早期発見がむずかしいとされる食道がんですが、症状が出た場合、その症状にはさまざまなものがあります。また食道がんの検査には、大きく分けて3種類の方法があります。これらについて、東京大学胃・食道外科教授の瀬戸泰之先生にわかりやすくご説明いただきました。
食道がんの症状に、組織型(それが「扁平上皮がん」なのか、それとも「腺がん」なのかということ、参照:「食道がんの原因ー組織型によっても原因が異なる」)による違いはほとんどありません。
がんが小さい場合は無症状であることがほとんどで、食道がん自体、早期に発見するのが難しいがんです。この段階で症状がある患者さんは全体の4分の1程度であるといわれています。しかしがんが大きくなって症状が出てくる場合、以下が挙げられます。
食道は1周4cmほどのホース状の臓器であるため、そこに硬いがんができるとつっかえるような感覚がでてくることは想像に難くありません。食道がん患者の約4割がこの症状を訴えると言われています。
また、転移先の症状として、たとえばリンパ節転移が起きた場合、嗄声(声がしわがれること)などの症状を訴える患者さんも多いです。
以上の2つの症状が、食道がん発見時の症状としては多く見られます。その他の症状として起こり得るのは以下です。
以上の症状を、がんの進行度別の推移に添って見ていくと次のようになります。食道がんの症状はがんが小さければ無症状なこともありますが、がんが小さいときに起こる可能性のある症状には、食道がしみるような感覚があります。
しかし、がんが大きくなって食べ物の通り道を妨げるようになるとしみるような感覚はなくなり、食べ物がつっかえるような感じがします。また、進行したがんでみられるように体重が減少していくこともあります。さらに、がんが進行して食道の近くにある肺や神経に浸潤もしくは転移(参照:「食道がんの転移とステージ」)をすると、せきが出たり声がかすれたりします。
食道がんの検査は大きく3種類に分類されます。
『内視鏡(いわゆる胃カメラ)+生検診断(癌の組織を一部採取して)』の組み合わせによりがんの診断が下されます。
がんの治療にあたり、がんがどこまで拡がっているか(浸潤や遠隔転移)を検査することは非常に重要です。この診断には、CTが主に用いられます。ただ、施設によってはMRIやPET-CTが用いられる場合もあります。
外科的手術や放射線治療、化学療法のいずれを行うにしても、あらかじめ全身の機能を調べておくことが必須となります。ここでは心機能の検査・呼吸機能の検査・血液検査・腎機能検査などが行われます。
国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長
日本消化器内視鏡学会 会員日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本外科学会 外科専門医・指導医日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本内視鏡外科学会 会員日本胃癌学会 会員
東京大学医学部附属病院長の医師としてのキャリアは縁から生まれた
胃がんや食道がんを中心とした上部消化管の領域の専門。研修医時代の友人の薦めで上部消化管を専門にすることを決意した。それがのちにさまざまな縁となり、上部消化管を専門にする医師としてのキャリアが積まれることになる。今の自分を作り出した縁を大切にしたいという思いから、若手の医師との縁も大切にしている。
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