿入するためにお腹の左右2箇所ずつに穴を開けます。また、へそに2〜4cm程度の穴を開け、そこから手術操作を行う単孔(たんこう)手術を行うこともあります。

特に早期の大腸がんであれば、腹腔鏡下手術によって、がんの切除を行うことが多くなっています。

鉗子:血管や腸管、神経などを挟むための手術道具

腹腔鏡下手術の特徴

手術による傷が小さく早期回復につながる

腹腔鏡下手術の特徴として、手術による傷が小さい点が挙げられます。

開腹手術では20cm程度切開することが多い一方、腹腔鏡下手術では、鉗子を挿入するために開ける穴以外の3〜5cm程度の切開のみで手術を行います。このように手術による傷が小さいために術後の痛みが軽減され、早期回復につながると考えられています。

手術の様子
手術の様子

神経や血管の温存が可能になる

また、腹腔鏡によって病巣を拡大して映し出すことで、細かい神経や血管まで確認することが可能です。そのため、がんの根治性を保ったうえで、排尿機能や排便機能、性機能などを調整する神経を損傷することなく手術を行うことができます。

特に、大腸の中でも直腸は排尿機能や排便機能を司る自律神経が近くに通っています。そのため直腸を切除する際にそれらの神経が損傷されると、排尿機能や排便機能、性機能などの障害に直結することがあります。たとえば、若い方であれば、それらの神経を損傷することで性機能に障害が起こり、不妊につながるケースもあるため、妊娠や出産を希望される若い患者さんに対しても、神経を温存することが可能な腹腔鏡下手術は有効と考えられます。

腹腔鏡関連イラスト

大腸がんの手術で肛門を残すことはできる?

患者さんの状態によっては肛門温存手術を行うことも

当院では、患者さんの状態によっては肛門温存手術にも対応しています。従来であれば肛門を切除しなくてはいけなかったような下部直腸がんに対して、肛門括約筋(こうもんかつやくきん)*の一部のみを切除し、肛門を残す肛門温存手術を行うケースがあります。

肛門温存手術は、人工肛門*を回避できることがメリットのひとつと考えられますが、当院では、技術的に肛門を残すことが可能な患者さんすべてに推奨しているわけではありません。たとえば、寝たきりなど自分で排便することが難しい患者さんには、肛門を残すメリットよりも排便にかかる負担を考慮し、おすすめしないケースもあります。

当院では、肛門温存手術を行うときには、このようなメリットとデメリットをしっかりとお伝えしたうえで、選択していただくようにしています。

肛門括約筋:肛門を締める筋肉

人工肛門:お腹から腸の一部を外に出してつくる肛門に代わる便の出口

再発のリスクが高いケースでは肛門温存手術を行わない

肛門温存手術は、手術の結果、再発のリスクが高くなってしまうと判断する症例には行いません。たとえば、肛門を温存する場合、切除する範囲が狭くなるために、根治性が低くなってしまうケースがあります。このようなケースを回避するため、肛門温存手術を行う場合には、がんの進行度やがんが広がっている範囲、がんの性質などから再発のリスクがないか総合的に判断することが大切になります。

大腸がん手術後の「人工肛門」とは?

人工肛門(ストーマ)

人工肛門(ストーマ)とは、腸の一部を外に出してつくる肛門に代わる便の出口を指し、大腸がんの手術後には、この人工肛門を使用していただくケースもあります。

人工肛門をつくるかどうかは、年齢や体の状態、患者さんのご希望などによって異なります。なお、術後一時的に人工肛門をつくり回復後に人工肛門を閉じるケースもあれば、永久人工肛門をつくるケースもあります。

厚生連高岡病院の大腸がん手術の特徴

ほぼすべての症例で腹腔鏡下手術を実施

当院では、ほぼすべての大腸がんの手術で、腹腔鏡下手術を行っています。当院では、早期の大腸がんのみならず、進行がんや高齢の患者さんに対しても、腹腔鏡下手術が第一選択となるケースがほとんどです。

ただし、大腸がんのために腸閉塞*が起こり緊急手術となった場合には、開腹手術を行うこともあります。

腸閉塞:腸がつまってしまう状態

厚生連高岡病院の手術の様子

大腸がん手術の様子

進行がんや高齢の患者さんにも腹腔鏡下手術を行うメリット

一般的に、進行がんの場合には、開腹手術を行う病院も少なくありません。しかし、当院では、進行がんであっても、手術が適応となるほぼすべての大腸がんの症例で腹腔鏡下手術を行います。

がんが遠隔転移しているような場合には、腹腔鏡下手術と開腹手術を組み合わせて手術を行うこともあります。たとえば、肝臓に転移が生じている場合には、まず腹腔鏡下手術で腸管の原発巣の切除を行い、その後、肝臓の転移部分を開腹手術によって切除していきます。

また、周辺の小腸や、女性であれば子宮や卵巣、男性であれば前立腺や膀胱にがんが広がっている場合、切除範囲は大きくなりますが、原発巣の切除と共に、がんが広がっている周辺の部位も腹腔鏡下手術によって切除していきます。このように、がんが広範囲に広がっている場合にも、腹腔鏡によってさまざまな方向から病巣を確認することでがんの取り残しを防ぐことができる点は大きなメリットであると考えています。

また、大腸がんの患者さんには、高齢の方も少なくありません。なかには、80歳以上の高齢の方もいらっしゃいます。当院では、高齢の患者さんであっても、全身麻酔に耐えられる状態であれば、全身麻酔を行ったうえで腹腔鏡下手術を行います。お話ししたように、体への負担がより小さい腹腔鏡下手術は、複数の病気を抱えることの多い高齢の患者さんにとっても、より体にやさしい手術といえます。

リンパ節の取り残しや血流不全を防ぐために

当院では、大腸がんの手術時に「ICG蛍光対応4K内視鏡システム」を導入しています。このシステムでは、ICGと呼ばれる薬剤を腫瘍の近くに注入すると、リンパ節が光って見えるようになります。当院では、このシステムを活用することで、リンパ節郭清を行う範囲を確認し、リンパ節の取り残しを防ぐよう努めています。

また、ICGを血管に投与すると、血流があるところが光って見えるため血流を確認することも可能です。術後に腸管を吻合(ふんごう)した部分にICGを用いることで、血流不全を発見することができ、術後の合併症の予防につながる可能性があります。

吻合:つなげること

ICGによるリンパ流評価画像
ICGによるリンパ流評価画像

尿管を光らせることによって尿管の温存が可能に

当院では、特殊な装置を用いた尿管を光らせるシステムも導入しており、大腸がんの手術時に使用することがあります。このシステムを用いて尿管を光らせることによって、尿管の位置が明確にわかり、術中に誤って尿管を傷つけてしまうリスクを避けることが可能になります。

安全で正確な手術を目指す厚生連高岡病院の取り組み

術前に3DCTで状態を確認する

当院ではCT画像を立体的な画像にすることができる3DCTによって、術前に病巣や患者さんの状態を確認し、正確な手術を行うことができるよう努めています。また、手術の前には、全症例に対してイメージトレーニングを行い、常に安全な手術を行うことができるよう取り組んでいます。

3DCT画像
3DCT画像

手術動画を編集することで技術力の向上を目指す

腹腔鏡下手術では、モニターに映し出した手術動画がデータとして残ります。私たちは、自分たちが行った手術動画を編集し、何度も確認するようにしています。手術動画の編集では、どのような手術を行ったのか手術のポイントをまとめると共に、改善が必要な点を明確にしていきます。

手術動画の編集は、手術を振り返る機会になり、技術力の向上につながると考えています。

腹腔鏡の技術認定を取得した医師が在籍

当院では、日本内視鏡外科学会が定める技術認定を取得した医師が手術に関わることで、よりよい成績の手術を行うことができるよう努めています。

日本内視鏡外科学会は、腹腔鏡の技術認定制度を設けています。この技術認定を取得するためには、腹腔鏡下手術の手術画像を未編集にした状態で学会の審査を行う部門に送ります。送付後、審査の結果、高度な技術が認められれば技術認定を受けることができます。

大腸がんの手術の準備

正確な手術を行うため手術前にがんに印をつける

当院では、大腸がんの手術前には、がんに印をつける点墨法(てんぼくほう)とクリッピング法を行い、腹腔鏡下手術を前提とした処置を行います。

点墨法とは、病変の近くの粘膜下層に墨汁を注入することで、がんがどこにあるのか印をつける方法です。クリッピング法とは、クリップと呼ばれる医療機器を病巣の周辺に設置することで病巣を明らかにする方法です。

腹腔鏡下手術では、実際に手で病巣に触りながら手術を行わないために、がんがどこにあるのか正確な把握が難しいことがあります。そのため、お話ししたように点墨法とクリッピング法を併用し、がんに印をつけることで、より正確な手術を行うことができるよう努めています。

肺や肝臓などへの転移、他の病気を確認する

また、造影CT検査を行うことで、肺や肝臓などへ転移がないかを確認します。必要に応じて、腸管に造影剤を注入し腸管の状態を映し出す注腸造影検査を行うこともあります。

さらに、糖尿病や心臓病など他の病気にかかっていないかも併せて確認します。高齢の患者さんに対しては、心臓のエコー検査などによって事前に血栓(血の塊)がないかを確認することもあります。

 

大腸がんの手術 (小竹 優範 先生)の連載記事

1998年より医師としてキャリアをはじめる。現在は北陸3県でも大腸がんに対する手術数・腹腔鏡下手術率トップクラスの厚生連高岡病院消化器外科部長として、安全性・根治性・低侵襲に最も優れた治療を提供する。