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自分では気付きにくい肝臓がんを早期発見するには? 発症リスクを意識しよう

自分では気付きにくい肝臓がんを早期発見するには? 発症リスクを意識しよう
倉井 修 先生

大阪市立十三市民病院 副院長

倉井 修 先生

塚本 忠司 先生

大阪市立十三市民病院 外科・消化器外科

塚本 忠司 先生

山口 誓子 先生

大阪市立十三市民病院 消化器内科副部長 兼 栄養部部長

山口 誓子 先生

目次
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肝臓の主なはたらきは、栄養の貯蔵・有害物質の解毒・胆汁の分泌と合成の3つです。肝臓が、肝炎ウイルスやアルコールの過剰摂取などによって炎症を起こすと、肝臓がんに進行することがあります。肝臓がんは、かなり進行するまで自覚症状をほとんど生じないことが特徴です。自分では気付くことが難しい肝臓がんを早期に発見するには、どうすればよいのでしょうか。今回は、大阪市立十三市民病院 副院長 倉井 修先生、消化器外科担当部長 塚本 忠司先生、消化器内科副部長 山口 誓子先生に、肝臓がんの原因と、早期発見のために意識すべき点について解説いただきました。

倉井先生:

日本における肝臓がん(肝細胞がん*)の主な発症要因は、B型肝炎ウイルス、またはC型肝炎ウイルスの持続感染による慢性肝疾患です。患者さんの体内に肝炎ウイルスが長期的にとどまって炎症を起こすことで、がんが発生すると考えられています。

これまでは、C型肝炎ウイルス感染に伴い肝臓がんを発症した患者さんの割合が6~7割、B型肝炎ウイルス感染に伴い発症した患者さんの割合が1割程度とされてきました。近年の抗ウイルス療法の進歩により、C型肝炎ウイルス感染に伴う肝臓がんの患者数は減少傾向にあり、今後も減っていくことが予想されています。

ウイルス感染以外には、過度なアルコール摂取から肝臓がんを発症するケースもあります。また、近年では、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)**から肝臓がんを発症するケースも増加してきています。

*肝細胞がん:肝細胞にがんが発生したもの。原発性肝臓がんの約9割以上が肝細胞がんとされる。

**非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD):アルコールを原因としない脂肪肝および肝臓病の総称。

倉井先生:

近年、非アルコール性脂肪性肝炎NASH*による肝細胞がんの割合が増大していることが問題になっています。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が進行して生じる肝炎で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者さんの1~2割の方に生じるといわれています。

また、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を発症する方には、高血圧脂質異常症糖尿病メタボリックシンドローム肥満といった生活習慣病を合併している方が多いです。

現在の日本では、肝炎ウイルス以外の原因で生じる慢性肝疾患による肝臓がんの割合が約20%を占めており、その多くは、NAFLDが進行したNASHである可能性が指摘されています。

山口先生:

脂肪性肝疾患とは、肝細胞(かんさいぼう)に主として中性脂肪が沈着し肝障害をきたす病気の総称です。中でも肥満や生活習慣病に合併することの多いNAFLDが注目されていますが、その中の1~2割がNASHであり、治療を行わないと5~10年で5~20%の方が肝硬変に進行するとされていることから、健診で脂肪肝を指摘され、精査目的で当科を受診する方が増えています。

また、受診された患者さんの中には、血液検査および腹部エコー検査などでNASHが疑われ、肝生検により確定診断に至るケースも珍しくありません。

このような状況から、すでに高血圧や糖尿病の治療で他科に定期通院しておられる患者さんにおいても、NASHが疑われた場合は院内紹介していただき、診断後は、専門外来にて、厳重にフォローアップをしています。

*非アルコール性脂肪性肝炎(NASH):アルコールを原因としない脂肪肝から、肝炎をきたした状態。

倉井先生:

アルコール多飲は肝臓がんの原因のひとつです。日本人の肝臓がん患者さんのうち、10%程度がアルコールによって肝臓がんを発症しているとされています。特に当院は歓楽街の近くに位置する病院で、その土地柄から、アルコール性肝疾患の患者さんを診る機会が多いです。当院で私が2004~2008年にかけて行った調査によると、当院における肝臓がんの主な発症要因は、C型肝炎ウイルス感染が約70%を占めており、アルコール性肝炎は全体の8%程度でした。ところが、2009~2015年にかけてもう一度同じ調査を行ったところ、C型肝炎ウイルス感染は10%程度減少し、アルコール性肝炎が15%に増加していたのです。このことから、当院周辺地域ではアルコールによる肝臓がんが増加傾向にあると考えています。

倉井先生:

ここでは、適切な飲酒量について、説明します。

1日当たりのアルコール摂取量の上限は、男性の場合は6ドリンク=純アルコール60g(日本酒3合に相当、女性の場合はそれよりも少なめ)です*。60gを超えて飲酒する方は「多量飲酒者」と呼ばれ、健康や仕事などへの悪影響が心配されます。

また、「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度であるとされています。下の図では、純アルコール10gを1ドリンクとし、純アルコール20gに対するそれぞれのお酒の量の目安を示しています。

2ドリンク=アルコール20gを含有するお酒の量の目安(参考:厚生労働省)

過去の研究では、男性で1日当たり69g以上のアルコールを摂取していると、肝臓がんリスクが1.7倍に上昇するとされています。また、女性の場合は、1日当たり23g以上のアルコール摂取で、肝臓がんリスクが3.6倍に上昇するという報告があります。

塚本先生:

アルコール性肝臓がんの発症リスクは、個人のアルコール代謝能力や積算量(それまで飲んできたお酒の累積量)など、さまざまな観点からとらえる必要があるため、「どのくらいお酒を飲むと肝臓がんになるのか」を一概に述べることは難しいです。

ただし、一般的には、飲酒習慣が長期間にわたると、肝臓がんを発症する可能性は高いといわれています。また、若い方が短期間にお酒を大量に飲むと、飲酒習慣が長期間にわたる方と同様に、肝臓がんを発症する可能性があるといえます。

*厚生労働省「健康日本21(アルコール)」基本方針より

倉井先生:

肝臓がんを早期発見するためには、病院で定期的に検査を受けていただき、肝臓の変化を見逃さないようにすることが重要だと考えます。とくに肝臓がんの発症リスクが高い方、具体的には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染による慢性肝疾患をお持ちの方、高血圧脂質異常症糖尿病メタボリックシンドローム肥満といった生活習慣病をお持ちの方、過度なアルコール摂取をしている方などは、定期的に検査を受けるようにしてください。

肝臓がんのリスクが高い方に対して、医療機関にて定期検査とフォローアップを行うことを、「肝細胞がんサーベイランス」といいます。サーベイランスの対象者は、B型/C型ウイルス性肝炎などの高危険群に該当する方、およびB型/C型肝硬変をきたしている超高危険群に該当する方です。サーベイランスは、3ヵ月~6ヵ月に1回程度の間隔で、エコー検査および腫瘍マーカー測定を行います。超高危険群の方には、造影CT/MRIも併せて実施します。

山口先生:

検診で肝機能の異常を指摘されたことのある方や、ウイルス性肝炎と診断されている方は、日々の体調の変化に注意を払うことが大切です。肝臓がんを有しておられても全身倦怠感(だるさ)、食欲低下などの具体的な症状がほとんど出ないケースも珍しくありません。何となく体に異常を感じたり、肝機能の数値が悪化したりした場合、すぐに病院を受診していただきたいと考えます。

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