記事1『消化管内視鏡とは—その種類とメリット』では、診断を中心に内視鏡検査の種類やメリットをお話しました。本記事では、内視鏡を用いた大腸がんの診断・治療についてご説明します。広島大学病院の田中信治先生にお話を伺いました。
大腸がんの診断では、大腸内視鏡検査を行います。大腸内視鏡検査とは、結腸と直腸を対象として(ときに回腸末端部も含む)、内視鏡を肛門から体内に挿入し観察することで、疾患を診断するとともに病態を把握する検査です。
大腸がんの診断には、通常内視鏡検査と色素内視鏡検査、拡大内視鏡を用いて表面構造を詳細に観察する拡大内視鏡検査が有用です。大腸で行う色素内視鏡検査では、色素液の凹面へのたまり現象を応用して凹凸を強調させるコントラスト法(インジゴカルミンなど)や組織との特異反応を利用する反応法(クリスタルバイオレットなど)がよく行われます。拡大内視鏡検査は色素撒布後(インジゴカルミン、クリスタルバイオレットなど)あるいはNBIやBLIなどの画像強調観察により、大腸がんの表面微細構造を拡大し、詳細な観察により腫瘍の性質や深達度(深さ)、範囲を正確に診断する検査法です。現在は通常の大腸内視鏡に組み込まれており簡便に行えるようになっています。また生検組織検査(病変の一部を採取して顕微鏡で詳しく診断する)も同時に行います。
費用は15,500円(粘膜点墨法を行った場合は600円、拡大内視鏡機を用いて観察を行った場合には、狭帯域光強調加算として2,000円)です。
早期大腸がんに対しては、病変の性状・形・大きさ・部位により、以下の治療法が選択されます。
病変基部をスネアでしばって、高周波電流でポリープを切除する方法です。胃・小腸・大腸における有茎性(ゆうけいせい:粘膜面から茎をもって発育している)、亜有茎性ポリープ(茎はないが隆起し、くびれた状態)が適応となります。
生理食塩水を粘膜下層 (腫瘍の下部と周囲)に注入して人工的に隆起を形成し、腫瘍をスネアで切除します。すべての消化管(食道・胃・大腸)におけるがんや平坦な病変が適応となります。
内視鏡的粘膜下層剥離術は、早期の消化管がんに対する治療法として、全国的に普及し保険適応となっています。ESD用に開発された各種デバイス (ITナイフ2、Hookナイフ、SBナイフ、Dualナイフなど) を用いて、大きな病変でも確実に一括切除できる手技です。
まず、病変周囲にマーキングを置いたのち、粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム等を局注し病変を挙上させます。次にマーキングの外側の粘膜を切開し、粘膜下層を剥離して病変を摘除します。ESD術中に出血したり露出血管を認めたりした場合には、凝固止血処置を行います。
JA尾道総合病院 病院長、広島大学 名誉教授、日本医学会 評議員
JA尾道総合病院 病院長、広島大学 名誉教授、日本医学会 評議員
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡指導医日本消化器病学会 消化器病指導医日本大腸肛門病学会 大腸肛門病指導医日本内科学会 内科指導医日本消化管学会 胃腸科指導医日本炎症性腸疾患学会 IBD指導医
1984年に広島大学医学部医学科を卒業後、同大医学部附属病院内科に研修医として入局。1986年より北九州総合病院内科、広島赤十字・原爆病院内科、国立がんセンター病院(現・中央病院)内視鏡部研修医などを経て帰局。1997年、ブラジル・リオグランデ州立大学消化器科客員教授。1998年、広島大学医学部附属病院光学医療診療部助教授。2000年に同光学医療診療部部長、2007年、広島大学病院内視鏡診療科教授。2023年から現職。
田中 信治 先生の所属医療機関
関連の医療相談が26件あります
胸膜腫瘍とは
大腸がんの手術をしました(ステージ3b)胸にもCTで肋骨のあいだに1.4×1.7の腫瘍が見つかり手術で切除することになりました。担当医は取ってみないとわからないとのことですが、悪性の確率はどれぐらいなのでしょうか。
大腸がん検診の結果で再検査と言われた
便潜血反応検査で血が混じっていたとの結果が出て、受診をお勧めしますとの通知を受けたのですが、すぐにでも受診すべきでしょうか?
腸閉塞の予防と対処方法
30年ほど前に大腸がんの開腹手術をしました。去年2回腸閉塞で入院しましたがいずれも1晩で治りましたが今後も再発が怖い 何か予防方法はないですか?
人口肛門について
私の母が先日、大腸癌と診断され、24日に詳しい話を家族同伴で聞いてきます。 大腸癌は2センチになっており、進行性、その他小さなポリープが少し出ているとの診断でした。 2センチの癌は肛門出口付近にでているので、人口肛門は間逃れないとのことですが、人口肛門をつけなくてもよい手術方法などあるのでしょうか?お医者様の腕にもよるのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「大腸がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。