
前回の記事では、膵・胆道領域における外科手術のトップランナーとしてご活躍されている、東京歯科大学市川総合病院副院長の松井淳一先生の膵臓がんの手術において工夫されている点についてご説明いただきました。今回は膵頭十二指腸切除術の後に行われる消化管再建術のお話を中心にうかがいました。
膵頭十二指腸切除術の後に行われる消化管再建術にはさまざまな方法があります。中でもウィップル(Whipple)法とチャイルド(Child)法がよく知られていますが、実は日本人である名古屋大学の今永一(いまながはじめ)先生が始めた「今永法」という術式があります。
この方法の利点としては、胃・膵臓・胆管の順に小腸と吻合(ふんごう・手術でつなぎ合わせること)するので、ストレートになっているという点があります。このため、術後に内視鏡で膵管、そして胆管の状態を確認することが容易であるという大きなメリットがあります。私たちのデータでは、内視鏡で確認した膵管の開存率も90数%と非常に高いものでした。また、小腸に盲端(もうたん)といって、袋小路状態の行き止まりになって淀むところもありません。
他の再建法にもそれぞれにメリットやデメリットがありますが、今永法では食べたものの消化吸収の流れがより生理的であると考えます。放射性同位元素を使って胆汁と食べたものがどう流れているかを確認するシンチグラフィを行ない、混和(混ざり合うこと)が良好であることが確認されています。また、胆汁と膵液が混和して逆流が起こっていないことなどを内視鏡で確認することもできています。
一方でこの今永法の欠点としては、手術直後に胃の機能が回復するまでの期間が長くかかる患者さんがやや多いということがあります。この現象を胃排泄遅延といい、膵頭十二指腸切除術に特有の術後合併症です。特に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術では、せっかく残した胃の働きが回復するのに時間がかかることがわかっていますが、この原因・理由はこれまで良くわかっていません。この現象が発生すると、手術の後で食事がとれるようになるのが少し遅くなるということになります。チャイルド(Child)法やトラバーゾ(Traverso)法のように膵管と胆管のルートと食べ物の通り道を別に作れば、食事を開始できる時期はやや早くなります。手術後の入院期間を短縮するという意味ではメリットはあるのかも知れませんが、今永法でも3分の1から約半数の患者さんでは胃排泄遅延がなく、術後2週間程度で退院できる方もいらっしゃいます。
どの再建法も100%完璧なものはありませんし、一長一短があります。今永法は、術後早期の一時的な小さな不利はありますが、長期的に見て患者さんのために長所の多い再建法であります。何より、今永法は日本で考案されたオリジナルの再建法です。日本発の再建法を更に発展させるのが私たちの努めでもあり、その利点・長所を広く伝えていきたいと考えます。
ちなみに、膵臓がん手術の場合に胃の一部を切除する膵頭十二指腸切除術をしなければならないとしても、今永法による消化管再建が可能です。また、膵頭十二指腸切除術では術後縫合不全によって膵液が漏れる膵液瘻(すいえきろう)という合併症がありますが、そういった安全性に関わる点においても今永法では他の再建術に比べ遜色のない成績を残しています。
膵臓がんの進行の度合いによっては、膵臓を少ししか温存できない場合もあります。しかし、「少ししか残せないのであればなくてもいい」ということにはなりません。最初の記事「膵臓がんと膵嚢胞性腫瘍」でもご説明した通り、膵臓には外分泌と内分泌の2つの働きがあります。膵尾部には内分泌の重要な機能であるインスリンを分泌するβ細胞が多く集まっています。
膵頭部を大きく切除した場合に、残った膵臓が小さくなって外分泌の機能である膵液の消化酵素が不足したとしても、飲み薬でそれを補うことは比較的容易です。しかし、膵全摘術となって膵臓全部を摘出してしまったら、インスリンが全く出なくなりⅠ型糖尿病の患者さんと同様に一生涯インスリン注射を続けなければなりません。それではせっかく胃を温存しても、患者さんの生活の質が低下することは避けられません。だからこそ、膵臓はたとえ小さくてもできるだけ残し、また膵液の通り道もきちんと確保することが非常に重要なのです。
周辺で膵臓がんの実績がある医師
東京医科大学病院 消化器内科 主任教授
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医療法人社団 藤﨑病院 理事長 院長
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独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 一般・消化器外科 医長
特集コンテンツ
国立病院機構 東京医療センターー低侵襲な医療を患者さんに提供することで地域医療に貢献する
区西南部医療圏の医療を支える東京医療センターによる、前立腺がん・子宮体がん・胃がん.大腸がん・慢性中耳炎.真珠腫性中耳炎の治療をテーマにした特集です。
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JR東京総合病院 院長
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