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足のむくみは要注意?肝臓がんの症状と早期発見のための検査方法

足のむくみは要注意?肝臓がんの症状と早期発見のための検査方法
沼田 和司 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 診療教授

沼田 和司 先生

目次
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栄養素の合成・分解や解毒といったはたらきを持つ肝臓は、人の体にとって非常に重要な臓器のひとつです。この肝臓が何らかの原因によってうまく機能しなくなると、肝炎や肝硬変、ひいては肝臓がんといった病気を引き起こすことがあります。肝臓がんを発症すると足のむくみや倦怠感といった症状がみられることもありますが、進行しなければこうした症状はほとんど自覚されません。肝臓がんを早期発見・診断するには、血液検査やエコー検査、画像診断といった検査が重要です。本記事では、肝臓がんの症状と検査について、横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 担当部長の沼田和司先生にお話しいただきました。

肝臓がんの原因には何があるのか

脂肪肝、肝炎、肝硬変といった肝臓の病気は、肝機能が障害を受けることで発症します。また、脂肪肝や肝炎、肝硬変を放置すると、やがて肝臓がんへと進展するリスクがあります。肝臓がんや肝臓の病気を引き起こすとされる主な要因には次のようなものがあります。

【肝臓がんの主な要因】

  • ウイルス(C型肝炎ウイルス〈HCV〉、B型肝炎ウイルス〈HBV〉)
  • アルコール性肝炎
  • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
  • 糖尿病
  • 代謝性疾患(ウィルソン病、家族性肝内胆汁うっ滞など)

日本においては、C型肝炎ウイルスが原因で肝臓がんを発症するケースがもっとも多いことが知られています(2019年9月現在)。ただしその一方で、近年の傾向としては、C型肝炎ウイルスによる肝臓がんの割合が減少し、非B非C型肝臓がんが漸増(ぜんぞう)しています。この理由のひとつとして、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から起こる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が増えていることが挙げられます。

脂肪肝は運動不足や肥満が発症リスクになるため、肝臓がんを防ぐためには、日頃から太らないように意識することが大切です。また、C型肝炎ウイルスを排除しても罹患期間が数十年もあった方は、排除後に肝がんを発症することがありますので、その後も超音波などの画像診断を定期的にしてください。

肝臓の異常に気づくには?血液検査で注意すべき検査項目

肝機能を示すAST・ALT・γ-GTP・ALP

健康診断などでも実施される血液検査によって、肝機能の異常の有無をおおよそ調べることができます。

主な検査内容と基準値

肝機能をみるために用いられる主な血液検査の項目は以下の通りです。

  • AST(基準値7~38U/L以下)
  • ALT(基準値4~44U/L以下)
  • γ-GTP(基準値 男性80U/L以下、女性30U/L以下)
  • ALP(基準値50~350IU/mL)

※基準値は検査機関によって異なる

※数値は臨床検査法提要(改訂第32版)より

上記の項目は肝細胞や胆管で作られる酵素のことを指し、これらの酵素は肝細胞の破壊や胆道の異常によって血液中に流れ出るため、その血中値によって肝機能の状態を調べることができます。

その他の項目

  • 総ビリルビン
  • アルブミン
  • コリンエステラーゼ
  • LDH
  • 血小板
  • 血清アルブミン
  • ICG試験
  • HBs抗原・抗体、HBe抗原・抗体、HBc抗体

など

原因ごとの検査値の傾向

  • 脂肪肝の場合

ASTやALT、γ-GTPがやや高値を示すことがあります。

  • 慢性肝炎の場合

ALTおよびASTが高値になります。また、ALTの値がASTの値を上回ります(ALT>AST)。

  • アルコールによって肝機能が障害されている場合

γ-GTPが高く、なおかつASTの値がALTの値を上回ります(AST>ALT)。また、中性脂肪(TG)の値も高くなることが多いです。

  • 肝硬変の場合

正常な肝細胞が減少して、ASTやALTの値はそれほど高くなりません。両者の比率は、慢性肝炎の場合と逆転し、ASTの値がALTの値を上回ります(AST>ALT)。

なお、γ-GTPやALPが高値の場合は、胆汁のうっ滞や、胆道系の閉塞をきたしている可能性があります。

どのような場合に病院で精密検査を受けるべきか?

健康診断などで脂肪肝と診断されたら、一度は医療機関で肝臓の超音波検査を受けることをおすすめします。

日本人の3割程度が脂肪肝であると報告されており、それはアルコール性と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に大別されます。NAFLDの一部は炎症と線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行します。NASHの患者数は近年増加しており、将来、肝硬変への進展や肝臓がんを発症するリスクがあります。

そのほか、C型肝炎ウイルス抗体が陽性で治療歴がない方、HBs抗原が陽性の方、厚生労働省の定める「節度ある適度な飲酒(1日平均純アルコール20g程度)」の量を超えて常習的に飲酒をする方も定期的に医療機関を受診してください。

肝臓がんで起こる症状とは

浮腫(むくみ)

腓骨(ひこつ・足のすねの外側にあたる部分)上部の皮膚を押してへこんだまま元に戻らないと、むくみが生じていると判断できます。肝硬変など肝臓の病気の初期症状として現れることがありますが、浮腫は肝臓以外の病気や水分の摂りすぎなどさまざまな原因で生じるため、浮腫の症状のみで肝臓の病気を診断することはできません。

腹水(お腹が張る)

お腹に水がたまった状態を腹水といいます。食事が困難になるほど張れてしまったり、数日で体重が急激に増加したりすることもあります。腹水が生じると、過剰な体液が足にたまり、足のむくみが悪化することもあります。これまで普通に履けていたはずの靴が履けなくなった場合、腹水によって足のむくみが進行している可能性があるため、注意が必要です。

一般的に、腹水は病気が進行して肝硬変の状態になってから生じるため、腹水が生じる以前から定期的に体重の変化を記録することが大切です。

倦怠感(体がだるい)

肝臓の代謝・解毒機能が低下することにより、体がだるくなります。しかし、肝臓の病気による倦怠感の程度には個人差があり、慢性的に体がだるい状態が続くと、体は「だるい状態」に慣れてしまうため、私の経験上、診療時に倦怠感を訴える方はあまり多くはいらっしゃらない印象です。

黄疸(おうだん)

黄疸とは、白目の部分や皮膚が黄色くなった状態です。進行すると、黄色からやや黒ずんだ色へと変化していきます。

肝性脳症

肝性脳症は、肝臓の解毒作用が低下して脳内に有害物質がたまることにより、脳機能が障害された状態です。肝性脳症では、手を前にまっすぐ伸ばした姿勢をとると、手が上下に大きく動きます(羽ばたき振戦)。

また、肝性脳症に伴い、見当識障害という症状がみられることがあります。見当識障害とは、自分のいる場所や現在時刻が分からなくなる状態です。性格の変化(怒りやすい、あるいは楽観的になるなど)がみられることもあります。

掻痒感(かゆみ)

代謝機能に影響が生じることから、全身にかゆみが生じることがあります。

横浜市立大学附属市民総合医療センターにおける肝臓がんの検査と診断

前項で説明したような症状が出てきた段階では、すでに病気が進行している状態です。このため、症状が出る前から検査で病気を発見し、早期に治療を始めることが重要になります。

肝臓がんの検査と診断

超音波検査によるスクリーニング検査

健康診断の血液検査の結果などから肝機能異常を指摘された患者さんには、肝臓がんの可能性を考えて、より詳細な検査を行います。

通常、まずはスクリーニングとして超音波検査を行い、肝臓に結節(しこりのこと。良性と悪性がある)ができていないかを調べます。超音波検査から、明らかに肝臓がんの疑いが強いと考えられる場合や結節がみられる場合は、造影CT/MRIを実施します。

「EOB-MRI」による画像診断

当院では、肝細胞がんの診断において、「EOB-MRI」という画像診断を行っています。

「EOB-MRI」とは、Gd-EOB-DTPA(ガドキセト酸ナトリウム)という成分を含む造影剤を用いて行う特殊なMRI検査です。

一般的な造影剤では細胞の血流情報しか得ることができません。一方で、Gd-EOB-DTPAでは、血流情報に加えて細胞の機能情報を得ることができます。また、Gd-EOB-DTPAの投与後は正常な肝細胞にのみ取り込まれ、肝細胞機能が消失した部分には取り込まれないという性質があります。この性質を利用し、肝臓の機能が消失した部分を黒く写し出すことで、肝細胞機能の情報を得ることが、この検査の目的です。

超音波検査では、肝臓の結節を発見することはできますが、それが悪性の肝臓がんであるか、良性の腫瘍であるかを見極めることは容易ではありません。これに対して、Gd-EOB-DTPAを用いる「EOB-MRI」の肝細胞相で評価すれば、肝臓の機能が消失した部分、すなわち腫瘍のある部分は取り込みがないため黒く写し出され、小さながん病変の存在や病変の位置などを、ある程度推測することができます。肝硬変の方では、造影剤が取り込まれずに黒く映し出された結節がある場合、肝臓がんである可能性が高いと判断します。

超音波検査+「EOB-MRI」の融合画像を用いた肝臓がんの診断

さらに、超音波検査と「EOB-MRI」で撮影した肝細胞相の画像を融合させ、がんの可能性が高い結節の位置を絞り込みます。位置を絞り込めれば、造影超音波を行って腫瘍血管(がんの組織内にみられる血管網)や腫瘍濃染(造影検査で特に濃く映し出されている部分)を判定し、質的な診断を行うことが可能となります。その融合画像を用いて、肝臓がんの診断を行います。このように、超音波検査とEOB-MRIを組み合わせた画像診断を行うことで、より正確に早期の肝臓がんを発見することを目指しています。

磁気センサーにて空間座標を一致させた超音波とEOB-MRI肝細胞相の融合画像

磁気センサーにて空間座標を一致させた超音波とEOB-MRI肝細胞相の融合画像

2月

 

EOB-MRI肝細胞相の黒く見える部位(矢頭)が早期肝細胞がんを疑う部位であり、超音波でそれにほぼ一致する部位は、境界不明瞭な低エコーの結節として検出される(矢頭)。その部位を造影超音波にて評価すると、周囲よりも血流が低下している部位として認識され(矢頭)、細胞をとった結果は病理学的に早期肝細胞癌であった。融合画像がないと超音波単独では決して検出できない病変であった。(J Med Ultrason. 44(1):89-100, 2017より引用)

スクリーニング検査「肝細胞がんサーベイランス」について

日本では、ウイルス性肝炎や肝硬変の患者さんの肝臓がん発症を予防するために、危険因子(慢性肝炎、糖尿病など)を持つ方、および「高危険群」「超高危険群」に該当する方を対象にしたスクリーニングが推奨されています。

【スクリーニングの対象者】

  • B型慢性肝疾患の患者さん
  • C型慢性肝疾患の患者さん
  • 非ウイルス性肝硬変の患者さん

サーベイランスでは、該当者に対して3~6か月ごとの超音波検査と腫瘍マーカー測定を行うことが定められています。定期的にスクリーニング検査を受けることで、早期発見・早期治療および予後の改善が期待されます。

このように、ウイルス性肝炎および肝硬変の患者さんに対する早期発見のシステムは整いつつあるといえます。ただし、このサーベイランスでは、近年増加するNASHやアルコール性肝障害の患者さんに対するスクリーニングとしては2019年10月現在では不十分であり、さらなる体制の確立が求められるでしょう。