
「胆のうがん」は、胃がんや肺がんほどよく知られている種類のがんではありませんが、日本を含むアジアやチリで発生数が多いことが分かっています。とりわけ日本は症例数が多いこともあり、胆のうがんの研究が非常に進んでいます。
山王病院一般・消化器外科の渡邊五朗先生は胆膵領域で独自の手術法を開発された外科医であり、超音波検査もご専門とされています。今回はまず胆のうがんの概要についてお聞きしました。
肝臓では食事に含まれる脂肪の分解を助ける胆汁が作られます。胆汁を肝臓から十二指腸へ運ぶ管を胆管といいますが、胆管の途中には枝分かれするような形で胆のうと呼ばれるふくろ状の臓器があり、ちょうど肝臓の下に位置しています。胆のうは胆汁を一時的に貯めておき、脂っこい食事を摂った時など必要に応じて胆汁を出します。この胆のうにできる悪性の腫瘍を「胆のうがん」といいます。
胆石との関係については以前から長い間研究されていますが、胆石ができたことがない人でも胆のうがんになるケースは多数あり、特に密接な関係があるとはいえません。
地域的にはアジアと南米のチリで胆のうがんを発症する人が多いという統計上のデータがあります。食生活や人種によるものではないかと考えられていますが、この点についてはまだ明らかになっていません。
医学的にみて明らかに関係があるといえる要因として「先天性膵胆管合流異常」があります。通常であれば膵臓からの消化液(膵液)が通る膵管と胆汁が通る胆管は十二指腸の壁の中で合流するのですが、生まれつき奇形があるため十二指腸の外で合流する形になっていると、胆汁と膵液がお互いに逆流するということが起こります。また、見た目に明らかな異常がなくても、こうした逆流が一部みられる場合もあります。
不思議なことに、白色人種にはそもそもこのような膵管と胆管の合流がほとんどなく、その点では人種的な違いがあるといえます。このことが胆のうがんのリスクに関わっているのではないかと推測されています。
胆のうがんはその形状から大きくふたつのタイプに分かれます。ひとつは胆のうの壁の内側に飛び出しているポリープがまれに大きくなってがん化するものです。これは通常、ある程度時間をかけてゆっくりと大きくなります。
もうひとつは平坦浸潤型と呼ばれるもので、胆のうの壁の一部が分厚くなり、壁の内側へと潜りこむように広がるという特徴があります。こちらは進行が早く、胆のうの壁の外側にまで達し、肝臓や胆管などにも短期間のうちに広がってしまいます。
胆のうはふくろ状の臓器であるため、中に腫瘍ができてもよほど大きくなるまで症状がなく、早期に発見することが難しいという特徴があります。ただし、発生する場所によっては状況が変わってきます。胆のうの出口、すなわち胆管に繋がる部分(頸部)に発生した場合は、胆汁の流れが滞って胆のう炎(胆石症)に似た症状を引き起こします。腹部の痛みや黄疸の症状がそのサインとなります。
胆のうがんの治療では、手術できる状態のものはまず手術するということが大原則です。切除手術を行なった場合の5年生存率は、早期のうちに手術できた場合は95%以上、つまりほとんどの方が完治したといえる状態になっています。
一方、SSがんと呼ばれる、ある程度進行してしまった状態での手術では5年生存率が50%以下になります。
また、進行の度合いによっては手術できない場合もあるため、実際に手術で切除できる割合は60〜70%となります。早期に手術すればほぼ治るとはいえ、進行がんも含めた全体でみると予後の悪さ―残念ながら完治せず亡くなってしまう割合の高さでは膵がんの次に難しいがんなのです。このことからも、胆のうがんの治療では早期発見が大切であることがわかります。
国際医療福祉大学 教授、東京大学 医学部肝胆膵・移植外科 非常勤講師
国際医療福祉大学 教授、東京大学 医学部肝胆膵・移植外科 非常勤講師
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本超音波医学会 超音波専門医・超音波指導医日本肝臓学会 肝臓専門医日本消化器病学会 消化器病専門医日本胆道学会 認定指導医日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能専門医
東京大学医学部、虎の門病院副院長を経て国際医療福祉大学教授を務める。消化器外科、胆膵を専門とし、超音波検査を主とした画像診断も専門とする。高度な技術が必要とされる胆膵領域において、へその傷だけで手術をする方法を独自に開発。診療、手術術式ともに、患者さんにやさしいことをモットーとする。
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