目次
内視鏡下嚥下機能検査とは、鼻からのどに内視鏡を挿入し、飲食物を正常に飲み込めているかを調べる検査です。
この検査では、とろみがついたゼリーなどを実際に飲み込み、食道に流れ込んでいるか内視鏡により観察します。
内視鏡下嚥下機能検査は、飲食物の飲み込みが悪く、誤嚥(飲食物が気管に入り込んでしまうこと)を生じていることが疑われる場合に行われます。具体的には、脳卒中による麻痺、のどの病気(咽頭がんなど)を発症している人、肺炎を繰り返す人、加齢などを原因としたのどの筋力低下により、飲み込む力が弱い人などに対して行われます。
「嚥下」とは、物を飲み込む動作のことです。通常は口に入った飲食物は程よく咀嚼され、のどから食道に送り込まれます。
この動作には多くの神経と筋肉がはたらいていますが、いずれかに異常が生じると物を正常に飲み込むことができなくなります。その結果、のどに飲食物や唾液などが溜まったり、気管に飲食物が流れ込んでしまい、誤嚥性肺炎を引き起こしたりする可能性が高くなります。
誤嚥性肺炎は再発することも多く、命に関わることがある重大な病気です。そのため、神経系やのどに病気がある人や高齢者では、口から飲食物を摂取できるか評価することは非常に重要なのです。
内視鏡下嚥下機能試験は、高齢者や「嚥下」の機能に異常が生じるような病気の人、肺炎を繰り返す人などに対して、嚥下機能を調べる目的で行われます。
検査が行われるタイミングは、物を飲み込む能力が低下する可能性がある病気や高齢者の方で、食事量が少ない・食事中にむせることが多い・肺炎を繰り返す場合に、食事を続けるか否かを判断する段階で行われるのが一般的です。
また、脳卒中や咽頭がんの術後などに急激に嚥下機能が低下したと考えられる場合には、食事再開の前に検査が行われることも少なくありません。
内視鏡下嚥下機能検査では、鼻からのどに内視鏡が挿入されます。
ワルファリンカリウムなど血液が固まりにくくなる薬剤を服用中の人は、鼻から内視鏡を入れる際に鼻血が出ることもありますので、検査前に医師にどのような薬を服用しているか報告することも大切です。
この検査を受ける人は、検査中にも誤嚥することがあり、検査後に発熱や咳、痰などの肺炎症状が見られることがあります。このような場合には、早めに病院に相談し、悪化する前にできるだけ早く治療を行うことが重要です。
また、検査では、むせ込みや飲み込みにくさを感じた場合は無理をせずに速やかに医師に申し出ることも大切です。
内視鏡下嚥下機能検査は、病状にもよりますが15~30分程度の時間を要します。
しかし、明らかな誤嚥が確認され、物を飲み込ませるのが危険と判断された場合には、のどの唾液や痰の溜まり具合や、声帯の動きなどを観察するのみで検査を終えることも少なくありません。
また、内視鏡を鼻からのどに入れるときには、鼻の中に麻酔薬を注入します。鼻の中が狭い人では痛みを感じることもありますが、多くは検査後には痛みが引くため安心して検査を受けましょう。
内視鏡の画像が動画で保存され、飲み込みの状態を分かりやすく観察することができます。
正常な嚥下では、ゼリーなどの飲食物は、のどの中に溜まることなく食道に流れ込みます。しかし、嚥下の機能が低下していると、飲み込んだものが食道に流れ込まず、のどに溜まったり気管に流れ込んだりするのが確認できます。
また、声帯やのどの動きの悪化や咽頭がんなどが発見されることも少なくありません。
内視鏡下嚥下機能検査で異常が見られた場合、口からの飲食物の摂取を続けていると誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。そのため、嚥下訓練を行ったり、飲み込みが可能な形状の食事にしたりすることが必要です。
また、嚥下機能の改善が難しい場合には、栄養を補うために胃ろうを作ったり、鼻から胃に管を通して流動食を注入する経管栄養や、カロリーの高い点滴を行う高カロリー輸液などの治療が必要になったりすることもあります。
嚥下の機能が低下すると、誤嚥性肺炎の発症リスクが高まるため、医師や理学療法士の指示に従ってリハビリを続けることが大切です。
また、病気の治療中やリハビリ中であっても咳や痰、発熱などの症状が見られた場合には、できるだけ早く病院に相談するようにしてください。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。