インタビュー

内視鏡を用いた小腸疾患の診断・治療

内視鏡を用いた小腸疾患の診断・治療
田中 信治 先生

広島大学病院内視鏡診療科 教授 / 広島大学大学院医歯薬保健学研究科内視鏡医学 教授

田中 信治 先生

記事1『消化管内視鏡とは—その種類とメリット』では、診断を中心に内視鏡検査の種類やメリットをお話しました。本記事では、内視鏡を用いた小腸疾患の診断・治療についてご説明します。広島大学病院の田中信治先生にお話を伺いました。

小腸疾患の診断・治療

小腸は長らく「暗黒の臓器」と呼ばれてきた

小腸は通常の内視鏡で到達することが難しく未解明のことが多いため、長らく「暗黒の臓器」といわれてきました。しかし、小腸にもほかの臓器と同様に炎症や腫瘍などの病変が存在します。 近年普及してきたカプセル内視鏡(詳しくは後述します)とバルーン内視鏡は、小腸の病変の診断・治療を可能とし、小腸分野の診療は飛躍的な進歩をとげてきました。しかし、カプセル内視鏡は生検など組織検査ができない、狭窄(すぼまって狭い状態)があると実施できないなどの欠点があります。長い小腸を内視鏡で観察する検査法として自治医科大学の山本博徳先生らによってダブルバルーン内視鏡が考案されました。

ダブルバルーン内視鏡によって小腸の検査は大きく進歩した

小腸は全長6〜7mにもなり、小腸は腹腔内で固定されていないため、通常のスコープでの深部挿入が困難でした。ダブルバルーン内視鏡は内視鏡の先端にバルーンがついています。さらにバルーン付きオーバーチューブ(内視鏡を通すチューブ)を用い、バルーンオーバーチューブ先端のバルーンで腸管を維持しておくことで、腸管が引き延ばされることを防ぎ、内視鏡先端の深部小腸への前進につなげることを可能としました。※ダブルバルーン内視鏡検査の詳しい情報は、メディカルノート内記事(https://medicalnote.jp/contents/170713-002-WO)をご覧ください。

ダブルバルーン内視鏡の手順

前処置

  • 経口的検査:通常の上部消化管内視鏡と同様に、前日の夕食後より絶食します。
  • 経肛門的検査:通常の大腸内視鏡と同様に、前日の夕食後より絶食し、当日の朝より下剤を内服します。

前投薬

経口的検査、経肛門的検査ともに1~2時間かかる検査のため、鎮静剤を用いて十分に鎮静し、患者さんの苦痛を軽減します。

応用

2つのバルーン、オーバーチューブを用いて腸管が伸びるのを防げるため、通常の大腸内視鏡での挿入困難症例、術後の腸管にも応用できます。

適応となる症例

  • 原因不明の消化管出血
  • ほかの画像検査で認められる器質的異常(腫瘍・炎症性病変など)
  • 手術後症例の病態解明(Roux-en-Y吻合など)
  • 慢性の下痢
  • 吸収不良症候群(消化・吸収障害によりさまざまな症状が起こる)
  • 通常の大腸内視鏡の挿入が難しい例

費用

平成28年度診療報酬は70,000円(3割負担で21,000円)です。入院費用や検査時に使用した薬剤などによって費用は若干異なります。(出典:医科診療報酬点数表 平成28年4月版)

カプセル内視鏡検査(小腸)

カプセル内視鏡検査では、従来通常の内視鏡で観察が難しかった小腸を低侵襲に検査することができます。患者さんの腹部にセンサーアレイ(カプセルからの情報を受信するための装置)を貼りつけ、腰にデータレコーダを装着したのち、コップ1杯の水でカプセル型の小型内視鏡を飲み込みます。

カプセル内視鏡は消化管のぜんどう運動によって進みながら連続的に静止画像を撮影し、そのデータはセンターアレイを介して、無線で腰に装着したレコーダーに送信される仕組みになっています。検査時間はおよそ8時間で、検査の間は日常動作が可能です。検査終了後は機器をとり外し、レコーダーのデータをコンピュータ解析ソフトにダウンロードしたのち、読影を行います。

検査の対象となる患者さん

小腸疾患と診断された、または小腸疾患を疑う患者さんが検査の対象となります。しかしながら、カプセル内視鏡が腸管内に停留してしまう可能性が高いと考えられる場合や、過去にペースメーカー植込みをしたことがある方については、慎重に適用を判断します。

費用

本体の材料費と技術料(検査・診断料)を合計して94,200円です。

カプセル内視鏡検査(大腸)

羞恥心のために大腸内視鏡検査を敬遠している方、特に女性におすすめです。また、非常に長い腸管や術後あるいは炎症後などの癒着によって、通常の大腸内視鏡挿入が困難な患者さんにもおすすめです。

検査の対象となる患者さん

2014年1月に保険適用になったこの大腸カプセル内視鏡検査の適応基準は、材料費(カプセル内視鏡そのもの)が約83,000円と高価なこともあり、腹腔内の癒着などにより通常の大腸ファイバースコープが深部大腸まで挿入できない場合に限られます。従って、現時点では、通常の大腸内視鏡検査で深部大腸まで挿入可能な方は保険診療では大腸カプセル内視鏡検査を受けることはできません。なお、病状によって通常の大腸内視鏡検査が困難な方や保険診療でない人間ドックなどの自費診療であれば検査を受けることは可能です。