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写真・画像でみる大腸がんの腹腔鏡下手術

写真・画像でみる大腸がんの腹腔鏡下手術
渡邉 純 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科 准教授

渡邉 純 先生

目次
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この記事の最終更新は2016年08月10日です。

大腸がんの治療方法は、腫瘍(しゅよう)の大きさやステージ(がんの進行度)、患者さんの状態などを総合的に考慮して決定します。大腸がんに対する治療は外科治療および化学療法の単独、またはその組み合わせが基本となります。大腸がんと診断された多くのケースでは、お腹を切って病変を摘出する外科治療が行われます。外科治療の中には、お腹を切って病変を摘出する開腹手術と、内視鏡の一種である腹腔鏡(ふくくうきょう)を使う腹腔鏡下手術があります。

大腸がんに対する腹腔鏡下手術とは、一体どのような手術なのでしょうか。横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科 准教授の渡邉純先生に教えていただきました。

腹腔鏡

腹腔鏡

腹腔鏡下手術を簡単に説明すると、お腹に複数の穴を開け、そこに通した細い管に小さなカメラや電気メスを挿入し、モニター映像を見ながら行う手術です。お腹を大きく切開して内臓を直接見ながら行う開腹手術の代わりに行います。

腹腔鏡下手術は、開腹手術に比べて患者さんの体を傷つける範囲が少ないことが特徴で、当院で腹腔鏡下手術を行う最大の目的も、患者さんへの負担を少なくすることです。

まず、おへそのあたりの体壁(内臓を守るように囲んでいる皮膚・筋肉)を1cm程度切開し、外套管(がいとうかん)と呼ばれる器具を挿入します。そこから、体内の様子をモニタリングするため、腹腔鏡を挿入します。次に、炭酸ガスを注入し、腹部を膨らませて手術可能なスペースを確保します。この炭酸ガスは電気メスを用いても引火せず、術後は体内に吸収されるため、命に関わるような悪影響が及ぶことはめったにありません。

その後、さらに数か所切開し外套管を設置したのち、鉗子(かんし:物をつかんだり引っ張ったりするための手術器具の1つ)や電気メスなどの器具を入れて病変の切除を行います。術者はモニターで患者さんの腹腔内の様子を見ながら手術を行います。

テクノロジーにより生まれた腹腔鏡下手術は、開腹手術に比べ歴史が浅いために、メリット・デメリットが慎重に検証されてきました。腹腔鏡のメリットが顕在化してきた近年では、大腸がんに対し腹腔鏡下手術が適応されるケースも増えています。

しかし、腹腔鏡下手術は術者やチームの技量・習熟度に大きく左右される治療法です。そのため、どのような症例に対して腹腔鏡下手術を適応するかは施設によってまちまちです。

横浜市立大学附属市民総合医療センターでは、2018年(1月~12月)においては大腸がん(原発巣切除)手術の95%を腹腔鏡下手術で行いました。

創部(開腹と人工肛門)

創部(開腹手術と人工肛門(じんこうこうもん)

大腸がんの根治を目指した方法として以前より定着している開腹手術は、体壁を10cm以上切開し、手を使って手術を進めます。がんの部位と深達度、そして術前に予想されたリンパ節転移の有無を考慮し、決められた範囲を切除することになります。古くから行われているので、習熟した術者が数多くいることが開腹手術の大きなメリットといえるでしょう。

一方、お腹を大きく切るため、腹腔鏡下手術に比べて体への負担が大きい手術となります。創部(傷口のこと)に強い痛みが出やすく、腹腔鏡下手術に比べると、術後から退院するまでに時間がかかってしまいます。入院期間が長いことは、患者さんの社会復帰を妨げる要因となります。

また、手術跡が目立つ点も開腹手術のデメリットの1つといえるでしょう。

創部(腹腔鏡)

創部(腹腔鏡下手術)

腹腔鏡下手術は、カメラや器具を入れるための小さな穴を腹部に数か所開けて行うため開腹手術に比べ創部が小さく、体にかかる負担を抑えることが可能です。

創が小さいことから手術跡の治りも早く、そのため退院までの期間を短く済ますことができます。日常生活に戻るまでの期間を短縮できることも、腹腔鏡下手術のメリットと捉えることができるでしょう。そのほか、開腹手術より出血量が少ないことや、術後の腸管運動の回復が早いことなどもメリットとして挙げられます。さらに、大腸の手術による合併症の1つである、腸閉塞(ちょうへいそく)*を起こす頻度が、開腹手術に比べて少ないという研究報告もあります。

このように、腹腔鏡下手術にはさまざまなメリットがあります。ただし、腹腔鏡下手術が適さないケースもあります。

*腸閉塞:腸内に内容物がつまることで膨満感や嘔吐などの症状を起こす病気。

腹腔鏡下手術では、炭酸ガスを腹腔に注入し、肺や心臓を押し上げて圧迫します。そのため、手術を受ける患者さんの心臓や肺の機能が低下している場合には、腹腔鏡下手術は困難になることがあります。

手術によって取り出せる腫瘍の大きさは、腹部に開けた傷の大きさに依存します。つまり、かなり大きな腫瘍の場合には、その腫瘍を取り出すための切開が必要となり、小さい傷では対応できません。また、がんの発生部位も、腹腔鏡下手術の難易度に影響があります。特に直腸や横行結腸(おうこうけっちょう)に生じたがんの切除は難易度が高いとされるため、腹腔鏡下手術に習熟した医師が手術を担当することが望ましいとされています。

横浜市立大学附属市民総合医療センター 下部消化管グループの医師の皆さん(写真右から4番目:渡邉純先生)
横浜市立大学附属市民総合医療センター 下部消化管グループの医師の皆さん(写真右から4人目:渡邉純先生)
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