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膵臓の機能を温存する膵臓縮小手術とは?適応疾患とメリット、全摘出のリスクについて

  • #膵臓がん・膵がん
  • #インスリノーマ・インスリン産生膵島細胞腫
  • インタビュー
  • 公開日:2017/04/21
  • 更新日:2017/04/21
膵臓の機能を温存する膵臓縮小手術とは?適応疾患とメリット、全摘出のリスクについて

膵臓は体内で内分泌機能、外分泌機能という2つの重要な役割を担っています。その膵臓を手術ですべて摘出した場合、消化機能障害を起こしたり、糖尿病になりやすくなってしまったりと、様々な問題が発生します。そこで、膵臓の機能を温存するために、腫瘍がある部分だけを切除する膵臓縮小手術という方法が用いられることがあります。

藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院では、残せる臓器は残す、膵臓も残せる膵は可及的に温存するという考えのもとに、膵臓縮小手術を積極的に行っています。今回は消化器外科教授の堀口明彦先生に、一般的な膵臓縮小手術の種類や、縮小手術を行うことでどういったメリットが生まれるかなどを中心にお話をうかがいました。

膵臓の役割―内分泌機能と外分泌機能がある

膵臓のつくり

膵臓はお腹の中で外分泌機能と内分泌機能という2つの重要な役割をつかさどっている臓器です。1つ目の外分泌機能とは、消化液や唾液などの分泌物が作られた臓器から導管という管を通り体に作用する機能のことです。膵臓からはこの外分泌機能で、消化液が膵管を通って十二指腸に分泌されています。

2つ目の内分泌機能とは、それぞれの臓器で作られた分泌物が、導管ではなく血液を通して体に作用する機能のことをいいます。膵臓ではインスリンなどのホルモンを血液中に放出し、血糖値のコントロール(糖をエネルギーに変換する)などを行っています。

このように膵臓は、内分泌機能と外分泌機能の2つが密接に組み合わさりながら、食べたものを消化し、糖をコントロールするという働きをしています。また、膵臓は、どちらか1つの機能が良好になると、つられてもう1つの機能もよくなる仕組みがあります。その理由はまだ解明されていません。

膵臓を全摘出するリスク 消化機能障害や糖尿病を起こしやすくなる

膵臓はインスリンを分泌して血糖をコントロールしたり、消化液を出したりする機能を持っているため、膵臓をすべて摘出してしまった場合は様々な弊害が発生します。

まず、消化液を分泌できなくなるため食べたものがうまく消化・吸収できなくなり、消化機能障害が起こります。また、インスリンを作れないので、糖尿病になりやすくなります。糖尿病予防のために、インスリン注射を毎日打ち、血糖のコントロールを行わなければなりません。

そして、この2つの機能不全が重なると、頻繁に下痢が起こります。この結果、術後の患者さんのQOL(Quality of Life=生活の質)が大幅に低下するリスクもあるのです。

膵臓の機能を温存する膵臓縮小手術の適応疾患は?

腫瘍の範囲が大きな膵臓がんなどの場合は、根治性(確実に疾患を治療する可能性)を考慮して膵臓の頭側か尾側を摘出しなければなりません。しかし、低悪性度(ほぼ正常にみえる範囲の腫瘍)の腫瘍に対しては、術後の患者さんのQOL低下を防ぐために、臓器の病巣部分の膵臓だけを切除し、膵臓の重要な機能をなるべく残す膵臓縮小手術が行われています。

インスリノーマや膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などが膵臓縮小手術の対象となる

膵臓縮小手術は、インスリノーマや膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などの、低悪性度の疾患が対象となります。

インスリノーマとは、膵臓のインスリンを作る細胞が増えて腫瘍を作る疾患です。腫瘍からは多量にインスリンが分泌されるため、常にエネルギーとなる食べ物を摂取している必要があります。たとえば、寝ている間に低血糖となり、目が覚めて起き上がった瞬間に意識を失って倒れてしまうこともあります。

また、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)では、膵臓のなかに袋が形成され、その袋のなかに上皮の腫瘍が生じます。腫瘍内ではドロドロとした粘液を発生し、腫瘍が大きく腫れると粘液は膵管を通り、十二指腸のファーター乳頭※から排出されます。

※ファーター乳頭とは、十二指腸に空いている胆管と膵管が合体した穴で、十二指腸に胆汁や膵液を出す役割を担っています。

内科と外科の連携で慢性膵炎にも縮小手術を行う

藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院の消化器内科には、慢性膵炎の患者さんも多く来られます。慢性膵炎とは、膵臓が炎症を繰り返すことで、膵臓が委縮し固くなる疾患です。主な原因は、多量のアルコール摂取です。

慢性膵炎の患者さんのなかには、膵頭部に膵石ができているケースもあります。そういった場合は、消化器外科と消化器内科でタッグを組み、膵頭部だけを切除する縮小手術も行っています。

膵機の機能を温存するメリットは食事ができるようになること

膵臓の機能を温存するとインスリンの正常な分泌機能を妨げないため、糖尿病になりにくくなります。また、消化機能障害も起こさないため、栄養不良も防ぐことができます。頻繁に下痢を繰り返すこともないので、食事がしっかりと摂れるようになります。これらは患者さんのQOL(生活の質)を保つために大切なことです。

膵臓縮小手術の種類、膵頭十二指腸切除術(PD)と膵体尾部切除術(DP)

一般には膵頭十二指腸切除術と膵体尾部切除術の2つを行っている施設が多い

膵臓の縮小手術では、多くの施設が腫瘍のできた場所に応じて、膵臓の右側(膵頭部)ならば膵頭十二指腸切除術、左側(膵体部または膵体尾部)ならば膵体尾部切除術を行っています。

・膵頭十二指腸切除術(PD)

膵頭十二指腸切除術
膵頭十二指腸切除術

膵頭十二指腸切除術は、腫瘍のある膵臓の頭部(膵臓の右側)と共に、接合している十二指腸と胆管、胆嚢を切除する手術です。切除後、膵臓や肝臓でつくられた膵液や、消化液が再び胃のなかを通るように再建しなくてはならず、高度な技術が必要となります。

・膵体尾部切除術(DP)

膵体尾部切除術
膵体尾部切除術

膵体尾部切除術は、膵体と腫瘍のある膵尾部(膵臓の左側)と共に、脾臓を切除する手術です。脾臓を膵臓と共に切除する理由は、2つの臓器は接合しているため、分けることが困難だからです。

ここまで、多くの施設で導入されている膵臓縮小手術の種類や手術を行うメリットについてお話ししてきました。記事2『膵機能温存手術の展望と最新研究-さらなる機能温存も可能に?』では引き続き、藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院が積極的に導入しているより侵襲性(患者さんへの身体的な負担)の低い手術、十二指腸温存膵頭切除術についてご解説します。

 

堀口 明彦

堀口 明彦先生

藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 消化器外科 主任教授

日本の消化器外科の第一人者。特に肝胆膵外科、を専門としており、多数の手術を手掛けている。研究業績も多数あり、欧文誌の編集委員も務めている。後進の育成にも定評があり、毎年多数の研修医、若手医師が集まる。

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