胆管がんでは、手術治療が唯一治癒が期待できる治療法です。本記事では、胆管がんの種類によってどのような手術法が行われているのか、また再発の頻度について、がん研有明病院 消化器センター 肝・胆・膵外科部長の齋浦明夫先生にお話しいただきました。
胆管がんでは手術治療が第一選択となります。検査で腫瘍を把握したのち、手術が適応となるかを判断します。遠隔転移(病巣を離れて肝臓などに転移していること)がある場合、手術は適応になりません。したがって、遠隔転移がないか、腫瘍の切除が技術的に可能であるかということが判断の基準となります。しかしこの2点をクリアした場合でも、すべての胆管がんで手術が行えるわけではありません。
最終的に手術を行うかの判断は、患者さんがその手術に耐えられるかどうかになります。胆管がんは高齢で発見される場合が多いため、ご本人が手術に耐えることができないと判断された場合は手術を行いません。これらの、3つのハードルをクリアできた場合に手術が行われます。その場合、胆管がんの手術は非常に難易度が高いため、日本肝胆膵外科学科が認定している専門医や施設で受けていただくことをお勧めします。
(参考:日本肝胆膵外科学会HP http://www.jshbps.jp/retrieval.html)
遠隔転移をしている場合は、胆管がんを手術で切除してもがんの根治にはならず、再発する危険性があるため手術ではなく化学療法を行います。ただし、現在胆管がんに有効な抗がん剤は開発されていません。
技術的に手術が難しく、遠隔転移のない場合にがんの進行抑制を目的として化学療法と併用で放射線治療を行う場合があります。また、手術に耐えられない方にも用いる場合があります。しかし、有効性については十分な検討がされておらず、標準治療ではありません。
手術は胆管がんの種類によって以下のようにわけられます。
肝臓の肝門部領域にできるがんです(参考記事「胆管がんとは-胆管の役割と胆管がんの分類」)。胆管・門脈・肝動脈が分岐していく複雑な構造であり、手術には高い技術が必要となります。
根治のために、肝臓の半分や胆のう、リンパ節はほぼ切除されます。切除方法は、肝門にできたがんが左葉よりか右葉よりか、血管の走行によって主に2つの方法が選択されます。
広範囲に肝臓を切除するため、術後に肝不全の危険性があります。合併症を防ぐために「術前門脈塞栓術」を行います。通常の肝臓は、右葉:左葉が70%:30%の大きさですが、右葉へ入る門脈をつめると左葉へ入る門脈の血流がふえ、1ヶ月後には左葉が一回り大きくなります。その結果、右葉:左葉が60%:40%の大きさになります。その後、拡大右肝切除を行えば肝不全のリスクを減らすことができます。多くの場合左葉は右葉より小さいため、拡大左肝切除では術前門脈塞栓術が必要ない場合があります。
肝臓は唯一再生する臓器であるため、術前門脈塞栓術が可能となります。術前門脈塞栓術は1990年代初頭に日本から報告され、現在は世界中で行われています。これにより、手術で亡くなる方が半減したといわれています。
遠位胆管がんは膵臓を通っている胆管にできるがんで、膵臓へ広がりやすい性質をもっています。手術は膵頭十二指腸切除(膵頭部と十二指腸を切除する方法)が基本になります。切除後は、残った膵臓を小腸や胃に縫い合わせ、膵液が小腸や胃に流れるように再建します。膵臓に浸潤せず胆管だけにがんがとどまっているケースは非常に少ないため、膵頭十二指腸切除で膵臓まで切除する場合がほとんどです。
肝内胆管がんは肝臓内にがんができるため、肝部分切除を行います。がんの場所、大きさ、数によって切除範囲を決定します。肝臓の左葉と右葉を越えてがんが広がっている場合や、肝門部に近い場合には、大きく切除する必要があるため前述した肝門部領域胆管がんの手術法が選択されます。
術中迅速病理診断とは外科手術や内視鏡手術時に行われる病理診断のことです。診断には30分程度かかります。術前の画像検査では細かな診断が難しく、良性悪性の判断、がんの広がりなどの診断の精度が確実ではないため、術中の病理診断に委ねられる部分が大きくあります。がんの広がりによっては当初予定していた切除だけではなく、追加切除が必要な場合があります。しかし一度手術を終えたのちに、追加切除のために再度手術を行うのは患者さんの負担となります。したがって、術中迅速病理診断によって手術中に追加切除の判断ができれば、再手術を行わずに追加切除が可能となります。
しかしながら、追加切除自体も患者さんの負担になります。そのため術中迅速病理診断の結果を受け、追加切除を行うべきかそれともすぐに再発する危険性が少ないと予想される場合は、日を改めて再手術するかということを判断します。手術中の限られた時間で判断する必要があるため、非常に難しい決断ではあります。とはいえ、術中迅速病理診断によって患者さんの状態と根治性のバランスをみて手術を行うことができるため非常に有用です。
手術の術式によって異なりますが、手術における合併症は主に次の2つです。
胆汁と膵液が混ざるとより活性化するため、2つが同時に起こる場合は注意が必要です。
がん研有明病院のデータによると、手術を行うことができた患者さんの5年生存率は約40%です。その他の施設を合わせても約30〜40%といわれています。また、手術が行えなかった患者さんのなかで3年生存された方は残念ながらほとんどいません。ですから、「手術を行わないと治らない」ということは言えますが、必ずしも「手術を行えば治るということでもない」ということなのです。胆管がんの生存率が低い理由は、再発が多いことが挙げられます。再発箇所は肝臓や胆管がんの周囲のリンパ節に多いといえます。手術を行っても再発が多いのは、がん発見時にはすでに目に見えないがんが血管内やリンパ管に転移していることが挙げられます。
再発を抑えるために現在、術後の補助化学療法の臨床試験が2つ行われています。ひとつは2016年もしくは2017年に結果がでる予定です。もうひとつは、がん研有明病院も参加している現在進行中の臨床試験です。これらの結果がでれば、胆管がんにおける術後の補助化学療法が有効であるかどうかがわかります。
順天堂大学大学院医学研究科 消化器外科学講座 主任教授、順天堂大学医学部附属順天堂医院 肝胆膵外科 教授
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