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膵臓がんのステージ分類とは?~ステージ分類ごとの生存率、治療方針の決め方~

膵臓がんのステージ分類とは?~ステージ分類ごとの生存率、治療方針の決め方~
藤井 努 先生

富山大学 学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科 教授

藤井 努 先生

目次
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膵臓すいぞうがんとは、胃の後ろにある膵臓という臓器に発生するがんのことです。膵臓がんは初期症状がほとんどなく、症状が現れる頃には進行してしまっているため、早期発見の難しいがんとして知られています。

がんはその進行度合いや広がり、リンパ節やほかの臓器への転移などの状態によって、ステージ(病期)と呼ばれる分類がされ、その後の治療方針の決定に役立てます。この記事では、膵臓がんのステージの定義やステージごとの治療方針・生存率などについて解説します。

膵臓がんのステージは、進行の程度によってI~IV期に分類されます(UICC分類では、ごく初期の膵臓がんを示す0期という分類があります)。またI~II期の比較的初期段階の膵臓がんは、がんの大きさやリンパ節への転移などの基準によってさらにIA、IB、IIA、IIBと細かく分類されます。

日本では、膵臓がんのステージ分類として日本膵臓学会が定めた分類と、国際的に用いられている“UICC分類”の2種類が使用されています。それぞれの分類は以下のとおりです。

膵臓がんのステージ分類は、主に血液検査や造影CT検査・超音波内視鏡検査などの画像検査の結果から判断されます。

造影CT検査ではがんの状態や広がり、ほかの臓器への転移の有無などが確認できます。また、超音波内視鏡検査は口から内視鏡(いわゆる胃カメラ)を入れ、胃や十二指腸から膵臓に超音波を当てて病変を詳しく見ることができます。さらに、細い針で膵臓の腫瘍細胞(しゅようさいぼう)を採取することができるため、その細胞を顕微鏡で見て検査する細胞診にも役立ちます。

膵臓がん全体の5年生存率*は、9.3~10.2%といわれています。ステージ別に見ると、I期では42.4~48.6%、II期では17.3~19.5%、III期では5.6~7.3%、IV期では1.2~1.7%となっており、ステージが進行するごとに生存率は低くなります。

また手術を行った場合でも再発をしてしまう可能性が高く、手術後の5年生存率は20~40%といわれています。

*国立がん研究センターがん対策情報センター,がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計,「2010-2011年5年生存率の主な結果」

膵臓がんの治療方法には、手術治療、化学放射線療法(化学療法と放射線療法を組み合わせた治療)、化学療法などがあり、これらのうちの1つが行われることもあれば、状況に応じて複数を組み合わせた治療が行われることもあります。

治療方針を定める際は、主に切除可能性分類という分類が重視されます。

切除可能性分類とは、手術ができるかどうかという観点でがんの状態を確認し、“切除可能”“切除可能境界”“切除不能”の3つに分ける分類方法です。

切除可能

切除可能と判断された場合には、がんの根治を目指して手術治療が検討されます。また、手術治療の補助療法として術前・術後に化学療法などの薬物療法が併用されることもあります。

切除不能

切除不能と判断された場合には、手術を行わず化学放射線療法や化学療法が検討されます。

切除可能境界

切除可能境界とは、がんが周囲の血管を巻き込んでいる場合など、手術をしてもがんが取りきれるかどうか判断が難しい状態を指します。この場合にはまず化学療法や化学放射線療法を行って、切除可能の状態に持っていけるかどうかを試します。治療の後、再評価を行い、切除可能となった場合には手術治療が行われます。治療後も切除は難しいと判断された場合には、化学放射線療法や化学療法による治療が検討されます。

膵臓がんは早期発見が難しく、診断されたときには手術ができない進行がんになっていることも少なくありません。仮に手術ができた場合にも、再発する可能性の高いがんとして知られています。また手術ができない場合でも、化学放射線療法や化学療法を行うことにより、がんと付き合いながら生活できる可能性もあります。

このような治療方針は、ステージ分類や切除可能性分類などが用いられ、患者の状態なども含めて総合的に検討し、治療を決めていくことになります。そのため、このような分類について医師だけではなく、患者自身も十分に理解することが大切です。そのうえで、治療に対する不安や疑問、あるいは今後の生活についての希望や悩みがあるときには、担当医に相談することを検討しましょう。

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  • 富山大学 学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科 教授

    藤井 努 先生

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    東京医科大学病院 消化器内科 主任教授

    いとい たかお
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