大腸がんとは大腸の粘膜にできる悪性腫瘍で、大腸の中でも肛門に近いS状結腸や直腸に好発します。日本では近年罹患者数が増加していて、罹患者数はがんの中でもっとも多いですが、早期診断・早期治療を行うことで予後が大きく改善されることが分かっています。
本記事では、大腸がんが見つかるきっかけとなる検診から精密検査の詳細まで解説します。
初期には症状はほとんどなく、検診をきっかけに見つかることも少なくありません。進行すると血便、便秘・下痢、便が細くなるなどの症状が現れることが一般的です。もっとも多い症状は血便ですが、これは痔などほかの病気でもみられるため、進行してもなお、放置されてしまう場合もあります。さらに、がんが大きくなるにつれ、便秘やそれに伴う下痢などの症状がみられ、便が大腸を通過できなくなると、腹痛や腸閉塞が起こります。また、肝臓や肺に転移した大腸がんが先に発見されることもあります。
血便等の症状があったら早めに医療機関を受診することはもちろんのこと、早期発見のためには症状がない段階でいかに定期的に大腸がん検診を受けるかが重要となります。
大腸がん検診は40歳以上の健常者が対象で、毎年定期的に検診を受けることが推奨されています。検診の内容は問診と便潜血検査が一般的なものになります。
便潜血検査とは、2日分の便を採取して便に血液が混じっていないか検出する検査方法です。この検査では、便に混じった目に見えない血液も検出することができます。
大腸がん検診で“異常あり”という結果の場合、精密検査が必要になります。痔などほかの原因により異常を指摘される場合もありますが、大腸がんを見逃さないためにも自己判断せずに精密検査を受けることが重要です。
なお、すでに何らかの症状がある場合は検診ではなく内科(特に消化器内科)を受診するようにしましょう。
大腸がん検診などで大腸がんの疑いがある場合は、一般的には全大腸内視鏡検査で直接大腸内を観察することで、がんの有無を調べます。ほかの選択肢としては、大腸CT検査やカプセル内視鏡検査、注腸造影検査などがあります。
全大腸内視鏡検査とは内視鏡と呼ばれる細長いカメラを肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸の全部位を観察する検査です。がんやポリープなどの病変の有無を直接確認できるほか、組織を採取し、確定診断することができます。
大腸CT検査では肛門からガスを注入し大腸を拡張させて、CT検査を行います。大腸の3次元画像を観察することで、大腸がんやポリープの有無を判断します。直接観察するわけではなく、組織を採取できないので、確定診断はできません。主に大腸の狭窄や癒着などにより内視鏡が奥まで入らない場合に有効な検査で、内視鏡と比べ、少ない下剤で検査を行えるので少ない負担で検査を受けられます。
注腸造影検査では肛門から造影剤(バリウム)を注入し、空気で大腸を膨らませてX線撮影します。一昔前まででは主流の検査でしたが、現在では全大腸内視鏡検査もしくは大腸CT検査が主流で、大腸がんの診断がついた後に病変の広がりを確認するために行うことが多いです。
また、大腸のカプセル内視鏡検査という方法もあります。大腸CT検査と同様に癒着などで内視鏡が奥まで入らない場合に選択肢となる方法です。ただ、観察のみで組織の採取や治療はできません。
大腸がんとは近年増加傾向にある悪性腫瘍で、40歳以上の健常者を対象に検診が推奨されています。検診では問診・便潜血検査が行われ、異常が指摘された場合には精密検査を受ける必要があります。
大腸がんは早期診断・治療により予後を改善することのできる病気なので、異常を指摘された場合は自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。また、血便や下血など何らかの症状がある場合には内科(特に消化器内科)を受診するとよいでしょう。
NTT東日本関東病院 消化管内科・内視鏡部 部長
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