
肝臓の主なはたらきは、栄養の貯蔵・有害物質の解毒・胆汁の分泌と合成の3つです。肝臓が、肝炎ウイルスやアルコールの過剰摂取などによって炎症を起こすと、肝臓がんに進行することがあります。肝臓がんは、かなり進行するまで自覚症状をほとんど生じないことが特徴です。自分では気付くことが難しい肝臓がんを早期に発見するには、どうすればよいのでしょうか。本記事では、肝臓がんの原因と、早期発見のために意識すべき点について解説します。
日本における肝臓がん(肝細胞がん*)の主な発症要因は、B型肝炎ウイルス、またはC型肝炎ウイルスの持続感染による慢性肝疾患です。患者さんの体内に肝炎ウイルスが長期的にとどまって炎症を起こすことで、がんが発生すると考えられています。
これまでは、C型肝炎ウイルス感染に伴い肝臓がんを発症した患者さんの割合が6~7割、B型肝炎ウイルス感染に伴い発症した患者さんの割合が1割程度とされてきました。近年の抗ウイルス療法の進歩により、C型肝炎ウイルス感染に伴う肝臓がんの患者数は減少傾向にあり、今後も減っていくことが予想されています(2024年5月現在)。
ウイルス感染以外には、過度なアルコール摂取から肝臓がんを発症するケースもあります。また、近年では、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)**から肝臓がんを発症するケースも増加してきています。
*肝細胞がん:肝細胞にがんが発生したもの。原発性肝臓がんの約9割以上が肝細胞がんとされる。
**非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD):アルコールを原因としない脂肪肝および肝臓病の総称。
近年、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)*による肝細胞がんの割合が増大していることが問題になっています(2024年5月現在)。NASHは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が進行して生じる肝炎で、NAFLD患者さんの1~2割の方に生じるといわれています。
また、NAFLDを発症する方には、高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満といった生活習慣病を合併している方が多いです。
脂肪性肝疾患とは、肝細胞に主として中性脂肪が沈着し肝障害をきたす病気の総称です。中でも肥満や生活習慣病に合併することの多いNAFLDが注目されていますが、その中の1~2割がNASHであるといわれています。治療を行わないと5~10年で5~20%の方が肝硬変に進行するとされていることから、健診で脂肪肝を指摘されたら、病院を受診するようにしましょう。
また、血液検査および腹部エコー検査などでNASHが疑われ、肝生検により確定診断に至るケースも珍しくありません。すでに高血圧や糖尿病の治療で他科に定期通院している患者さんにおいても、NASHが疑われた場合は改めて検査を受けるようにしましょう。
*非アルコール性脂肪性肝炎(NASH):アルコールを原因としない脂肪肝から、肝炎をきたした状態。
アルコールの多飲は、肝臓がんの原因の1つです。日本人の肝臓がん患者さんのうち、10%程度がアルコールを原因とする肝臓がん(アルコール性肝臓がん)を発症しているとされています。ここでは、適切な飲酒量について解説します。
1日当たりのアルコール摂取量の上限は、男性の場合は6ドリンク=純アルコール60g(日本酒3合に相当、女性の場合はそれよりも少なめ)です*。60gを超えて飲酒する方は「多量飲酒者」と呼ばれ、健康や仕事などへの悪影響が心配されます。
また、「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度であるとされています。下の図では、純アルコール10gを1ドリンクとし、純アルコール20gに対するそれぞれのお酒の量の目安を示しています。
過去の研究では、男性で1日当たり69g以上のアルコールを摂取していると、肝臓がんリスクが1.7倍に上昇するとされています。また、女性の場合は、1日当たり23g以上のアルコール摂取で、肝臓がんリスクが3.6倍に上昇するという報告があります。
アルコール性肝臓がんの発症リスクは、個人のアルコール代謝能力や積算量(それまで飲んできたお酒の累積量)など、さまざまな観点からとらえる必要があるため、「どのくらいお酒を飲むと肝臓がんになるのか」を一概に述べることは難しいです。
ただし、一般的には、飲酒習慣が長期間にわたると、肝臓がんを発症する可能性は高いといわれています。また、若い方が短期間にお酒を大量に飲むと、飲酒習慣が長期間にわたる方と同様に、肝臓がんを発症する可能性があるといえます。
*厚生労働省「健康日本21(アルコール)」基本方針より
肝臓がんを早期発見するためには、病院で定期的に検査を受けていただき、肝臓の変化を見逃さないようにすることが重要といえます。とくに肝臓がんの発症リスクが高い方、具体的には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染による慢性肝疾患をお持ちの方、高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満といった生活習慣病をお持ちの方、過度なアルコール摂取をしている方などは、定期的に検査を受けるようにしましょう。
肝臓がんのリスクが高い方に対して、医療機関にて定期検査とフォローアップを行うことを、「肝細胞がんサーベイランス」といいます。サーベイランスの対象者は、B型/C型ウイルス性肝炎などにかかっている方、およびB型/C型肝硬変をきたしている方です。サーベイランスは、3ヵ月~6ヵ月に1回程度の間隔で、エコー検査および腫瘍マーカー測定を行います。超高危険群の方には、造影CT/MRIも併せて実施します。
健診で肝機能の異常を指摘されたことのある方や、ウイルス性肝炎と診断されている方は、日々の体調の変化に注意を払うことが大切です。肝臓がんを有していても全身倦怠感(だるさ)、食欲低下などの具体的な症状がほとんど出ないケースも珍しくありません。何となく体に異常を感じたり、肝機能の数値が悪化したりした場合、すぐに病院を受診するようにしましょう。
周辺で肝がんの実績がある医師
医療法人社団 藤﨑病院 理事長 院長
内科、血液内科、外科、脳神経外科、消化器外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、肝胆膵外科、肛門外科、放射線診断科
東京都江東区南砂1丁目25-11
都営新宿線「西大島」都営バス 門前仲町行き(都07)、葛西橋または葛西車庫行き(草28) 境川下車 徒歩3分 バス、JR中央・総武線「亀戸」都営バス 葛西駅行き(亀29)、門前仲町行き(都07)など 境川下車 徒歩3分 バス
武蔵野赤十字病院 名誉院長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器科、呼吸器外科、消化器科、腎臓内科、循環器科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、内分泌科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、緩和ケア内科、腫瘍内科、感染症内科、代謝内科、膠原病内科、頭頸部外科、総合診療科、病理診断科
東京都武蔵野市境南町1丁目26-1
JR中央線(快速)「武蔵境」南口 小田急バス、ムーバス(境南東循環):武蔵野赤十字病院下車 徒歩10分
東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科
内科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、脳神経内科、老年内科、頭頸部外科、総合診療科、病理診断科
東京都八王子市館町1163
JR中央本線(東京~塩尻)「高尾」南口 京王バス 医療センター経由館ケ丘団地行き 医療センター下車 京王電鉄高尾線も利用可能 バス7分、JR横浜線「八王子みなみ野」無料シャトルバス運行 バス
JR東京総合病院 院長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、腫瘍内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科、血管外科、総合診療科
東京都渋谷区代々木2丁目1-3
都営大江戸線「新宿」A1出口 京王新線・都営新宿線も利用可 徒歩1分、JR山手線「新宿」南改札・甲州街道改札・新南改札 徒歩5分、JR山手線「代々木」北口 徒歩5分、小田急線「新宿」南口改札 徒歩5分
江東病院 元院長、日本赤十字社医療センター 名誉院長、東京大学 名誉教授
内科、膠原病リウマチ内科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、腎臓内科、小児科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、脳神経内科、美容皮膚科、総合診療科
東京都江東区大島6丁目8-5
都営新宿線「大島」A2出口 徒歩1分、JR総武本線「亀戸」 車5分
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今朝起床時より突然強いめまいが起き思うよりに動けません
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左耳 奥の痛みがときどきキンと痛みます 熱はなく聴力も普通で違和感もありません。もし異常ならどういう疾患が考えられますか?
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