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インタビュー

肝門部胆管がんとはどんな病気?症状・検査・治療について

肝門部胆管がんとはどんな病気?症状・検査・治療について
梛野 正人 先生

名古屋大学 大学院医学系研究科腫瘍外科学 教授

梛野 正人 先生

消化器がんの中で、もっとも手術が難しいとされる「肝門部胆管がん」。名古屋大学医学部附属病院では、これまでに875例の肝門部胆管がんを切除しました。これは日本のみならず、世界でも群を抜く手術数です。

がんは、そのケースごとに最適な治療が異なります。その疾患についてどのように知り、どのような治療をしていくのか選択しなければなりません。肝門部胆管がんについて、胆管がん手術の最前線で活躍する名古屋大学大学院腫瘍外科学の梛野正人教授にお話を伺いました。

「胆管」とは肝臓で生成される胆汁(消化液)の通り道で、肝臓から十二指腸までつながっています。その胆管にできたがんを「胆管がん」と呼び、発生箇所によって3つに分類されます。 

肝臓周辺の図

<肝内胆管がん>・・・肝臓の中を通る胆管にできるがん

<肝門部胆管がん>・・・右、左の胆管が合流するあたり(ちょうど肝臓の出口付近)にできるがん

<遠位胆管がん> ・・・胆のう菅の合流部位から乳頭部の手前までにできるがん

肝門部胆管がんは痛みがなく、すぐには症状が現れないため早期発見が困難です。患者さんの多くは、黄疸が出て初めて異変に気付き、来院されます。また、黄疸が出る2週間ほど前から尿が褐色になるため、そこで気付く患者さんもいます。

がんが発生すると胆管内が狭くなり、胆汁が流れにくくなります。圧力のかかった胆管が拡張し、逆流した胆汁が血管内に入り込むことによって、血液中のビルビリン(黄色い色素)の濃度が上昇、皮膚や白目の部分が黄色くなります。

横断は肝門部胆管がんの症状としてもっとも多く見られますが、腹部がムカムカして食欲が落ちるという症状も聞かれます。体のかゆみや白色便なども症状の一部ではありますが、それらの症状が出る頃には黄疸が出ている状態のため、黄疸と共に症状を訴える患者さんが多いです。

胆汁が腸内に流れないと、便の色が白に近いクリーム色に変化します。

胆汁に含まれる胆汁酸が血管内へ流れ込むと、皮膚にかゆみが出ます。

胆汁が流れ込んだ血液が尿に混ざると、褐色の尿が出ます。これを黄疸尿、または尿の濃染と呼びます。

胆管がんは、高リスク群による囲い込みができないため早期発見が困難です。高リスク群による囲い込みとは、ある疾患の発症を早期に発見するためのシステムです。例えば肝がんは、肝炎ウイルス(B型・C型)感染や肝硬変の状態を「肝がんの高リスク群」に設定し、定期的な検査によって肝がんの早期発見を促進しています。胆管がんの場合、そのような設定ができないため早期発見することが難しいのです。

肝門部胆管がんの検査としてもっとも重要なのはCT検査です。肝門部胆管がんを疑う場合には、必ず行います。

ほかには必要に応じてMRI検査、PET検査等を行い、黄疸が出ている方には胆道ドレナージによって胆汁を体外に流し、黄疸の症状を緩和します。

X線を体の周囲から当て、検出されたデータをもとに体の断面画像を作成します。現在多くの病院で実用化している「マルチスライスCT」により、短時間(30秒ほど)の撮影で多方面からの画像を得られるようになりました。

磁力を使い、臓器や血管を撮影します。検査時間はCT検査よりも長く(30分〜1時間ほど)かかりますが、病変部と正常組織のコントラストが出るため、治療前の精密検査として行われることがあります。

放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞を検出します。がん細胞がブドウ糖を活動エネルギーにする性質を利用した検査で、全身を調べることができます。

胆汁が血液に逆流しないよう、肝臓内の胆管にチューブを挿入し体外に胆汁を流すことで、黄疸症状を緩和します。内視鏡的に挿入する方法(内視鏡的経鼻胆道ドレナージといいます)が一般的です。

 

梛野先生

当院における肝門部胆管がんの生存率はおよそ50%です。100名の方が来院されたとして、手術できるのは約75名、その方達の5年生存率が50%ということです。

2010年イギリスで行われた切除不能の胆道癌(胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌)を対象とした臨床試験によると、1種類の抗がん剤投与を投与した場合の1年生存率は約40%、2種類の抗がん剤を組み合わせて投与を投与した場合には60%ほどでしたが、どちらもほぼ全症例が2年以内に死亡しており、3年以上の長期生存者は認めませんでした。このように、胆道癌は手術ができなければ、抗癌剤を使っても2年以上の生存を得ることは極めてまれなのです。

生存率とは、ある一定の期間経過した集団について、その時点で生存している患者さんの割合をパーセンテージで示した数値です。ただし、生存率の数値だけを見て病院を選ぶことはおすすめできません。なぜなら、生存率にはカラクリがあるからです。

生存率の数値は、計算の対象者によって大きく異なります。対象とする患者さんが、来院したすべての方なのか、入院した方なのか、それとも手術を行った方だけなのか。そのような対象者の選び方によって、生存率は大きく変わります。

例えば「沈黙の臓器」と呼ばれる膵臓(すいぞう)に発生する膵臓がんは、生存率の低い疾患です。来院した方すべてを対象にした場合、100名のうち手術できる方は30名ほどで、最終的に手術でがんを切除できるのは25名ほどです。その25名だけを対象にした5年生存率はおよそ10名で、40%となります。一方、来院した方100名を対象にした場合、5年生存率は10%になります。

 

生存率の図

このように、生存率のパーセンテージは対象者(分母)によってその数値が大きく変化します。そのため、単純に数値だけを見るのではなく「その調査が誰を対象にして行われたのか」を知る必要があります。

もう1つの視点として、手術の難しさや、その病院が治療に積極的であるかを知ることも重要です。高難易度の手術を必要とする疾患は、病院によって「手術するか・しないか」の判断に大きな差が出ます。難しい手術を避け、治療のたやすい疾患ばかりを治療する病院であれば、必然的にその病院における該当疾患の生存率は高くなります。

一方で、高難易度の手術にも挑戦的に取り組み、重篤な患者さんを積極的に受け入れている病院もあります。一見してわかる「5年生存率」の数値だけではなく、その背景にある事実をきちんと知った上で、病院を選ぶことが大切です。

がんの場所や転移の有無、進行度により治療はそのケースごとに異なりますが、手術で癌を取りきらなければ治らないので、基本は外科手術です。もちろん外科手術も万能ではないので、手術の後に抗癌剤治療を追加して行う場合もあります(これを補助化学療法と言います)。それぞれの疾患について、知識と経験を豊富に持つ専門医とよく相談の上、どのような治療をしていくか慎重に判断することをおすすめします。

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