概要
胆管に細菌感染が起こったものを、急性胆管炎といいます。胆管とは、肝臓でつくられた胆汁の通り道で、肝臓から十二指腸までの太さ0.5~1.0㎝、長さ10~15㎝の管をさします。
原因
急性胆管炎の多くは、何らかの要因で胆管が閉塞し胆汁の流れが滞り、胆管内部の圧力が高まることで起こります。また、胆汁に細菌が感染することも原因の1つです。
胆管が閉塞する原因として、次のものが挙げられます。
- 胆管にできた結石
- 何らかの良性病変により胆管が狭くなる
- 胆管の手術後、吻合部(手術で縫い合わせた部分)が狭くなる
- 悪性腫瘍により胆管が狭くなる
以前までは胆管の結石(総胆管結石)がもっとも多い原因でした。しかし近年では、悪性腫瘍によるものや、硬化性胆管炎*、胆管の内視鏡検査や処置など良性病変などを原因とする症例が増えています。急性胆管炎の原因のうち、悪性腫瘍が占める割合は約10~30%と報告されています。
硬化性胆管炎:肝内の胆管や肝外の胆管に多発して炎症による狭窄(きょうさく)(狭くなること)を起こし胆汁のうっ滞を起こす病気です。
症状
胆管炎の最も典型的な症状は、発熱、黄疸(皮膚や白目部分が黄色くなる症状)、右上腹部の痛みです。 発熱や右上腹部の痛みは、急性胆管炎の患者さんの80%以上にみられます。また、黄疸は60~70%程度と報告されています。 なお、より重い急性胆管炎のケースでは、これらの症状に加えて、ショックや意識障害が起こることもあります。
検査・診断
血液検査
全身の炎症を反映するCRPや白血球数といった値の上昇を調べます。また、胆汁のうっ滞を反映するAST、ALT、ALP、血清ビリルビンといった、肝胆道系酵素と呼ばれる値の上昇を調べます。
腹部超音波検査(腹部エコー検査)
腹部超音波検査とは、お腹の表面から超音波装置をあてて行う検査です。肉体的な負担が少なく簡単に行えるため、急性胆管炎を疑った場合は最初に行う画像検査です。閉塞や狭窄によって胆管が拡張した様子や、閉塞の原因となっている結石などの病変を確認できますが、患者さんの体型や胆管の位置などによっては観察しにくいこともあります。
腹部CT検査(造影CT検査)
腹部CT検査では、胆管の拡張した様子や閉塞の原因となる結石や腫瘍などを調べます。また、造影剤を静脈から注入して撮影を行う造影CT検査では、より詳細に観察することが可能です。胆管炎では、肝臓に膿の溜まりを形成する「肝膿瘍」を合併することがありますが、この診断にも腹部CT検査は有効です。
腹部MRI検査
腹部MRI検査では、胆管の拡張や、炎症による胆管のむくみ、周りに液体が溜まった様子を調べます。MRCP(Magnetic Resonance cholangiopancreatography)という検査では胆管の形を詳しく調べることができ、胆管閉塞の原因となる結石や腫瘍の存在を調べるのに有効です。
発熱や血液検査での炎症反応の上昇に加えて、黄疸や肝胆道系酵素の上昇、また画像検査での胆管炎を疑う所見があれば、急性胆管炎と診断します。
治療
急性胆管炎診療ガイドライン2013(TG13)に基づいて胆管炎の診断を行うとともに、軽症、中等症、重症という3つの重症度に分類して治療法を選択します。
いずれの重症度でも、まずは食事を中止して点滴を行い、抗菌薬を投与します。そのうえで、重症度に沿った治療方法を選択していきます。
軽症
抗菌薬を投与しつつ、原因となる病気(総胆管結石や腫瘍など)の検索を行い診断し、治療方針をたてます。抗菌薬の治療で効果が乏しい場合には、胆管のドレナージを行います。
胆管ドレナージとは、胆管の閉塞を解除して、たまった胆汁を消化管内や体外に出す処置です。
特殊な内視鏡を用いて十二指腸の胆管の出口に達したあと、そこから狭くなった胆管に細い管やチューブを置いて流れを確保する方法(胆管チューブや胆管ステントなど)がまず選択されます。内視鏡を使用するドレナージが難しいと判断される場合には、腹部エコー検査を用いて、体外から胆管へ管をいれて胆汁を外に出す方法(経皮経肝胆道ドレナージ)を行うこともあります。
中等症
抗菌薬を投与しながら、早急に胆管のドレナージを行います。
重症
いずれかの臓器不全のある状態であるため、全身管理を行いながら緊急に胆管ドレナージを行います。抗菌薬の治療と胆管ドレナージの治療によって胆管炎が改善したのちに、結石や腫瘍に対しての治療方針を検討します。
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