概要
低栄養(栄養失調)とは、体に必要な栄養素やエネルギーを十分に摂取できていない状態のことを指します。
原因は極端に偏った食生活やダイエット、栄養素の吸収が十分にできなくなる病気、手術後やがんなどのようにエネルギーの摂取量が大幅に増加する病気などです。低栄養は高齢者によくみられますが、病気が原因の場合は若年者が低栄養になることもあります。
低栄養に陥ると、体脂肪量と筋肉量の減少によって体重が落ちるだけでなく、皮膚の乾燥や弾力性の低下など“見た目”に大きな変化が生じます。また、筋力が落ちることで活動性が低下し、疲れやすさ、気分の変調、無気力感など精神状態にも影響を与えます。
女性の場合は月経周期の乱れが生じることがあります。また、免疫力の低下によって感染症にかかりやすくなり、長期間にわたって低栄養の状態が続くと肝臓や心臓の機能が低下して命を落とすこともあります。
低栄養に対する主な治療法は栄養素の補給ですが、病気が原因となっている場合はその治療を行っていくことも大切です。
原因
低栄養は、生きていくために必要な栄養素やエネルギーが不足した状態のことです。
世界的に見ると発展途上国では食物の入手が困難なため、物理的に十分な食事が確保できなくなることが主な原因となります。しかし、日本ではこのようなケースは少なく、多くは極端に偏った食事やダイエットなどのほか、栄養の吸収がうまく行えなくなる消化管の病気、吐き気や食欲減退を引き起こす薬の副作用、手術後やがんなどのように体内でのエネルギー消費量が大幅に増える病気などが原因となるケースがほとんどです。
また、特別な原因がない場合でも、高齢者は食事量の減少やエネルギーが高い食事を避ける傾向にあることなどから低栄養になりやすいとされています。
症状
低栄養は体脂肪量と筋肉量の減少による体重低下を引き起こします。
また、皮膚や頭髪を健康的な状態に維持するたんぱく質やビタミン類などが不足するため、乾燥や冷感などを引き起こし、抜け毛が増えやすくなります。さらに、低栄養は筋力低下も引き起こし、活動性低下の原因になります。その結果、高齢者ではサルコペニアや骨粗鬆症を加速させる原因となり、転倒や骨折などのリスクも高まります。
また、低栄養は体の免疫力を担う白血球を減少させることも分かっており、感染症にかかるリスクも高くなるとされています。長期間このような低栄養状態が続くと、次第に肝臓や心臓の機能が低下していくため、命を落とすケースも少なくありません。
加えて、低栄養は身体的な変調だけでなく精神的な変調をきたすのも特徴の1つです。具体的には、疲れやすさ、無気力、怒りっぽさなどの症状が現れることが多く、女性ではホルモンバランスの変化が起こることで月経不順が起こり、イライラ感などが強くなることもあります。
検査・診断
低栄養が疑われる場合は、次のような栄養評価や検査が行われます。
栄養評価
体重、体格指数(BMI)、体重減少率、筋肉量、食事摂取量、炎症などから低栄養かどうかを評価します。
画像検査
低栄養は上述したようにがんや腸の病気などによって引き起こされることもあるため、何らかの病気の関与が疑われるときはX線、CT、MRIなどによる画像検査を行うことがあります。
治療
低栄養に対する第一の治療は必要な栄養素やエネルギーを補給することです。口から飲食物を摂取できる場合は口からの摂取がすすめられますが、摂食嚥下障害などで口から十分な摂取ができない場合は胃に通した管(チューブ)から流動食を補給したり、中心静脈にカテーテルを挿入して高エネルギー・高栄養の点滴をしたりすることもあります。
また、低栄養の根本的な原因となっている病気がある場合は、それらの治療を行うことも大切です。
セルフケア
低栄養を予防するには、極端に偏った食事やダイエットを避けて体に必要な栄養素とエネルギーをしっかり取ることが大切です。
また、低栄養を引き起こし得る病気がある場合は、それらの治療を行う必要があります。なかには自分では気付かないような病気が潜んでいることもあるため、思い当たる食生活の変化などがないにもかかわらず、6か月で2kg以上の体重減少を認めるときは早めに医師に相談しましょう。
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