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大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?

大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴とは?
メディカルノート編集部 [医師監修]

メディカルノート編集部 [医師監修]

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大腸がんの手術では、近年、腹腔鏡*を用いた腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)が一般的になってきています。腹腔鏡下手術には、開腹手術と比べて手術による傷が小さいために痛みが少なく回復が早いという特徴があります。

また、排尿機能や排便機能、性機能などの温存につながるといわれています。それはなぜなのでしょうか。本記事では、大腸がんに対する腹腔鏡下手術の特徴について解説します。

*腹腔鏡:先端にカメラがついた小型の内視鏡。

大腸がんの手術には、主に開腹手術と腹腔鏡下手術があります。

大腸がんの手術として従来から行われてきた開腹手術では、腹部を切開し、がんの切除と共に、がんが広がっている腸管や周辺のリンパ節の切除を行います。一般的に、腹腔鏡下手術が普及した近年でも、がんが広範囲に広がり切除する部位が大きい進行がんに対しては、腹腔鏡下手術による切除が難しいため開腹手術が選択されることが多いです。

開腹手術と共に、近年では、腹腔鏡を用いた腹腔鏡下手術が一般的になっています。腹腔鏡下手術では、二酸化炭素をお腹の中に入れて膨らませ、へそから腹腔鏡を挿入し、お腹の中をモニターに映し出しながら、がんが広がっている腸管の切除や、切除した腸管をつなぎ合わせる吻合(ふんごう)、がん周辺のリンパ節を切除するリンパ節郭清(かくせい)を行っていきます。

腹腔鏡下手術では、鉗子(かんし)*を挿入するためにお腹の左右2箇所ずつに穴を開けます。また、へそに2〜4cm程度の穴を開け、そこから手術操作を行う単孔(たんこう)手術を行うこともあります。

特に早期の大腸がんであれば、腹腔鏡下手術によって、がんの切除を行うことが多くなっています。

*鉗子:血管や腸管、神経などを挟むための手術道具。

腹腔鏡下手術の特徴として、手術による傷が小さい点が挙げられます。

開腹手術では20cm程度切開することが多い一方、腹腔鏡下手術では、鉗子を挿入するために開ける穴以外の3〜5cm程度の切開のみで手術を行います。このように手術による傷が小さいために術後の痛みが軽減され、早期回復につながると考えられています。

また、腹腔鏡によって病巣を拡大して映し出すことで、細かい神経や血管まで確認することが可能です。そのため、がんの根治性を保ったうえで、排尿機能や排便機能、性機能などを調整する神経を損傷することなく手術を行うことができます。

特に、大腸の中でも直腸は排尿機能や排便機能を司る自律神経が近くに通っています。そのため直腸を切除する際にそれらの神経が損傷されると、排尿機能や排便機能、性機能などの障害に直結することがあります。たとえば、若い方であれば、それらの神経を損傷することで性機能に障害が起こり、不妊につながるケースもあるため、妊娠や出産を希望される若い患者さんに対しても、神経を温存することが可能な腹腔鏡下手術は有効と考えられます。

イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート
イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート

がんが遠隔転移しているような場合には、腹腔鏡下手術と開腹手術を組み合わせた手術が行われることもあります。たとえば、肝臓に転移が生じている場合には、まず腹腔鏡下手術で腸管の原発巣の切除を行い、その後、肝臓の転移部分を開腹手術によって切除していきます。

また、周辺の小腸や、女性であれば子宮や卵巣、男性であれば前立腺や膀胱にがんが広がっている場合、切除範囲は大きくなりますが、原発巣の切除と共に、がんが広がっている周辺の部位も腹腔鏡下手術によって切除していきます。このように、がんが広範囲に広がっている場合にも、腹腔鏡によってさまざまな方向から病巣を確認することでがんの取り残しを防ぐことができる点は大きなメリットであるといえます。

また、大腸がんの患者さんには、高齢の方も少なくありません。体への負担がより小さい腹腔鏡下手術は、複数の病気を抱えることの多い高齢の患者さんにとっても、より体にやさしい手術といえるでしょう。

従来であれば肛門を切除しなくてはいけなかったような下部直腸がんに対して、肛門括約筋(こうもんかつやくきん)*の一部のみを切除し、肛門を残す肛門温存手術が行われるケースもあります。

肛門温存手術は、人工肛門**を回避できることがメリットのひとつと考えられますが、技術的に肛門を残すことが可能な患者さんすべてに推奨されるわけではありません。たとえば、寝たきりなど自分で排便することが難しい患者さんには、肛門を残すメリットよりも排便にかかる負担を考慮し、推奨されないケースもあります。

*肛門括約筋:肛門を締める筋肉。
**人工肛門:お腹から腸の一部を外に出してつくる肛門に代わる便の出口。

肛門温存手術は、手術の結果、再発のリスクが高くなってしまうと判断する症例には行いません。たとえば、肛門を温存する場合、切除する範囲が狭くなるために、根治性が低くなってしまうケースがあります。このようなケースを回避するため、肛門温存手術を行う場合には、がんの進行度やがんが広がっている範囲、がんの性質などから再発のリスクがないか総合的に判断することが大切になります。

人工肛門(ストーマ)

人工肛門(ストーマ)とは、腸の一部を外に出してつくる肛門に代わる便の出口を指し、大腸がんの手術後には、この人工肛門を使用していただくケースもあります。

人工肛門をつくるかどうかは、年齢や体の状態、患者さんのご希望などによって異なります。なお、術後一時的に人工肛門をつくり回復後に人工肛門を閉じるケースもあれば、永久人工肛門をつくるケースもあります。

腹腔鏡下手術による大腸がんの手術前には、がんに印をつける点墨法(てんぼくほう)とクリッピング法による処置が行われます。

点墨法とは、病変の近くの粘膜下層に墨汁を注入することで、がんがどこにあるのか印をつける方法です。クリッピング法とは、クリップと呼ばれる医療機器を病巣の周辺に設置することで病巣を明らかにする方法です。

腹腔鏡下手術では、実際に手で病巣に触れながら手術を行わないために、点墨法とクリッピング法を併用して、がんがどこにあるのか正確に把握する必要があります。

また、造影CT検査を行うことで、肺や肝臓などへ転移がないかを確認します。必要に応じて、腸管に造影剤を注入し腸管の状態を映し出す注腸造影検査を行うこともあります。

さらに、糖尿病や心臓病など他の病気にかかっていないかも併せて確認します。高齢の患者さんに対しては、心臓のエコー検査などによって事前に血栓(血の塊)がないかを確認することもあります。

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