うぃるそんびょう

ウィルソン病

同義語
Wilson病,ウイルソン病
最終更新日
2023年11月02日
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2023/11/02
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

ウィルソン病とは、生まれつきの遺伝子異常によって胆汁中に銅が排出されなくなり、排出されなくなった銅が肝臓、脳、腎臓、目などに大量にたまることで多様な症状を引き起こす遺伝性の病気です。1912年に初めてこの病気を報告した博士の名前にちなんで、“ウィルソン病”と名付けられました。

銅は、赤血球の形成や体に悪影響を及ぼす“活性酸素”の除去などに役立つ酵素の構成成分として、体にとって欠かせない金属です。食事を取ることで小腸から少しずつ取り込まれ、最終的に肝臓から胆汁内に排出されて便とともに体の外へ出ていきます。しかし、ウィルソン病では遺伝子の異常に伴って、体に取り込まれた銅がうまく胆汁から排出されなくなり、体の中に銅が蓄積してしまいます。

ウィルソン病の発症頻度は30,000〜35,000人に1人で、日本では毎年30〜35人ほどの患者が生まれていると考えられています。患者の男女比は一定で、発症年齢は3〜60歳と幅広く、子どもの頃に発見されることもあれば、大人になってから発見されることもあります。

原因

ウィルソン病は遺伝性の病気です。細胞の中で銅を運ぶ銅輸送蛋白の遺伝子(ATP7B)に異常が生じることにより、銅をうまく送ることができなくなり細胞に銅が蓄積してしまいます。

この遺伝子異常は、常染色体劣性(潜性)遺伝という遺伝形式で親から子どもへと引き継がれます。常染色体は父親由来と母親由来の2対で構成されています。常染色体劣性(潜性)遺伝は、対になった2本の常染色体の両方に異常があった場合に病気が発症するタイプの遺伝形式です。つまり、両親がともにこの遺伝子異常を持っていた場合、その子どもは4分の1の確率でウィルソン病を発症します。そのため、患者にきょうだいがいた場合、そのきょうだいも一定の確率でウィルソン病を発症する可能性があります。

この両親の子どもの2分の1は片方の常染色体に遺伝子異常を引き継ぐ“保因者”となるため、ウィルソン病を発症することはありません。しかし、同じ遺伝子異常を持った人との子どもは4分の1の確率でウィルソン病を発症します。

症状

ウィルソン病は、症状や障害されている臓器に応じて“肝型”“神経型”“肝・神経型”“その他”に区分されます。

また、まだ発症しておらず、症状がない時期にたまたま検査によってウィルソン病と診断された例を“発症前型”と呼びます。発症前型で症状がない場合でも治療は必要です。

肝型

肝臓の機能が低下するタイプのウィルソン病で、皮膚や白目が黄色くなる“黄疸(おうだん)”のほか、お腹の痛みや張り、嘔吐、体のむくみ、体のだるさ、食欲の低下などの症状が現れます。

5歳以降の患者に発症しやすい傾向があります。このタイプでは、急性肝炎劇症肝炎脂肪肝肝硬変肝細胞がんなど、さまざまな肝臓の病気への発展がみられます。

神経型

神経症状としてパーキンソン病のような症状が現れるタイプのウィルソン病です。具体的には、うまく歩けない・話せない、唾液が出る、手がふるえる、飲食物がうまく飲み込めないなどの症状が現れます。

そのほか、精神症状として意欲や集中力の低下、気分や性格が急に変わるなどがみられます。そのため、うつ病統合失調症など、ほかの精神疾患と区別が難しい場合があります。

神経型は8歳以降の患者に発症しやすい傾向があります。

肝・神経型

前述の肝型と神経型の症状の両方がみられます。

その他

そのほかにみられる症状として、血尿や腎結石、尿タンパクなど腎臓に関する症状や、関節炎心筋症などが挙げられます。また、黒目の周りに銅が沈着することにより、黒目の縁が緑色のように見える“カイザーフライシャーリング”と呼ばれる症状もみられます。

検査・診断

一般的に、症状や家族にウィルソン病の患者がいることなどからウィルソン病を疑われ、血液検査や尿検査を行います。

多くは血液や尿に含まれる銅の量、肝臓で銅と結合する“セルロプラスミン”と呼ばれるタンパク質の濃度などから診断がつきます。最終的に、肝生検によって肝臓内の銅含量を調べたり、原因遺伝子のATP7Bの解析を行ったりすることで診断されます。

治療

ウィルソン病の主な治療方法は薬物療法です。遺伝子異常による病気のため完治は難しく継続的な治療が必要ですが、服用を続ければ通常の社会生活が可能です。

治療薬としては酢酸亜鉛、トリエンチン塩酸塩、D-ペニシラミンという3つの飲み薬が挙げられます。どの治療薬を使用するかは病型や病気の状態によっても異なります。

治療薬の服用を継続すれば、いずれの症状も改善が期待できます。服用を中断すると悪化するため、継続的な服用が大切です。

肝臓の機能が著しく悪い場合

劇症肝炎や肝不全、重篤な肝硬変など肝臓の機能が著しく低下している場合には、肝移植も検討されることがあります。肝移植をした場合、以後ウィルソン病に対する治療は不要になることが特徴です。

生活上の注意

レバーや牡蠣、タコ、イカ、チョコレートなど、銅が多く含まれる食品の取り過ぎに注意が必要です。

特に治療開始から1年程度は、できる限りこれらの食品を取らないように心がけるとよいといわれています。その後は週に1回以下を目処に少量であれば食べてもよいでしょう。

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