基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)
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エラスターゼ1は、主に膵臓で作られるタンパク分解酵素の一つで、膵炎や膵がんなどの膵臓の病気を発症すると高値を示すようになります。
また、病状の回復と共に正常値に戻る傾向があることから、膵炎や膵がんなど、膵臓の病気の診断補助や経過観察の指標として用いられています。
膵臓は胃の後ろにある長さ15cmほどの臓器で、食べ物を消化・分解するさまざまな酵素を作り、分泌しています。
膵臓の酵素にはエラスターゼ1の他にも、
などがあります。
いずれも血液検査で血液中に含まれる量を調べることができ、膵臓の病気によって異常値を示す場合があるため、膵臓の病気を診断するうえで実用的な検査項目です。
しかし、膵臓の病気以外で異常値を示すものや早期発見に向かないなど、欠点があるものもあります。そのため多くの場合、このような検査項目を同時に測定し、それぞれの数値をもとに病気の診断を行います。
膵炎を発症すると、みぞおちから背中にかけての痛みや吐き気・嘔吐、発熱などの症状が現われることが多くあります。膵がんでは自覚症状がないことが多いですが、膵炎に似た症状や黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなること)などが現れる場合もあります。
こういった症状がみられ、膵炎や膵がんが疑われる場合に、ほかの膵酵素などとともにエラスターゼ1が測定されることがあります。また、エラスターゼ1は人間ドックのオプション検査項目に含まれている場合もあります。
ただし、エラスターゼ1やほかの膵酵素などの血液検査の結果だけで、病名を特定することはできません。病名を特定するためには、画像診断をはじめとする精密検査が必要です。
エラスターゼ1自体は食事による影響がないため、特別に注意しなければならないことはありません。しかし、同時に測定することの多いリパーゼは食事の影響で数値が変動することがあります。早朝空腹時の検査が望ましい場合もあるため、受診まで時間がある場合は前もって病院へ相談しておくとよいでしょう。
エラスターゼ1の測定は、血液検査によって行います。採血は、主に腕の血管から採血します。袖周りのきつい服装の場合は採血の妨げになってしまうため、検査当日は袖周りにゆとりのある服装、または半袖を着ていくとよいでしょう。冬であれば、脱ぎやすい服装を着ていくとスムーズに検査ができるでしょう。
スムーズに採血ができれば、さほど時間はかかりません。痛みも健康診断などで行う採血時の痛みと同程度だと考えられます。
エラスターゼ1の基準値は、300ng/dL以下が一般的です。
ただし、検査方法や検査機関によって基準値が異なる場合もあるため、結果については医師からの説明をよく聞くようにしましょう。
エラスターゼ1が基準値を超えた場合、膵炎や膵がんなどの膵臓の病気が疑われます。
膵がんの可能性があると判断された場合には、血液検査でCA19-9、Span-1、Dupan-2、SLXなどの腫瘍マーカーが測定されることがあります。
さらにより詳しく調べるために、腹部超音波検査や造影CT、造影MRIなどの画像診断、生検が実施されることもあります。また慢性膵炎が疑われる場合には、膵外分泌能検査や膵内分泌能検査などが行われることもあります。
また、エラスターゼなどの膵酵素は、主に膵炎の治療中の経過観察を目的として測定されることもある検査項目です。この場合は、異常値を示していても前回よりも基準値に近づいていれば経過良好と判断され、特別な対応はせず、現行の治療や経過観察が続けられることも考えられます。
エラスターゼ1などの膵酵素は、膵臓の病気の診断に有用な検査項目です。しかし、それぞれの膵酵素の数値を調べただけで病名を特定することはできません。病名がはっきりしなければ適切な治療をすることはできません。そのため、精密検査の実施をすすめられた際は指示に従って受けるようにしましょう。
精密検査を経て病名が確定したあと、何らかの治療が検討されることが考えられます。また、悪化を防ぐために禁煙や禁酒など、日常生活上の取り組みが必要になる場合もあります。
治療方法や注意点などについては医師からの説明をよく聞き、よく相談したうえで治療や経過観察を行い、自己判断で中断することのないようにしましょう。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。