肝臓は私たちのからだの中でもっとも大きな臓器であり、きわめて重要な役割を果たしています。肝臓にできるがんは、他の消化器がんとどのような違いがあるのでしょうか。肝臓がんの基本的な性格とその治療に対する考え方について、慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器) 専任講師の板野理先生にお話をうかがいました。
肝臓以外の他の臓器でも、それぞれにリスクファクター(危険因子)というものがあります。どんながんでも共通するものは年齢です。高齢になればあらゆるがんの発症リスクは高くなります。また、食道がんの場合はお酒がリスクファクターですし、肥満は大腸がんや前立腺がん、乳がんなど欧米でメインになっているがんのリスクファクターです。肝臓の場合は、特に日本では肝臓がんの成因がはっきりしています。肝炎ウイルスからの肝障害、そしてアルコールからの肝障害によって起こるものがほとんどです。とはいえ、最近では高齢化社会を反映して、元になる背景が何もなく肝機能が正常だった人でも、肝臓にがんができるようになりました。
多くのがんではステージ(進行の度合い)が高ければ転移による再発のリスクも高くなります。肝臓がんもその例外ではありません。しかし、肝臓がんの場合はそうではない再発があります。他のがんの場合には、ステージIなど早期のものについてはあまり考えなくてもいいのですが、肝臓がんの場合には肝臓の基本の状態が悪ければ、その場にあるがんがステージIであっても将来再発するおそれがあります。新しいがんができる、発がんという形で再発してしまうのです。治療する場合にも、このことを考慮した上で治療にあたる必要があります。
また、肝臓は全部を摘出することができない臓器ですので、必ずしも「がんを全部取ればいい」というわけにはいきません。取りたくても取れない場合があります。
これらのバランスで治療方針を決定することになります。
肝臓がんは肝臓そのものから発生する原発性肝がんと、他の臓器から転移してくる転移性肝がんの2種類に大きく分かれます。原発性肝がんのうち、肝細胞がんが全体の9割、肝内胆管がんが5%、残りの5%はさまざまなものがあります。転移性肝がんはまったく別物として取り扱われますので、分けて考える必要があります。
肝内胆管がんは腺がんという種類になります。よく効く抗がん剤もありますし、性格的には転移性肝がんに近い部分があります。ある意味消化器がんの転移に似ているとも言えます。肝細胞がんはこれらのがんとは腫瘍の性質自体が異なるため、有効な治療法もまったく違ってきます。
転移性肝がんについては、肝臓に転移するがんの多くは大腸がんですが、抗がん剤を使う場合は大腸がんに効く抗がん剤を使いますし、原発性肝がんとしての治療は行いません。他の臓器から転移してきたがんは、その全てを取ってしまえば、同じ転移性肝がんがまた肝臓から出てくることはありません。一般の方や患者さんには「肝臓にできたがん=肝臓がん」という認識があり、この区別がついていない方が多いようです。
国際医療福祉大学 教授
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医・学会幹事日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(消化器・一般外科領域)日本肝臓学会 肝臓専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本移植学会 移植認定医日本消化器内視鏡学会 会員日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本大腸肛門病学会 会員日本消化器病学会 会員日本胆道学会 評議員・認定指導医日本腹部救急医学会 会員
慶應義塾大学医学部卒業後、永寿総合病院外科 部長 内視鏡手術センター長、慶應義塾大学病院一般・消化器外科 専任講師を経て、2017年4月からは成田に開学する国際医療福祉大学医学部 消化器外科の主任教授を務める。應義塾大学病院では肝胆膵・移植グループのチーフとして診療に携わるとともに、同大学医学部内視鏡手術トレーニングセンターのディレクターとして、内視鏡手術のエキスパート育成に尽力してきた。今後は同病院の特任准教授として内視鏡手術トレーニングのプログラムに関わりつつ、国際医療福祉大学の特色を生かし同トレーニングプログラムの海外展開も視野にいれている。
板野 理 先生の所属医療機関
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家族(母)の虚血性腸炎についてのご相談です。 3年ほど前に初めて虚血性腸炎を発症してから、度々繰り返しており本年に入ってからは1月と7月に救急搬送しどちらも10日程度入院しました。 3月には大腸カメラをしており、ポリープはとったもののそれ以外の問題はありませんでした。 これまでの傾向として体調を崩しかけるタイミングで虚血性腸炎を発症しやすいようで、本日少し体調悪そうにしていたところ夜に軽度ですが発症しました。本人は救急車を呼ぶほどではないといっており、事前に発症に備えて頓服として処方されたブスコパン10mgを1錠と痛み止めのカロナール200を2錠を服用して様子をみており、明日かかりつけのクリニックに行くつもりです。 このように発症を繰り返している状態なのですが、毎度救急車を呼ぶべきか、救急外来に連れていくべきか非常に悩ましいです。 ひとまず様子見とする状態、救急にかかるべき状態、大まかで結構ですので判断基準をご参考にお示しいただけますと幸いです。 また、主治医からは「うまく病気と付き合っていきましょう」というお話で定期に診察は受けているのですが、繰り返していることに不安もあるところ(主治医を信頼していないわけではないですが)セカンドオピニオンを受診したほうがいいのか、加えて関連して疑うべき病気があるかコメントいただけますと幸いです。
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