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インタビュー

食道がんの最新治療、日本が誇る世界で初めての手術(2)―ダビンチ®による手術

食道がんの最新治療、日本が誇る世界で初めての手術(2)―ダビンチ®による手術
瀬戸 泰之 先生

国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長

瀬戸 泰之 先生

この記事の最終更新は2015年08月10日です。

食道は胃とのどをつないでいる管です。食道の極めて近い位置には、肺や心臓というとても大事な臓器があります。さらに食道は気管の後ろ、背中の近くというかなり深い部分にあるのです。そのために、食道がんの手術は非常に難しい手術とされてきており、合併症も多く起きてしまっていました。

そのようななかで、東京大学胃食道外科教授の瀬戸泰之先生は患者さんの負担を少しでも軽くできるような食道がんの手術をするためにどうすべきかを常に考え続けてこられました。患者さんのために尽力し続けてきた瀬戸先生が世界で初めて開発された、ダビンチ®による食道がんの最新治療について4回にわたってお話し頂きます。第2回はダビンチ®による食道がんの手術はどのようなものなのかについてです。

第1回の記事(「食道がんの最新治療、日本が誇る世界で初めての手術(1)―食道の特徴と従来の手術の問題点」)でお話しした食道がん手術の難点を克服すべく、東大病院ではダビンチ®というロボット手術を導入しました。

まず、ロボット手術のメリットをお話しします。ロボット手術では開胸せずに非常に小さい切開で手術を行うことができます。さらには肺を縮めなくても手術ができるため、片肺換気の麻酔を用いる必要がありません。

ここからは、手術の具体的な手順を説明していきます。
ダビンチ®を使った手術では、人間の手がはいらないような狭い空間に対して、細長いロボットアーム3本(「手」)とカメラ(「目」)を入れます。実際のアームやカメラの操作は、医師が患者さんから少し離れたボックス(コンソール)にて行います。

この手術の特長は「手」と「目」にあります。「手」は7つの関節可動域を持っており、人間の関節よりはるかによく動きます。「目」は3D画像として、立体感のある手術視野を見ることができ、拡大をすることもできます。この「手」と「目」により自然な感覚で操作をし、精度の高くて細かい操作も可能となります。

この「非開胸ロボット支援食道癌根治手術」を私たちは「NOVEL」と命名しました。NOVELは「Non One-lung Ventilation:片肺換気麻酔なしでの Esophagectomy:食道切除 with extended Lymphadenectomy:リンパ節郭清」という意味です。これは、我々が世界で初めて成功し、つけた手術の名前です。

また、手術中の体の負担は小さくても、食道切除もリンパ節郭清(※食道がんの手術をするときには転移を防ぐため、周囲のリンパ節をとる)もできる、しっかり治療ができるという思いを込めて名前を付けました。
さらに、従来では麻酔中に片方の肺を縮めざるを得ませんでしたが、NOVELでは両方の肺に空気を送り込むことができるようになりました。

非開胸アプローチ(胸を開かないで行う手術)もいくつか試みられてきました。例えば、食道抜去という手術です。これは、頸とお腹を開いて、食道だけを抜きとるという手術です。しかし、これは根治術(根本的に病気を治す手術)にはならないのです。根治術とは具体的にいうと、食道のほかに転移しやすい部分のリンパ節もとってしまうことを言います。食道がんでは、周囲のリンパ節に転移しやすいので、周囲のリンパ節をとらなくてはなりません。

このように、開胸をしない手術もあるにはありました。しかし、リンパ節が取れないため、根治術にはなりませんでした。一方で、根治術にするためには開胸をせざるを得ませんでした。食道がんは、胃がん大腸がんよりも他の臓器に転移しやすいと言われており、このことが、食道がんが怖いと言われている所以でもあります。

ダビンチ®の手術では開胸が必要ありません。さらに、胸膜を切開する必要もないにも関わらず、従来の開胸手術と同様の根治手術が可能になりました。

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