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インタビュー

三重大学医学部附属病院の膵がん教室・パープルリボン活動―患者さんが前向きに膵臓がんと向き合うために

三重大学医学部附属病院の膵がん教室・パープルリボン活動―患者さんが前向きに膵臓がんと向き合うために
岸和田 昌之 先生

三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科 講師、三重大学医学部臨床医学系講座 肝胆膵・移植外科...

岸和田 昌之 先生

日本人のがん種別死因の第4位である膵臓がん。がんのなかでも難治性で早期発見が難しいがんだといわれています。膵臓がんを告知され、途方に暮れる患者さん、正しい医療情報を得られず路頭に迷ってしまう患者さんやそのご家族に向け、三重大学医学部附属病院では「膵がん教室」などを含めたパープルリボン活動を積極的に行っています。多くの患者さんが前向きに膵臓がん治療を受けるための取り組みについて、本記事では膵がん教室のレポート、そして三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科 岸和田昌之先生にお話をうかがいます。

2017年1月24日。三重大学医学部附属病院内・リボンズハウスに続々と人が集まってきました。集まったのは膵臓がんの患者さんやそのご家族6名。この日、2017年になって初めての「膵がん教室」が開かれました。

膵がん教室で使用されるスライド
膵がん教室で使用されるスライド

「膵がん教室」とは、膵臓がんと正しく向き合うために医師・看護師・薬剤師・臨床心理士・栄養士・医療ソーシャルワーカーなどの各専門家が、教室という形で膵臓がんの患者さんやそのご家族に向け、膵臓がんについての教育と生活支援・をしていく場です。患者教育・家族教育の場としての機能のほかにも、院内・院外連携を深める場、医学生の教育の場としても機能しています。

もともと、膵がん教室は2007年に国立がんセンター中央病院の奥坂拓志医師により、国立がんセンター病院内の膵臓がんの患者さんを対象に始められました。それから10年が経った2017年1月現在、総合病院を中心として全国20施設ほどで膵がん教室が開かれています。

三重大学医学部附属病院では東海・近畿圏で初めて膵がん教室を行いました。今までで述べ100回以上にわたり膵がん教室を開催し、多くの方が参加されています。

膵臓の仕組みについて解説する岸和田先生
膵臓の仕組みについて解説する岸和田先生

この日開かれた膵がん教室は、三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科の岸和田昌之先生が講師となって講義が行われました。

テーマは「膵臓ってどんなはたらきをするの?」。図や写真を豊富に用いたスライドで、岸和田先生が膵臓のはたらきから膵臓がんの病態まで丁寧に解説します。参加者の方々はみな真剣に岸和田先生の話に聞き入り、活発に質問が飛び交いました。

特に参加者の方々が驚いていた点が、膵臓がんの治療中にもカップ麺などの高カロリーな食品や、間食として甘いものを食べることはOKだという点。

岸和田先生によると「膵臓がんになると消化・吸収機能が落ちるために、健康な人より多くのカロリーが吸収されないまま便として排出されてしまうのです。たとえば1日2000kcal摂取したとしても、健康であれば50kcal程度しか体外に出ませんが、膵臓がんになると500kcalもカロリーが排出されてしまいます。つまり非常にエネルギーの摂取効率が悪いため、できるだけ多くのカロリーを摂って補う必要があります。そうとはいえ、膵臓がんの治療中は化学療法の副作用などによって食欲が減退することも多いですから、なるべく少ない量で効率的にカロリーを摂取できる、カップ麺などの高カロリーのものを食べてもいいのです」ということでした。

「別の病院の栄養士の方には、糖尿病予防のために低カロリーでバランスのよい食事を心がけるようにいわれました」という患者さんのご家族の方の声に、他の参加者も首肯します。しかし岸和田先生は、「膵臓がんは早期発見が難しく、治療開始時にはステージⅢ以上ということがほとんど。短期決戦での治療になりますから、数年後の糖尿病のリスクよりも、今、からだを蝕んでいる膵臓がんの治療のために、体力をつけることが大事です」と述べられました。

食事のほかにも、抗がん剤などの薬のこと、今の症状のことなどの悩みや疑問が参加者から岸和田先生に寄せられます。例をあげると、膵臓がんの手術のあとに下痢になってしまうのは、膵臓切除による消化酵素の分泌減少が原因の消化不良だけでなく、手術で腸の機能を調節する神経まで切ってしまい、下痢が続くこともあるということ。

症状が起こる原因を知ることで、症状に対して過度に不安にならずに適切に治療を受けることができます。こうした理解が、患者さんが前向きに膵臓がんの治療を続けられる一助となるのです。

参加者同士が交流する1コマも
参加者同士が交流する1コマも

約30分の講義終了後は、参加者と岸和田先生のあいだで、対話の時間が設けられました。悩みや質問に岸和田先生が丁寧に答えたり、また、患者さん同士の交流もみられました。同じ膵臓がんを患う方、膵臓がんの患者さんが身近にいる方同士、日々の不安や苦労などの経験について情報交換することで、治療を続けていくうえでの支えになります。

また、大人数の講演ではなく少人数の教室形式にすることで患者さんと講師、参加者同士の距離が近くなり、より本音で膵臓がんについて語りあうことができるようになるというメリットもあります。

飲料メーカーと共同で設置したパープルリボン自動販売機。売上の5%が膵臓がん患者支援活動のために寄付されます
飲料メーカーと共同で設置したパープルリボン自動販売機。売上の5%が膵臓がん患者支援活動のために寄付されます

乳がんのピンクリボンに代表されるリボン運動も行っています。膵臓がんのリボンの色は紫で、「パープルリボン活動」として膵臓がんの早期発見に向けた検診の推進、膵臓がんの患者・家族支援を行っています。三重県では2012年より三重大学医学部附属病院が中心となって、「三重パープルリボン」と題した活動を積極的に推進してきました。

前述の膵がん教室をはじめ、膵がん啓発のためのウォークイベント、津市をメインとした市民公開講座、無料相談会などを開催しています。これまでに多くの方が参加し、時には楽しみながら膵臓がんの啓発や患者・家族支援に向けて活動しています。

次回の三重県でのパープルリボン活動は、2017年9月10日(日)に開催予定です(イベント名:パープルリボン2017 in 津)。

ご興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 

岸和田先生

膵臓がんは日本人のがん別の死因では4位のがんです。また、早期発見が難しいことから発見時にはがんが進行しており、その治療は短期決戦、つまりいかに短期間で効果的な治療を施していくか、ということにかかっています。そのためには膵臓がんの治療を専門的に行っている施設の受診が望まれます。

専門施設の受診のほかにも、治療にあたってインターネットなどに氾濫した情報に惑わされないため、患者さんやご家族自身が、膵臓がんや治療への正しい知識を得ることも非常に大切です。そのために三重大学医学部附属病院など、全国で膵がん教室が開かれ、膵臓がんについて学ぶ機会が設けられています。

なかには「膵がん教室に参加する意味はあるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし先も述べたとおり、今つらい症状が起こる理由や、服用している薬などについて正しい知識を得ることによって安心感を得られ、前向きに治療と向き合うことができます。また、患者さんのほうから主治医の先生に栄養指導をかけたり、薬についての指摘をしたりという積極的な姿勢もみられています。

今後も膵がん教室やパープルリボン活動を継続するためには、病院などにその活動を評価されることが重要です。今後も多くの膵臓がんの方が安心して治療を受けられる環境、そして膵臓がんの早期発見、啓発のために尽力していきたいと思います。

ですから、今、膵臓がんと闘っている患者さんやそのご家族には、ぜひこのような取り組みを知っていただき、よりよい治療のために可能であればこれらの活動に参加していただきたいです。

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  • 三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科 講師、三重大学医学部臨床医学系講座 肝胆膵・移植外科学 講師、日本臨床外科学会 会員

    岸和田 昌之 先生

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