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大腸がんのステージ分類――手術対象はステージⅢまで?

大腸がんのステージ分類――手術対象はステージⅢまで?
西口 幸雄 先生

大阪市立総合医療センター 病院長(大阪市立十三市民病院 元院長)

西口 幸雄 先生

井上 透 先生

大阪市立総合医療センター 消化器外科 部長(大阪市立十三市民病院 元外科部長)

井上 透 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年08月08日です。

日本では罹患率の高い大腸がん。大腸がんは、がんの深さとリンパ節転移、遠隔転移の有無によって、ステージ0~Ⅳに分類されます。各ステージや患者さんの状態を考慮し、大腸がんの治療法は決定されます。今回は、大腸がんのステージ分類について大阪市立十三市民病院 院長である西口幸雄(にしぐちゆきお)先生と、同病院の外科・消化器外科部長である井上 透(いのうえとおる)先生にお話をお伺いしました。

大腸がんのステージは0~Ⅳに分類され、数字が大きくなるほど、がんが進行していることを意味します。

5年生存率はデータによって多少差がありますが、ステージⅠまでは95%以上、ステージⅡは88%以上、ステージⅢは76%以上です。ステージⅣの場合は、10%台となり、予後は優れないといえます。

手術前の診察で大体のステージは予想できるものの、正確なステージは手術後にがんの細胞、組織を顕微鏡で調べることで分かります。大阪市立十三市民病院では、手術後1~2週間ほどで結果が分かります。なお、ステージⅣの場合は、どこに転移しているのか検査で判断できるようになっています。

大腸がんのステージは、『大腸癌取扱い規約第9版』で定められており、以下の3つの要素で決まります。

  1. 壁深達度(Tで表される)
  2. リンパ節転移(Nで表される)
  3. 遠隔転移(Mで表される)

壁深達度(がんの深さ:T)

がんの深達度

壁深達度(がんの深さ)は、以下のようにTで表されます。

Tis:癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない

T1a:癌が粘膜下層(SM)までにとどまり、浸潤距離が1000μm未満である

T1b:癌が粘膜下層(SM)までにとどまり、浸潤距離が1000μm以上であるが、固有筋層(MP)に及んでいない

T2:癌が固有筋層まで浸潤し、これを越えない

T3 :癌が固有筋層を越えて浸潤している

    漿膜を有する部位では癌が漿膜下層にとどまる

      漿膜を有しない部位では癌が外膜までにとどまる

T4a:癌が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って腹腔に露出しているもの

T4b:癌が直接他臓器に浸潤している

<大腸癌取扱い規約 第9版.大腸癌研究会 編.金原出版.2018.より引用>

リンパ節転移(N)

リンパ節転移は、以下のようにNで表されます。

N0:領域リンパ節転移を認めない

N1:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が1~3個

    N1a:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が1個

  N1b:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が2~3個

N2:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が4個以上

  N2a:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が4~6個

    N2b:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が7個以上

N3:主リンパ節に転移を認める。下部直腸癌では、主リンパ筋あるいは側方リンパ節に転移を認める

<大腸癌取扱い規約 第9版.大腸癌研究会 編.金原出版.2018.より引用>

遠隔転移(M)

遠隔転移は、以下のようにMで表されます。

M0:遠隔転移を認めない

M1:遠隔転移を認める

    M1a:1臓器に遠隔転移を認める

    M1b:2臓器以上

    M1c:腹膜転移を認める

<大腸癌取扱い規約 第9版.大腸癌研究会 編.金原出版.2018.より引用>

ステージが上がるにつれて、血便、腹痛、お腹が張る、嘔吐するなどの症状が現れます。

一般的に、ステージが進むほど症状は重くなると考えられますが、そうではない場合もあります。たとえば、ステージⅡの段階であっても、嘔吐や腹痛が現れる場合もあります。

ステージ0の場合、内視鏡治療でがんを切除します。

ステージⅠのうち、がんの浸潤が軽い場合は内視鏡治療、それ以外のステージⅠ~Ⅲは、外科治療によってがんを切除します。大腸がんの外科治療では、開腹手術や腹腔鏡手術でがんの切除とリンパ節郭清(かくせい)*を行います。

なお、再発の可能性が高いと判断した場合には、術後に補助化学療法を行うこともあります。

リンパ節郭清:再発を防ぐために、がんの周辺にあるリンパ節を切除すること

ステージⅣの場合は、主に化学療法や放射線療法を行いますが、患者さんの状態によっては手術を行うこともあります。

手術や化学療法、放射線療法などができないほどに患者さんの全身状態がよくない場合は、症状を和らげる対症療法を行います。

西口先生

西口幸雄先生:

大腸がんは、早期のうちに発見して治療することができれば基本的に治すことができます。ステージⅠの一部までが早期がんといわれますが、早期では無症状であることが多いため、症状から大腸がんを発見することは難しいと考えられます。

そこで大切になるものが定期的な検診の受診です。私自身、検診で便潜血検査(べんせんけつけんさ)*が陽性になり、大腸がんだと分かりました。早期であったため、手術によって治すことができたのです。

大腸がんは、誰でもなる可能性のある病気です。その認識を持ち、40歳を過ぎたら毎年大腸がん検診を受けましょう。

便潜血検査:採取した便に血液が混ざっているかを調べる検査。混ざっている場合に陽性となる

井上先生

井上 透先生:

高齢化の進行とともに、大腸がんの患者さんは増加傾向にあります。それに伴い、近年では、手術の方法や抗がん剤など、大腸がんの治療法は昔と比べて進歩しました。しかし、未だに、大腸がんを治すためには、手術によるがんの切除が有効なのです。

西口先生がおっしゃる通り、検診によって可能な限り早期で発見できれば、手術によってがんを切除できる可能性が高くなります。検診によって早期発見に努めていただきたいと思います。

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