記事1『膵臓がん治療の進歩-術前化学療法が患者さんにもたらすもの』では、主に膵臓がんの術前化学療法による治療の効果や今後の展望をお話いただきました。今後、その効果がデータとともに立証されれば、膵臓がんの治療に大きく貢献することが期待されています。東北大学病院 肝・胆・膵外科長である海野 倫明先生は、膵臓がんの術前化学療法の効果を明らかにするためにランダム化比較試験などに取り組んできました。
同病院の海野 倫明先生は、「膵臓がんの治療は進化しているので、決して諦めないでほしい」とおっしゃいます。そのためには、信頼できる医療機関や医師とともに治療にあたることが重要になるといいます。今回は、海野 倫明先生に、膵臓がんにおける治療の課題や進歩をお話いただきました。
膵臓がんは、近年患者数が増えているがんの1つです。しかしその一方で、原因は未だはっきりとわかっていません。喫煙と飲酒は膵臓がんのリスクを高めると言われていますが、それに加えて、近年では食生活の欧米化が要因の1つという意見もあります。しかしこれらの要因も定かではありません。
膵臓がんに遺伝子の要因が影響するかどうかについても、現在研究が進められています。遺伝以外の要因が大半であると言われていますが、はっきりとしたことは未だわかっていません。今後、研究により明確になることが期待されています。
私は近年、膵臓がんが増加している要因の1つに、画像診断の精度の向上があると考えています。精度が向上した結果、昔は診断がつかなかったようなものも膵臓がんと診断されるようになったため、患者さんが増えたのではないでしょうか。これはあくまで予測ですが、それほど近年の画像診断の精度は向上しています。
膵臓がんは死亡率が非常に高いがんです。それは、初期症状が出にくく早期発見が難しいことに起因しています。膵臓がんは、がんの有無を検査する腹腔超音波検査を実施しても発見しづらく、スクリーニング検査(がんの可能性を調べる検査)でCT検査をすることも難しいために発見がさらに遅れてしまいます。
その中でも、膵臓がんの兆候の1つとして糖尿病の悪化があります。突然糖尿病になってしまったり、すでに糖尿病の患者さんでも病状が悪化する傾向にあります。それは膵臓がんの患者さんの特徴であり、注意すべき兆候の1つでしょう。
膵臓がんの早期発見のためには、自費にはなりますが、人間ドックの中で腫瘍マーカーによるがんの可能性を調べることは有効だと思います。その結果、がんが発見される方もいます。さらに、膵臓がんの専門的な施設であれば、EUSという胃カメラから超音波により調べる検査も膵臓がんの発見には有効でしょう。また、B型肝炎やC型肝炎のようにハイリスク群に設定されれば、検査による早期発見など、よりフォローできる体制が整備されると思います。
私は、膵臓がんでは、セカンドオピニオンが有効であると伝えています。膵臓がんの死亡率は高く、治療には大きな負担がかかります。患者さんは、治療法を十分に検討し、納得することが重要です。そのため1人の医師の意見だけではなく、複数の医師の意見を聞き判断することが有効でしょう。それは患者さんの権利だと私は思っています。
私たち東北大学病院にもセカンドオピニオンを求めていらっしゃる方がいます。その結果、患者さんは随分安心しますし、根拠の薄い治療法に引っかかってしまう危険性も減ります。膵臓がんの患者さんの中には、藁をも掴む気持ちで、根拠も効果も薄い治療法に投資してしまう方がいらっしゃいます。切実な気持ちは理解できますが、ご本人やご家族にとってそれはとても危険なことです。そのような状況を防ぐためにも専門的な施設で適切な意見を聞くことが重要でしょう。
膵臓がんは、ある程度専門的な施設で診断や治療を受けることが重要です。膵臓がんの手術は合併症率が非常に高い、難しい手術です。どのような手術にもある程度リスクはあるのですが、施設の選択は慎重になるべきです。一般社団法人日本肝胆膵外科学会では、高難度手術を年間50例以上行っている施設(施設Aに分類)と30例以上行っている施設(施設Bに分類)を発表しています。
これを1つの指標として施設を選択することも有効ではないでしょうか。年に数例しか高難度手術をしないという施設で治療を受けることは、大きなリスクが伴います。症例が多い施設は、ある程度実績が集約化されているため、リスクも低くなるでしょう。
私たち東北大学病院では、膵臓がんの術前治療を積極的に実施しています。記事1『膵臓がん治療の進歩-術前化学療法が患者さんにもたらすもの』でお話したように、術前化学療法の効果を検証するランダム化比較試験は終わりましたが、臨床試験という形で術前治療に取り組んでいます。私たちの病院は、一般社団法人日本肝胆膵外科学会により高難度手術を年間50例以上行っている施設Aに分類されています。このように、膵臓がんの手術の実績もあり、安心して治療を受けていただけるのではないでしょうか。もちろん、セカンドオピニオンにも対応しています。
膵臓がんは予後が悪いイメージがあり、診断された患者さんは大きなショックを受ける場合があります。確かに膵臓がんは予後が悪い傾向にありますが、治療法は日進月歩で進化しています。そのため、私は、膵臓がんと診断されても簡単に諦めないでほしいと思っています。
膵臓がんの治療は山登りのようなもので、登っている途中は大変な思いをすることもあるかもしれません。しかし、良い道案内がいればどんなに高い山でも諦めずに登ることができます。ここで言う良い道案内とは私たち医師のことです。記事1『膵臓がん治療の進歩-術前化学療法が患者さんにもたらすもの』でお話したように、膵臓がんは有効な抗がん剤が登場したこともあり、今後生存率がさらに高まることが期待されています。膵臓がんは経過中にがん性疼痛、腹水、黄疸などもあるので、その管理も含め信頼できる医師とともに、適切な治療を受けてほしいと願っています。
東北大学 大学院医学系研究科 消化器外科学分野教授、東北大学病院 肝・胆・膵外科長
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手術後の合併症
私の父親なのですが、今月の頭に すい臓がんの手術をしました。 術後、合併症が出なければと早く退院できますよ。と言われていた矢先に液もれを、おこし合併症が出たのでと自宅に電話が来たそうです。 ご飯を食べると、液がもれるようで、現在、点滴と水、お茶しか口に出来ずに、検査づくしの毎日を過ごしている様子。 少し食べたりしている時もあるようですが、液が出たりでなかったりで、いつ治るのかと父も不安のようです。 病室にも入れませんので、本人の様子はメールでしかわからず、母もずーっとモヤモヤ状態。 術後、2週間ぐらい経ちましたが、いつになったらご飯が食べられるようになって、退院の目処がたつのでしょうか? よろしくお願い致します。
膵臓癌の再発による肝不全に伴う腹水への対応について
妻は、昨年の5月初旬にステージ1の膵臓癌が見つかり、6月に標準的外科療法として手術をしました。その後、9月末に退院し、自宅療養をしていましたが、昨年12月に腹水が溜まりはじめ、三月初旬にCT検査をし、膵臓癌が昨年12月頃に再発したことが分かりました。一度は、三月初旬に腹水を三リットル抜いて、それから蛋白質等だけ体内に戻しました。今も腹水が溜まり続けていますが、どのタイミングで再度、腹水を抜いたら良いでしょうか。または、腹水は抜かない方がいいのでしょうか。宜しくご教授下さい。
膵臓癌手術後の癌再発について
初めて相談します。私の妻は、昨年6月に膵臓癌の切除手術をしました。ステージ1でしたが、すぐには回復せず、血栓がてきたりし、血のめぐりが悪く、色々処置し9月末に退院しました。その後、12月頃から腹水が溜まり、肝不全と門脈が詰まっていたようで今月入院しCT検査の結果、膵臓癌が再発していました。担当医は、3ヶ月から1ヶ月の余命ではと言っていました。本当にそのよう余命なのでしょうか?また、セカンドオピニオンを考えた方がよろしいでしょうか?ご教授ください。宜しくお願い致します。
すい臓がんの肝臓への転移
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