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膵臓がんは初期症状がほとんどない〜受診を検討すべき症状や年齢の目安とは?〜

膵臓がんは初期症状がほとんどない〜受診を検討すべき症状や年齢の目安とは?〜
花田 敬士 先生

JA広島厚生連尾道総合病院 診療部長・内視鏡センター長

花田 敬士 先生

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膵臓がんとは、胃の後ろにある膵臓という臓器に生じたがんです。進行すると痛みや食欲不振黄疸(おうだん)などが生じることがあります。初期には症状がないことが一般的であるため発見が遅れやすく、難治がんとして知られています。では、どのような場合に膵臓がんを疑うとよいでしょうか。

この記事では膵臓がんの主な症状や病院を受診する目安、検査方法などについてお伝えします。

膵臓がんは初期には症状がほとんどありません。しかし、進行すると痛みや食欲不振、腹部の膨満(ぼうまん)感、体重減少、下痢、黄疸(皮膚や目の白目の部分が黄色くなること)などが生じることがあります。

ただし、いずれの症状も膵臓がん特有の症状とはいえず、見落とされがちです。また、患者の20~30%は進行しても無症状と考えられています。

また膵臓がんにかかると新たに糖尿病を発症することや、糖尿病であった方の血糖コントロールがうまくいかなくなることがあります。これは、膵臓のはたらきの1つに血糖を下げる役割を持つ“インスリン”の分泌があり、膵臓がんにかかり膵臓のはたらきが悪くなると、インスリンが分泌されにくくなることで血糖値が上がると考えられています。    

膵臓がんは進行するとみぞおちや背部に痛みが生じます。膵臓は胃の後ろにあるため胃痛と勘違いされ、胃カメラ上部消化管内視鏡検査)が行われて“異常なし”と判断されることがあります。

また、背中に近い臓器ともいえるため、整形外科的な痛みと勘違いされることもあります。進行してがんが骨に転移すると、腰などに痛みが生じることもあります。

膵臓がんは症状が現れているときにはすでに進行している可能性があります。そのため、好発年齢である60歳以上の方の場合、“最近食欲がない”“下痢が多い”など、ささいなことでも気になる症状があれば受診を検討しましょう。

また、膵臓がんの危険因子を理解しておくことも重要です。近親者に膵臓がんの方がいる場合、肥満、大量飲酒、喫煙、過去に糖尿病慢性膵炎、膵のう胞などの既往がある場合は担当医に伝えるようにしましょう。

なお、黄疸が生じた場合や、みぞおちや背中などに痛みを感じた場合などはなるべく早く検査を受けることを検討しましょう。胃に痛みを感じるものの胃カメラで異常が見られなかった場合や糖尿病が急激に発症したり悪化したりした場合でも、膵臓がんを疑い検査が行われることがあります。

膵臓がんが疑われる場合、血液検査や画像検査などの検査が行われます。以下では、それぞれの検査方法について説明します。

血液検査では膵臓の機能を評価する目的のほか、腫瘍マーカーの有無を確認します。

膵臓の機能ではアミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1などの値を参考に確認します。また、腫瘍マーカーとは、がんがあると産生される特有の物質を指し、膵臓がんの場合には“CEA”、“CA19-9”、”DUPAN-2”などの腫瘍マーカーが高値になることがあります。

膵臓がんは膵臓の内部を走行している“膵管”から発生することが大半です。そのため初期のがんでは“(しゅ)(りゅう)”が形になる前に、“膵管の拡張”や“膵のう胞”が認められることが多いという特徴があります。

膵臓がんの検査として行われる画像検査には、体外式腹部超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査(EUS)などがあります。

エコ-検査

おなかの外から超音波を当て、内部の様子を画像にして観察する検査です。

患者への負担がなく簡便に行える検査である一方、膵臓はおなかの奥にある臓器のため、おなかの脂肪や消化管のガスなどの影響のため、膵臓全体の観察には限界があります。エコ-検査で“腫瘤”、“膵管の拡張”、“膵のう胞”などが見られた場合はCT検査、MRI検査、EUSなどを行うことが必要です。

CT検査

X線で体の内部の断面を観察する検査です。

造影剤を用いることで、血流や病変をより詳しく見ることができ、がんがあった場合、広がりや転移の有無を知ることができます。なお、CTに用いる造影剤はまれにアレルギー反応が発生する可能性があり、また腎臓のはたらきが低下している場合には注意が必要です。

MRI検査

強い“磁場”と“電波”を用いて体の内部の断面を観察する検査です。

MRIは造影剤を用いることなく“胆管膵管造影”を行うことが可能で、膵臓の内部を走行する膵管の所見を詳しく確認することが可能でX線被ばくの心配がありません。

EUS

先端に小型の超音波装置を装着した内視鏡を口から挿入し、胃や十二指腸から膵臓に超音波を当てて観察する検査です。

エコ-検査よりも細かく膵臓全体の様子を見ることができ、CT検査やMRI検査で確認できないステージ0~1など初期の膵臓がんを発見できる場合があります。

膵臓がんは初期症状がないことに加えて、現時点では指針としての検診が存在しないため、早期発見が難しいがんです。好発年齢である60歳以降の方の場合、“最近食欲がない”“下痢が多い”などささいなことでも、気になる症状があれば早めに受診を検討しましょう。

なお、エコ-検査は膵臓がんのスクリーニング(膵臓がんの発症を予測すること)に非常に役立つ検査です。また、エコ-検査で“膵管の拡張”、“膵のう胞”などを認めた場合には中核施設でCT、MRI、EUSなどを用いて“膵臓全体”を積極的に確認することが膵臓がんの早期発見につながるとされています。このような膵臓がんで行われる検査について自身も十分に理解することは、早期発見や治療のために非常に重要であるため、不安や疑問があれば担当医に質問や相談をするとよいでしょう。

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  • JA広島厚生連尾道総合病院 診療部長・内視鏡センター長

    花田 敬士 先生

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    東京医科大学病院 消化器内科 主任教授

    いとい たかお
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