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膵臓がん患者さん一人ひとりによりふさわしい治療を追求する、NTT東日本関東病院の取り組み

膵臓がん患者さん一人ひとりによりふさわしい治療を追求する、NTT東日本関東病院の取り組み
藤田 祐司 先生

NTT東日本関東病院 肝胆膵内科 医長

藤田 祐司 先生

目次
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膵臓がんの治療法には、主に手術、化学療法(抗がん薬治療)、放射線治療があります。がんを切除できる状態かどうか見極め、手術のみ、化学療法のみ、手術と化学療法、放射線治療を組み合わせた治療などから選択します。NTT東日本関東病院では、肝胆膵内科と外科、緩和ケア科などが緊密につながり、多くの医療スタッフが携わるチーム医療で患者さん一人ひとりにとってよりよい治療を目指しています。今回は、同院 肝胆膵内科 医長の藤田 祐司(ふじた ゆうじ)先生に、治療選択の基準や主な治療法、同院の膵臓がん診療の特徴についてお話を伺いました。

膵臓がんの治療には、主に手術、化学療法(抗がん薬治療)、放射線治療とそれらを組み合わせる方法があります。中でも、手術は根治を目指すにあたり特に重要な治療です。全身状態などを考慮して重粒子線治療(放射線治療の一種)を選択するケースもありますが、ごくまれです。そのため、治療方針を決定する際には病期(ステージ)に基づいた判断だけでなく、“切除可能”、“切除可能境界*”、“切除不能”のうちどの状態にあるか見極めることが非常に重要です。

*切除可能境界では化学療法や放射線治療を行って効果を見定め、改めて切除可能かどうかを判断

『膵癌診療ガイドライン2022年版』では、通常切除可能とされるのはステージ0、1とステージ2の一部とされています。切除可能な場合は、1か月半ほど化学療法を行った後に手術でがんを切除します。切除可能境界はステージ2・3の一部です。当院では3か月ほど化学療法を行った後に状態を再評価し、手術できると判断できればがんを切除します。切除可能とならなければ化学療法を継続します。

切除不能とされるのは、ステージ3の一部とステージ4の場合です。病気の進み方や全身状態に応じて、放射線治療や複数の抗がん薬からより適切なものを選択します。なお、当初切除不能と診断された方に化学療法を行った結果、切除可能な状態になるケースもあります。このようにして行う手術を“コンバージョン手術”といいます。

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写真:PIXTA

同じ膵臓がんでもがんの性質や進行のスピードはそれぞれ異なり、患者さんが100人いれば100通りの膵臓がんがあるといえます。一人ひとりの遺伝子を調べ、その方によりふさわしい治療法を見出すことを目指すために行われるのが、“がん遺伝子パネル検査”です。少しでも治療選択肢を増やせればと思い、当院では基本的に全ての膵臓がん患者さんにおいてがん遺伝子パネル検査を検討しており、必要に応じてすぐに行える体制をつくっています。

遺伝子パネル検査では、切除不能の方の場合は確定診断のために行うEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)*で採取したがんの組織を、切除後に再発した方の場合は手術で得られた組織をそれぞれ専用の装置で解析し、多くの遺伝子を同時に調べています。がん遺伝子パネル検査では多くの組織が必要となるため、切除不能の方にはEUS-FNAを行う時点で遺伝子パネル検査を見据え、太い針を使ったり穿刺回数を増やしたりして十分な量の組織を採取するようにしています。

がん遺伝子パネル検査は、標準治療がない、あるいは標準治療が終了したなど一定の条件を満たせば保険診療として受けられます**。3割負担の方では20万円程度の費用がかかりますが、高額療養費制度の対象となればご自身の上限額を超える額を支払う必要はありません(上限額は所得などに応じて異なります)。

この検査の結果、ご自身により合った治療に結びつく可能性は10%程度といわれており、治療につながる情報が得られないこともあります。なお、新たな治療選択肢となり得るのは、臓器を限定せずに使える薬など保険診療の既存薬から臨床試験中の薬までさまざまです。

* EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法):体内に内視鏡を挿入し、腫瘍に針を刺して組織を採取する方法。

**他院でがん診療を受けている方で、NTT東日本関東病院でのがん遺伝子パネル検査を希望される場合には初回の相談費用(自費診療)として33,000円(税込)/1時間の相談費用がかかる(がんゲノム相談、病理検体確認などを含む)。

膵臓がんの診断・治療においては、他の診療科との連携、多職種の医療スタッフとの連携が欠かせません。

当科では、日常的に外科の医師とコンタクトを取りながら治療を進めています。患者さんにとっては手術でがんを根治するという選択ができるのが一番です。手術できる可能性がある方については、外科の医師が手術しやすい状態にできるよう力を尽くしています。また、手術が難しいと判断され、化学療法を選択した場合でも、コンバージョン手術に辿りつける可能性はどのステージでもあり得ます。そのため、化学療法を継続しつつもコンバージョン手術のチャンスを見過ごさないようにしなければなりません。当科と外科で毎週カンファレンスを開き、よりふさわしい治療を選択できるよう、患者さん一人ひとりの検査画像を見ながら意見を交換しています。

診断・治療においては放射線科、病理診断科、腫瘍内科との協力も欠かせません。さらに緩和ケア科とも連携し、患者さんが抱えている痛みなどのつらい症状のコントロールを図っています。

医療スタッフの中でもより多くの場面で患者さんを支えているのは看護師でしょう。近年は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といって、先々の病状の変化などに備え、将来の治療やケアについて患者さんやご家族、医療チームが話し合い、ご本人の希望に沿った方向性を共有しようというプロセスが重視されています。ACPは膵臓がんの治療においては特に重要で、患者さんへの細やかな対応、他科への的確な橋渡しなど、看護師は大きな役割を果たしています。

膵臓がんの診断・治療にはほかにも多くの医療スタッフが関わっています。診療放射線技師はスムーズな検査、診断を支え、薬剤師は化学療法を受ける患者さんに丁寧に説明して寄り添い、管理栄養士は治療中の食欲低下や味覚の変化に関する相談に乗り、患者さんに合わせて食事を調節しています。こうした多職種のスタッフと各科の医師が一丸となり、病院全体で診断・治療・ケアにあたっています。

MN

当院では、膵臓がんの診断・治療について、がんになる前段階からの大きな枠組みとして捉えています。すなわち、“拾い上げ”、“診断”、“手術”、“化学療法”、“緩和”の5段階です。当科は外科や緩和ケア科などと連携しながらこの全ての段階に一貫して関わっています。それが一つひとつの段階における精度向上やスピーディーな判断、個々の患者さんへのよりふさわしい治療選択につながっているといえるでしょう。

膵臓がんと診断されても、手術でがんを切除できる段階なら治せる可能性は十分あります。また、化学療法はネガティブに捉えられがちですが、より元気に長く生きるために大切な治療です。少しでも前向きに治療に取り組んでいただけるよう、これからも力を尽くしていきたいと考えています。

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