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インタビュー

内視鏡を用いた大腸がんの診断・治療

内視鏡を用いた大腸がんの診断・治療
田中 信治 先生

JA尾道総合病院 病院長、広島大学 名誉教授

田中 信治 先生

この記事の最終更新は2017年11月28日です。

記事1『消化管内視鏡とは—その種類とメリット』では、診断を中心に内視鏡検査の種類やメリットをお話しました。本記事では、内視鏡を用いた大腸がんの診断・治療についてご説明します。広島大学病院の田中信治先生にお話を伺いました。

大腸がんの診断では、大腸内視鏡検査を行います。大腸内視鏡検査とは、結腸と直腸を対象として(ときに回腸末端部も含む)、内視鏡を肛門から体内に挿入し観察することで、疾患を診断するとともに病態を把握する検査です。

大腸がんの診断には、通常内視鏡検査と色素内視鏡検査、拡大内視鏡を用いて表面構造を詳細に観察する拡大内視鏡検査が有用です。大腸で行う色素内視鏡検査では、色素液の凹面へのたまり現象を応用して凹凸を強調させるコントラスト法(インジゴカルミンなど)や組織との特異反応を利用する反応法(クリスタルバイオレットなど)がよく行われます。拡大内視鏡検査は色素撒布後(インジゴカルミン、クリスタルバイオレットなど)あるいはNBIやBLIなどの画像強調観察により、大腸がんの表面微細構造を拡大し、詳細な観察により腫瘍の性質や深達度(深さ)、範囲を正確に診断する検査法です。現在は通常の大腸内視鏡に組み込まれており簡便に行えるようになっています。また生検組織検査(病変の一部を採取して顕微鏡で詳しく診断する)も同時に行います。

早期大腸がんの通常内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんの通常内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんの通常内視鏡観察像 
早期大腸がんのインジゴカルミン散布内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんのNBI拡大内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんのNBI拡大内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんのインジゴカルミン散布拡大内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんのインジゴカルミン散布拡大内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんのクリスタルバイオレット染色拡大内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
早期大腸がんのクリスタルバイオレット染色拡大内視鏡観察像 画像提供:田中信治先生
 

費用

費用は15,500円(粘膜点墨法を行った場合は600円、拡大内視鏡機を用いて観察を行った場合には、狭帯域光強調加算として2,000円)です。

早期大腸がんに対しては、病変の性状・形・大きさ・部位により、以下の治療法が選択されます。

(1)ポリペクトミー (Polypectomy)

病変基部をスネアでしばって、高周波電流でポリープを切除する方法です。胃・小腸・大腸における有茎性(ゆうけいせい:粘膜面から茎をもって発育している)、亜有茎性ポリープ(茎はないが隆起し、くびれた状態)が適応となります。

(2)内視鏡的粘膜切除術 (endoscopic mucosal resection: EMR, strip biopsy)

生理食塩水を粘膜下層 (腫瘍の下部と周囲)に注入して人工的に隆起を形成し、腫瘍をスネアで切除します。すべての消化管(食道・胃・大腸)におけるがんや平坦な病変が適応となります。

(3)内視鏡的粘膜下層剥離術 (endoscopic submucosal dissection: ESD)

内視鏡的粘膜下層剥離術は、早期の消化管がんに対する治療法として、全国的に普及し保険適応となっています。ESD用に開発された各種デバイス (ITナイフ2、Hookナイフ、SBナイフ、Dualナイフなど) を用いて、大きな病変でも確実に一括切除できる手技です。

まず、病変周囲にマーキングを置いたのち、粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム等を局注し病変を挙上させます。次にマーキングの外側の粘膜を切開し、粘膜下層を剥離して病変を摘除します。ESD術中に出血したり露出血管を認めたりした場合には、凝固止血処置を行います。

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