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膵臓がんに関する最新トピックス~高い精度でがんを発見できる腫瘍マーカー検査とは?~

膵臓がんに関する最新トピックス~高い精度でがんを発見できる腫瘍マーカー検査とは?~
山上 裕機 先生

和歌山県立医科大学 外科学第2講座 教授

山上 裕機 先生

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膵臓がんとは、胃の後ろに位置する膵臓と呼ばれる臓器に生じるがんです。60歳代以降の人に生じることが多く、患者の男女比は男性にやや多いといわれています。膵臓がんは初期症状がなく自覚症状が出る頃には進行していることが一般的で、難治のがんといわれます。しかし、近年はさまざまな検査・治療方法などが研究・実施され、これらの開発によって早期発見や治療成績の向上が期待できるとされています。

今回は膵臓がんの検査・治療などに関する最新トピックスについて、和歌山県立医科大学 外科学第2講座 教授 山上 裕機(やまうえ ひろき)先生にお話を伺いました。

*本記事は2020年6月23日時点の医師個人の知見に基づくものです。

膵臓がんが難治性のがんである理由の1つに、症状が現れにくく、発見された頃には進行してしまっていることが挙げられます。

膵臓がんは初期症状がほとんどありません。進行すると、がんのできる部位によって症状が現れることがあります。膵臓の頭部(丸まった先端部分)にがんが生じる場合、比較的早い段階で目や皮膚が黄色くなる“黄疸(おうだん)”という症状が見られることがあるため、ほかの膵臓がんと比較して発見が早いことがあります。一方、膵臓の体部(中心部分)や尾部(すぼまった先端部分)にがんができると、黄疸の症状が出ることはほとんどなく自覚できる症状は痛みのみであることが一般的です。

また、膵臓は胃に近く、背中側にある臓器のため、たとえ痛みが生じても“胃の痛み”や“背中の痛み”と勘違いしてしまう方もいます。このような理由から、膵臓に原因があると思い浮かべることが難しく、膵臓がんはかなり進行するまで見過ごされてしまいがちです。

黄疸が生じたときはもちろんですが、胃や背中に原因不明の痛みを感じたときにも膵臓がんの可能性を疑い、病院を受診することが望ましいです。

たとえば継続的に胃が痛み、かかりつけ医を受診しても原因が分からないときや、背中の痛みから整形外科を受診したけれど原因がよく分からず改善が見られないときなどには、一度膵臓がんの検査を受けることを検討しましょう。

さらに、中高年になってから糖尿病にかかった方や糖尿病の患者さんで急に血糖コントロールがうまくいかなくなった方なども、膵臓がんにかかっている可能性があります。膵臓の役割の1つに血糖値を調節するホルモンの産生があります。膵臓がんにかかると、この機能がうまくはたらかなくなることにより、糖尿病にかかったり悪化したりすることがあります。そのため、糖尿病の患者さんは膵臓がんの可能性を考え、必要に応じて検査を受けることが大切です。

膵臓がんは早期発見・治療が難しいがんで、残念ながら生存率が全てのがんの中でもっとも低いといわれています。

発見されたときには進行していることが多いので、手術治療のできる患者さんは一握りで、それ以外の進行がんの患者さんに対しては化学放射線療法や化学療法による治療が行われます。また、ステージによって異なりますが、手術ができた患者さんであっても5年生存率は20~40%といわれています。

新しい腫瘍マーカーの研究

現状膵臓がんの検査では血液検査と画像検査が行われますが、近年はこれに加えて “リキッド・バイオプシー(体液を用いた低侵襲検査)”という観点から尿、唾液、血液などを用いて、より高い精度でがんを発見できる腫瘍マーカー検査の研究が進められています。

たとえば一部医療機関では、血液検査によって血中に流れている膵臓がん細胞を遺伝子解析し、進行がんの患者さんを対象に治療前・治療後の血中のがん細胞の量を比較して治療効果の測定に役立てています。また、一部大学と共同で尿検査によって行う新たな腫瘍マーカー検査の研究も実施しています。このように、さまざまな機関で検査の研究が進められており今後も膵臓がんの早期発見・治療に役立つとされる新しい検査が出てくると思います。

超音波内視鏡検査の追加

画像検査の一環として超音波内視鏡検査を行うことも膵臓がんの早期発見に役立つと考えます。超音波内視鏡検査とは、超音波装置を伴った内視鏡を使って行う検査のことです。通常の内視鏡と比較すると組織の内部の観察などができるため、病巣の深さや表面には見えない腫瘍(しゅよう)などを見つけやすいという特徴があります。

実際に一部医療機関では一部地域において、膵臓がんを疑う症状が見られる方、超音波検査や造影CT検査など一般的な膵臓がんの画像検査で異常が発見された方などを対象に超音波内視鏡検査を行っているところもあります。この検査は従来の超音波検査や造影CT検査では見つけることのできなかった、いわゆるステージ0といわれるような浸潤のないごく早期の膵臓がんを発見できることもあり、救命できる確率を高めるとされています。

近年の膵臓がんの治療に関する最新トピックとしては、術前化学療法を用いた手術治療や新しい術式を用いた手術治療が挙げられます。

治療方法の変化

膵臓がん治療は抗がん剤の発展によって大きく進歩しつつあり、近年は抗がん剤による術前化学療法と手術治療を併用した“コンバージョンサージェリー”という治療方法が用いられることがあります。膵臓がんにおけるコンバージョンサージェリーとは、がんが主要動脈に浸潤しており従来であれば手術の適応がない患者さんに対し、手術前に抗がん剤治療を行ってがんを小さくしてから手術治療を行うことをいいます。この治療方法が確立されたことにより、手術ができる患者さんが増えるほか、手術後の予後がよりよくなることが期待できます。

術式の変化

手術そのものの術式についても進歩が見られます。以前の膵臓がん手術は手術中にがんのある部分に触れ、牽引(けんいん)したうえで摘出していました。しかし、最近の手術では手術中にがんを触らず、膵臓に通ずる血管を遮断したうえでがんを摘出する治療が行われ始めています。術式が変化した理由は、手術中にがんに触れることにより、がんが揉み出され周囲の血管などに流入してしまうことが懸念されたためです。このように、がんに触れず周囲の血管を遮断して行う手術は“ノンタッチアイソレーション法”と呼ばれ、この術式を行うことで治療中にがん細胞が血管に流出することを防ぎ、転移や再発を予防することが期待されます。現在、日本全国のおよそ20施設で前述の腫瘍マーカー検査(リキッド・バイオプシー)によって治療効果の測定を行っています(2020年6月時点)。

これまでお話ししたように、早期では自覚症状が現れにくいといった理由から、早期発見が難しいといわれるがんです。しかし、近年の検査や治療に対するさまざまな研究や取り組み、薬物治療の大きな進歩などから、より根治につながる可能性が高くなってきているといえるでしょう。そのため、患者さんには膵臓がんの治療実績への理解と共に、いずれは膵臓がんでも治療によって予後の改善が期待できるということを知っていただきたいです。

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