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肝移植とは? 生体肝移植の適応について解説

肝移植とは? 生体肝移植の適応について解説
國土 典宏 先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長、東京大学 名誉教授

國土 典宏 先生

目次
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“体の工場”と呼ばれ、さまざまなはたらきを担う肝臓。肝臓の機能が低下したときの治療には、肝移植という選択肢があります。肝移植とは、機能が低下した肝臓を取り出し、健康な肝臓を移植する治療です。肝移植には、脳死と診断されたドナー(臓器提供者)から肝臓の提供を受ける脳死肝移植と、生きているドナーから肝臓の提供を受ける生体肝移植があります。このうち、日本では生体肝移植の数が多いという現状があります(2020年7月時点)。生体肝移植とは、どのような患者さんに適応されるのでしょうか。

今回は、長年肝移植に携わっていらっしゃる国立国際医療研究センター 理事長の國土(こくど) 典宏(のりひろ)先生に、肝移植の概要や、生体肝移植の適応についてお話をお伺いしました。

肝移植とは、さまざまな原因により機能が低下した肝臓を取り出し、健康な肝臓を移植する治療を指します。

私たちは肝臓を全て摘出されると生きていくことができません。“体の工場”と呼ばれる肝臓は、人間になくてはならない臓器の1つです。具体的には必要な物質の合成、薬や不要な物質の解毒、栄養の貯蔵など、さまざまなはたらきを担っています。そのため、肝臓を全摘したり、人工肝臓で補ったりする治療は難しいと考えられている現状では、肝臓が機能不全となったときには、肝移植が唯一の救命法となります(2020年7月時点)。

肝移植には、主に脳死肝移植と生体肝移植があります。脳死肝移植とは、脳死と診断されたドナーから肝臓の提供を受け、肝臓の全部あるいは一部を移植する治療です。一方、生体肝移植とは、生きているドナーから肝臓の一部を移植する治療です。

脳死肝移植

生体肝移植

日本では、2017年末までに444件の脳死肝移植、8,795件の生体肝移植の実績があります。近年では、年間60~80件程の脳死移植、年間400件程の生体肝移植が行われています(2020年7月時点)。

世界初となる肝移植は、1963年にアメリカで行われました。日本では、1989年に島根医科大学(現・島根大学医学部)で日本初となる生体肝移植が、1999年に信州大学で日本初の脳死肝移植が行われました。その後、2004年には生体肝移植の保険適用が拡大され、2006年には脳死肝移植が保険適用となりました。

2010年に改正された臓器移植法では、脳死となった本人の意思が不明な場合であっても家族の承諾があれば臓器を提供することができるようになりました。また、脳死となった方が15歳未満であっても臓器提供が可能になりました*。さらに、親族へ優先提供する意思表示が可能になりました。

この改正をきっかけに、日本における脳死肝移植は2010年頃から増加傾向にあります。2009年には7件だった脳死肝移植は2010年より徐々に増加し、2017年には69件の脳死肝移植が行われました。このように脳死肝移植が増加しているものの、お話ししたように生体肝移植の件数のほうが多い日本では、生体肝移植中心という現状があります(2020年7月時点)。

*2010年の改正臓器移植法の施行前は、脳死後の臓器提供は本人の意思表示(書面)に加えて家族の承諾が必要であった。この意思表示は15歳以上を有効としており15歳未満の脳死後の臓器提供はできなかった。

日本では生体肝移植中心という現状を踏まえ、ここからはより詳しく生体肝移植について解説していきます。

生体肝移植を受けるためには、肝臓の機能が大幅に低下した末期肝不全の状態であることが1つの条件になります。さらに、適応基準では対象となる病気が定められており、肝臓がんB型肝炎C型肝炎劇症肝炎などが対象となります。たとえば、肝臓がんの患者さんに対する生体肝移植は日本国内で年間100件程行われています(2020年7月時点)。また、小児では、先天性胆道拡張症の患者さんを対象に生体肝移植が行われることが多いです(2020年7月時点)。

肝臓の一部をなくしてもドナーは問題なく生きていけるの?

生体肝移植では、ドナーの肝臓の一部を切除し、患者さんに移植します。生体肝移植のドナーは、移植手術の後も社会生活を送っていく方たちです。また、現状では、生体肝移植のドナーは基本的に親族と定められています(2020年7月)*

社会生活
写真:Pixta

そのため“移植によって肝臓の一部がなくなってもドナーは問題なく生きていけるのか”と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。肝臓には、再生能力が強いという特徴があり、ドナーに残った肝臓も時間の経過とともに再生し最終的には提供前とほぼ同じくらいの容積に戻ります。たとえば、ドナーに35%の肝臓を残し、残りの65%を患者さんに移植します。すると、約1か月後には、元の肝臓の90%程度の大きさまで戻ります。容積の再生に伴い、肝臓の機能も回復していきます。このため、ドナーは徐々に移植前の生活に戻ることが可能となるのです。

ただし、ドナーにも肝部分切除術による合併症などが起こる可能性はあります。定期的な受診など、移植手術後の体調の管理が大切といえます。

*日本移植学会では、生体臓器移植のドナーは6親等以内の血族、3親等以内の姻族(配偶者・配偶者の3親等以内)であることを倫理指針としている。

肝臓がんの患者さんに対する肝移植は、基本的に生体肝移植です。それは、脳死肝移植では、移植の希望から実施までに1~2年以上の待機期間が発生するケースがあるからです。その間に病気が進行してしまうことを考慮すると、生体肝移植を選ばざるを得ないという背景があります。

肝臓がんに対する肝移植では、再発の可能性の低い患者さんに対して肝移植を行うことが重要であると考えられています。それは、移植後にがんが再発した場合、すでにがんが全身に及んでいるなど重篤な状態になりやすいからです。このような状態を可能な限り避けるため、たとえば、脳死肝移植では以下の2つのルールが定められています。

ミラノ基準

世界的な適応基準である“ミラノ基準”では、肝臓以外の場所に病変が及んでいないこと、血管に病変が侵襲(しんしゅう)していないこと、単発の腫瘍(しゅよう)の場合は腫瘍径が5cm以下であること、複数の腫瘍が生じている場合は腫瘍の数が3個以内かつ腫瘍の最大径が3cm以下であることが定められています。

5-5-500基準内

“5-5-500基準内”というルールでは、がんの遠隔転移や血管への侵襲がなく、腫瘍径が5cm以内かつ腫瘍の数が5個以内であること、AFP(α-フェトプロテイン)*500ng/ml以下であることを定めたものです。上述のミラノ基準よりも少し広い条件であることが分かると思います。

2019年より脳死肝移植では、これらどちらかの基準を満たしていることが適応の条件となりました。生体肝移植でも2020年4月より5-5-500基準を満たせば保険適用となりました。

*AFP:肝臓がんを生じていると上昇する腫瘍マーカーの1つ。

生体肝移植の適応決定のために、最初に患者さんを診るのは内科医です。患者さんの全身および肝臓の状態を確認しながら、生体肝移植を適応すべきか、適応の時期はいつがよいかなどを検討したうえで、実際に移植手術を行う外科医に相談するという流れになることが多いでしょう。内科医と外科医が連携しながら移植に適した時期を決定していきます。

生体肝移植においては、早すぎることもなく遅すぎることもない適切な時期を見極めることが大切だと考えています。たとえば、病気が進行し状態が悪化している方に生体肝移植を行う場合には、移植後のリハビリテーションに時間を要する可能性が高くなるため注意が必要です。

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