肝臓がんには、「原発性肝臓がん」と「続発性(転移性)肝臓がん」の2種類が存在し、種類によって原因が異なります。また、肝臓がんは患者さんの自覚症状がほとんど現れないといわれています。
今回は、獨協医科大学病院下科診療部長の窪田敬一先生に、肝臓がんの概要についてお話を伺いました。
肝臓がんには、「原発性肝臓がん」と「続発性(転移性)肝臓がん」の2種類があります。
原発性肝臓がんとは、肝臓にある細胞そのものから発生したがんです。たとえば、肝臓の細胞から発生したものは肝細胞がんといい、もっとも一般的な種類です。その他、肝臓の胆管の細胞から発生したものであれば胆管細胞がんといいます。
続発性(転移性)肝臓がんとは、大腸がんや膵臓がんなど他の部位に発生したがんが、肝臓に転移することにより発生した肝臓がんです。なかでも、大腸がんが肝臓へ転移することが多いといわれています。
肝臓がんのステージ(病期)*は、T因子のスコアとリンパ節転移、遠隔転移の有無によって判断されます。
日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版」(2015年)
肝臓がんのステージ(病期)を判断する場合、
の3つの要素(T因子)が重要になります。
上の図のように
のうち、何項目に当てはまるかによって、T1からT4までに振り分けます。すべて当てはまるとT1、2項目当てはまるとT2、1項目当てはまるとT3、すべて当てはまらない場合はT4となります。なお、数字が大きくなるほど、悪性度は高くなります。
上記で述べたT因子のスコアを基に、ステージ(病期)を判断します。ステージを決めるためには、T因子のスコアに加えリンパ節*転移と遠隔転移*の有無を調べます。リンパ節転移と遠隔転移どちらともないT1の場合は、ステージⅠとなります。そして、リンパ節転移があるとT1の場合でも、ステージⅣA、遠隔転移があるとステージⅣBとなり、悪性度が高くなります。
リンパ節…免疫器官の1つで、細菌やウイルスを排除する働きを持つ
遠隔転移…発病原因の臓器から、遠く離れた臓器に移動すること
原発性肝臓がんを発症する主な原因としては、以下のものが挙げられます。(より詳しい肝臓がんの原因については、記事2『肝細胞がんの原因はB型・C型肝炎ウイルスや生活習慣』をご参照ください)
B型肝炎やC型肝炎にかかっていることが原因で、肝臓がんを発症することがあります。B型肝炎は、主に血液や体液を介してB型肝炎ウイルスに感染することにより発症します。また、C型肝炎は主に血液を介してC型肝炎ウイルスに感染し発症します。そして、肝炎を起こして肝臓の細胞が破壊されると肝細胞が線維化する肝硬変へと変化し、肝臓がんを発症することがあります。
しかし、2018年現在は薬の開発などから肝炎ウイルスの駆除が進んでいるため、C型肝炎が原因の肝臓がんは減少傾向にあります。
肥満や糖尿病が原因の脂肪肝が肝硬変へと変わり、肝臓がんに進行することがわかっています。脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態のことです。糖尿病などの患者さんが増えるにつれて、脂肪肝が原因で肝臓がんを発症する患者さんは増加傾向にあります。
なお、肝臓がんは長期にわたる恒常的な過剰飲酒により発症しやすくなるがんです。そのため、少量であれば飲酒が原因で肝臓がんを発症する確率は少ないと思われます。
基本的に、肝臓がんは患者さんの自覚症状があまり現れない病気です。そのため、腫瘍があった場合でも症状を訴える患者さんは少数と思われます。現れる可能性のある症状としては、以下のものが挙げられます。
腫瘍が大きくなるとお腹の張りを感じることがあります。また、腫瘍が胃や十二指腸を圧迫することにより吐き気や、食べたものの消化が悪いと感じることもあります。
肝臓は血管が複雑に流れており、多くの血液を保有している臓器です。そのため、肝臓にある腫瘍が破裂した場合は、腹腔内に多量の血液が流れ込み腹痛やショック症状になることがあります。
黄疸とは、肝臓や血液の異常で皮膚や粘膜が黄色くなる症状です。肝臓がんが胆管に浸潤し十二指腸の出口付近まで伸びてきた場合、腫瘍で胆管のなかが詰まり黄疸が現れることがあります。
肝臓がんの検査としては、採血やエコー、CTやMRIなどの画像検査を実施します。また、肝臓がんの手術を受ける前には肝臓の機能を測定する検査を行います。
肝臓がんの検査では、採血とエコー(超音波検査)が基本です。エコーとは、体に超音波をあて、反射した超音波を画像化することで臓器を観察する検査です。肝臓やがんの大きさ、形などを調べることが可能です。また、血液検査の検査項目として腫瘍マーカー検査*を実施することもあります。
腫瘍マーカー検査…血液中などに現れる、そのがんに特有の物質を検出する検査
採血やエコーで肝臓がんの疑いがあった患者さんは、より詳しく肝臓を観察するためにCT検査やMRI検査を実施します。画像検査では、周囲への転移があるかなども確認します。
CT検査…エックス線を使って身体の断面を撮影する検査
MRI検査…磁気を使い、体の断面を写す検査
肝臓がんと診断され肝臓を切除する手術を実施することになった場合、手術の前に肝臓の機能を測るICG検査(インドシアニングリーン試験)を行います。そして、肝臓の機能レベルを測ることで、肝臓の切除範囲を決定します。
(ICG検査(インドシアニングリーン試験)について詳しくは、記事3『肝細胞がんの治療の種類と特徴について』をご参照ください)
肝臓がんの治療には、大きく以下の4つがあります。腫瘍の数や大きさ、肝機能を総合的に判断し、それぞれの患者さんに適切な治療を選択します。(より詳しい肝細胞がんの治療方法については、記事3『肝細胞がんの治療の種類と特徴について』をご参照ください)
肝臓がんの治療のなかで、中心となる方法は手術です。手術は腫瘍が肝臓にとどまっていて、3個以下の場合に推奨されます。メインの腫瘍と共に、周囲に飛び散っている小さな腫瘍も切除するため、もっとも病気を根本から治す治療法です。
また、自分の肝臓をすべて摘出しドナーからの肝臓を移植する、肝移植を行うこともあります。腫瘍の数や大きさが一定の基準内であれば、保険適応で肝移植を受けることが可能です。
穿刺局所療法とは、体の外から腫瘍に向けて針を刺し、熱を加え腫瘍を熱凝固するという治療法です。
穿刺局所療法は、腫瘍の数が3つ以内かつ大きさが3センチメートル以内の場合に推奨されます。ラジオ波焼灼療法(PEIT)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)、経皮的エタノール注入療法(PEIT)の3種類が存在します。2018年現在は、ラジオ波焼灼療法がもっとも効果的に腫瘍を焼灼することができるといわれており、肝細胞がんの穿刺局所療法のなかではラジオ波焼灼療法を選択することが推奨されています。
肝動脈塞栓療法とは、肝臓の腫瘍に栄養を届けている血管に塞柱物質を入れ、腫瘍に栄養が行き届かないようにする治療法です。腫瘍の大きさが3センチメートル以上で、2~3個、または大きさに関わらず4個以上腫瘍がある場合に推奨されます。
抗がん剤を使用した化学療法は、腫瘍が4個以上の場合に推奨されます。これよりも悪性度の高い患者さんは、緩和ケアの対象となります。
本庄記念病院 消化器外科
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