概要
胆道閉鎖症とは、肝臓と⼗⼆指腸をつなぐ胆管という管が先天的(⽣まれつき)に、または生後まもなくふさがってしまい、肝臓から腸へ胆汁を出せない難治性の病気です。
新⽣児期に好発し、日本では発症頻度は出⽣およそ7000⼈に対して1人程度とされています。男児よりも⼥児に多い原因不明の病気で、2015年7⽉に、それまでの⼩児慢性特定疾患に加えて難病に指定されました。
できる限り早期(生後80日以内が望ましい)に手術を行わないと、治すことが困難な肝硬変へと進⾏してしまいます。⽣後1か⽉には新⽣児健診が⾏われるので、このタイミングで病気を発⾒することが重要です。⻩疸(皮膚や白目が黄色くなる)や⽩⾊便などから病気が疑われます。
⺟⼦⼿帳の“便⾊カード”で便の色を確認
健診を待たずに、親御さんでも病気を疑ってもらえるように、⺟⼦⼿帳には“便⾊カード”と呼ばれるものが添付されています。これは⾚ちゃんの便の⾊をお⺟さんに観察してもらうためのツールで、1番から7番までに⾊分けされた便の⾊が掲載されています。
便⾊カードと⾚ちゃんの便の⾊を⽐較して、1-3番の便の色を認めた場合や、急に便の色が1-3番に近づいてきた場合には早めに⼩児外科または⼩児科を受診していただく必要があります。
原因
肝臓は体にとって重要な役割を担っています。消化酵素である胆汁を作ることもその1つです。胆汁の主成分で黄色い色をしたビリルビンは、⾚⾎球中のヘモグロビンが脾臓と肝臓で分解されることで作られます。
胆道閉鎖症の場合、胆管が塞がっているため、肝臓で作られた胆汁が分泌されずに肝臓にたまってしまう胆汁うっ滞状態となり、その結果として黄疸が現れます。
また、胆汁が体の外に排出されないため、肝臓の組織は次第に壊され肝硬変へと進⾏していきます。なお、胆道閉鎖を引き起こす原因として確定されたものはありません。
症状
産まれてから14⽇目以降も続く⻩疸や淡⻩⾊の便、濃い⻩⾊尿など特徴的な症状があります。⻩疸については、新⽣児はもともと⽣理的⻩疸というものがあり、⻩疸があっても正常ということがあります。
しかし、⽣理的⻩疸は通常は⽣後2週間以内までに治まっていきます。それ以後にも⻩疸が続く場合には、胆道閉鎖症を含めた病気が隠れている可能性があります。
その⼀⽅、⺟乳性⻩疸というものもあり、⺟乳を飲む⼦どもは⽣後2 週間以降でも⻩疸が持続することがあります。⺟乳性⻩疸は決して病的なものではなく、胆道閉鎖症により引き起こされる⻩疸とは後述する血液検査で区別することができます。
胆道閉鎖症により引き起こされる病的な⻩疸の場合は、脳内出⾎を起こす危険性がありますし、気が付かずに時間が経ってしまうと肝硬変になってしまうことがあるため注意が必要です。
胆道閉鎖症による⻩疸は、胆汁が腸管に排泄されないために起こります。胆汁が腸管に排泄されないと、脂溶性ビタミンが吸収できなくなります。脂溶性ビタミンのなかでもビタミンKは、⾎液凝固(⾎液を固まらせる)に関係するため、吸収できない状態が続くと出血しやすくなります。これによって、脳内出⾎を起こすリスクが⾼くなります。
また胆道閉鎖症では、正常な便の⾊の元になっているビリルビンと呼ばれる物質が便中に排泄できなくなっています。そのため、便の⾊が白色~黄⽩⾊と、通常よりも薄い⾊になります。また、便中に排泄されなくなったビリルビンの⼀部は尿中に排泄されるようになるため、尿の⾊が濃い⻩⾊になることもあります。
検査・診断
⾎液検査や腹部超⾳波検査、尿検査などが⾏われます。
⾎液検査
⻩疸の元になっているビリルビンの値が上昇するのが特徴です。ビリルビンには直接ビリルビンと間接ビリルビンの2種類があり、胆道閉鎖症ではこのうち直接ビリルビンが上昇します。
腹部超⾳波
胆汁を一時的にためておくための臓器、胆嚢を観察します。健康な状態であれば胆嚢はきれいに写りますが、一般的に胆道閉鎖症では胆嚢が確認されません。
そのほか、MR 胆管膵管撮影(MRCP)、腹部CT検査、十二指腸液採取、胆道シンチグラフィーと呼ばれる検査なども併⽤し、胆管の発達具合や胆汁の排泄具合を観察します。
治療
⽣後早期(できる限り生後80⽇以内まで)に⼿術を行うことが、その後の肝機能を保つためにもとても重要になります。⼿術は、肝⾨部空腸吻合術(葛⻄⼿術)と呼ばれます。
胆道閉鎖症の患者には正常な胆管がないので、⼿術によって肝臓に腸を張り付け、そこから胆汁が流れるように治療します。
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