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インタビュー

切除不能膵臓がんの薬物療法について

切除不能膵臓がんの薬物療法について
舩越 顕博 先生

医療法人 愛風会 さく病院 内科

舩越 顕博 先生

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この記事の最終更新は2016年01月24日です。

増加傾向にある膵臓がんは、日本国内では年間約3万人が発症し、ほぼ同数の患者さんが膵臓がんで死亡しています。5年生存率は膵臓がん全体で約10%、医学が進んだ現代においても難治がんのひとつです。膵臓がんで根治が目指せるのは手術のみですが、発見された時点では手術できない人の方が大半です。そうなった場合には延命を目的とした治療が行われます。切除不能膵臓がんにおける治療法について、福岡山王病院内科部長(当時)の舩越顕博先生にお話を伺いました。

膵臓がんは、医学が進歩した現代においても、未だ5年生存率が改善されていない難治がんのひとつです。その背景にあるのは、早期発見が難しいということがあげられます。

膵臓がんで根治を目指せるのは手術のみですが、発見された時点ではすでにがんが進行していることが多く、手術ができる割合は膵臓がん全体の20~30%程度にすぎません。

手術できない膵臓がんに対しては、延命を目的とした薬物療法や放射線療法が行われます。これまで長いこと膵臓がんに取り組んできましたが、その中で感じることは、切除不能膵臓がんの患者さんの生存期間が延びたということです。

昔は膵臓がんと診断されたら、3か月から半年で亡くなられる患者さんがほとんどでした。ところが、いまは同じような状況でもうまくいけば2年程度、短くても1年ほどの延命が可能となりました。これらの背景には、膵臓がんに効果のある薬物の登場があります。

膵臓がんは再発を繰り返すことが多いので、手術後の再発を予防するために術後補助療法を行います。術後に行うこれらの抗がん剤の進化によって膵臓がんの予後は確実に改善することができました。

切除可能な膵臓がんの場合、術後の補助化学療法としてS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシル単剤療法あるいはS-1に対する忍容性が低い場合にはゲムシタビン塩酸塩(GEM)が膵臓がんの診療ガイドライン(2016)では推奨されています。

一方、切除不能で局所進行がある場合、ガイドラインでは化学放射線療法あるいは1次化学療法(最初に投与する抗がん剤)として下記の4つが推奨されています。

①GEM単剤療法

②S-1単剤療法

③FOLFIRINOX(オキサリプラチン、ロイコボリン、イリノテカン〈CPT-11〉、5-FUの4剤併用レジメン)療法

④GEM+nab-PTX(ナブパクリタキセル)併用療法

例えば、FOLFIRINOX療法とGEM+nab-PTX療法に関していえば、このふたつの治療法を正確に比較した臨床試験はありません。FOLFIRINOX療法は点滴で48時間拘束されますので比較的大変な治療になりますが、一方のGEM+nab-PTX療法は2時間程度の点滴で終わります。

論文などでの生存率に関してはFOLFIRINOX療法の方が、多少成績がいいのですが、あまり差はありません。総合的にみると、GEM+nab-PTX療法の方が患者さんへの負担も少なく、効果も期待できます。

抗がん剤のレジメン(薬の用量や用法などの投薬計画)の選択は迷うところもあると思いますが、福岡山王病院では、GEM+nab-PTX療法をお勧めすることが多いです。抗がん剤はPD(病変が増悪すること)になるまで続けて行いますので、そのあたりは患者さんのご希望や医師の好みによっても変わってくるのかと思います。

では、化学放射線療法と化学療法はどちらがいいのかということですが、基本的には治療効果は同じなので、どちらを選んでもいいと思います。化学放射線治療を行える施設、つまりリニアックがあるかという前提が必要になりますが。

ただ、化学放射線治療を行う上で1つだけ注意しなければならないことは、肝臓など他の臓器にがんが転移していないということが原則となります。化学放射線療法は原発の膵臓がんにしか放射線をあてません。もし、画像などには見えない肝臓などへの転移があると、治療を行うことでかえって肝転移が広がることがあります。化学放射線療法を行う際には、確実に転移がないことを確認して行うことが必要です。

上記レジメンで耐性がついた場合には、2次化学療法が行われることになります。また、肝臓など他の臓器に遠隔転移した場合のレジメンは以下の通りです。

①FOLFIRINOX療法

②GEM+nab-PTX併用療法

③GEM単剤療法

④S-1単剤療法

有効な薬剤の登場で、膵臓がんの生存期間は確かに延びました。しかし、とはいっても1年とか2年であり、まだ5年生存にはほど遠いのが現状です。生存期間をさらに延ばすためには、やはり早期発見しかありません。

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