大腸がんとは大腸の粘膜にできる悪性腫瘍で、便がたまりやすい肛門近くのS状結腸や直腸に発生しやすいことが知られています。
日本では年々罹患者数が増加しており、2017年の統計ではがんの中でもっとも罹患者数が多く、2018年の死亡者数も男女合わせて全がん中2位となっています。早期に発見されれば予後はよいため、早期診断・治療が重要となります。
本記事では、大腸がんの症状から検診・検査まで解説します。
大腸がんは早期の段階ではほとんど自覚症状はありません。しかしながら、病気が進行するにしたがって症状がみられるようになります。
主な症状としては腹部膨満感や腹痛、便秘などが挙げられます。大腸がんからの出血を伴うようになると、血便(便に血液が混じること)や貧血などがみられます。
そのほかにも便が細くなったり、残便感があったりするなどの症状がみられることがあります。血便は痔などの肛門疾患でもみられますが、自己判断をして放置すると大腸がんの発見が遅れることもあるので、症状がある場合には医療機関を受診するようにしましょう。
また、肺や肝臓に転移した腫瘍がきっかけとなり発見されることもあります。
大腸がん検診は40歳以上の健常者が対象となる検診で、早期発見のきっかけとなるため毎年定期的に検診を受けることが推奨されています。検診の内容は問診と便潜血検査が一般的なものになります。
便潜血検査とは、2日分の便を採取して便に血液が混じっていないか検出する検査方法です。この検査では便に混じった目に見えない血液も検出することができます。
大腸がん検診で異常を指摘された場合には内視鏡検査で確定診断を行い、注腸造影検査・CT検査で部位や広がりを調べることが一般的な精密検査の流れになります。潜血陽性にはがん以外の原因もありますが、大腸がんを見逃さないように自己判断せずに受診するようにしましょう。
大腸がんと確定診断するためには、内視鏡検査による生検が必要になります。
内視鏡と呼ばれるカメラを肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸の全部位を観察する検査です。検査前には便を押し流し大腸をきれいにする前処置が必要です。がんやポリープなどの病変の有無を確認できるほか、組織を採取することもできます。採取した組織を顕微鏡で観察し病理診断することで大腸がんと確定診断されます。
内視鏡検査とともに行う一般的な精密検査が注腸造影検査とCT検査です。注腸造影検査は肛門から造影剤(バリウム)を注入し、空気で大腸を膨らませて撮影します。内視鏡検査とは異なる方法を用いて、便を押し流し大腸をきれいにする前処置が必要です。
一方CT検査は、わずかな放射線被ばくの問題はありますが、数分間検査台に横になっているだけで基本的には苦痛を伴わない検査です。腎機能異常や喘息、アレルギー等の問題で使用が難しい方を除き、静脈注射用の造影剤(ヨード)を併用して撮影します。肛門からガスを注入し大腸を拡張させ撮影することもあります。これらの検査を内視鏡検査を併用して行うことで、がんやポリープなどの病変の見落としを防ぎます。
大腸がんは近年増加傾向にある悪性腫瘍で、その多くは検診での異常指摘か何らかの症状(血便・貧血など)がきっかけとなって発見されます。
40歳以上の人は毎年検診を受けることが推奨されており、検診では問診・便潜血検査を行います。異常が指摘された場合は精密検査を受ける必要がありますが、早期診断・治療が大腸がんの予後を大きく左右するので、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
また、症状がある場合には内科(特に消化器内科)を受診するとよいでしょう。
東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 客員教授
東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 客員教授
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医日本消化器病学会 消化器病専門医・消化器病指導医日本消化管学会 胃腸科専門医
1970年生まれ。1995年、東京大学医学部を卒業後、東京大医学部附属病院研修医。1996年より、日立製作所日立総合病院研修医、国立がんセンター中央病院消化器内科レジデント等を経て2005年、東京大学医学部附属病院消化器内科助手(助教)。2009年、東京大学医学部附属病院光学医療診療部部長・准教授、2019年、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、2021年東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、現職に至る。内視鏡機器や処置具の開発から携わることで患者の負担を減らし、かつ、早期発見・的確な診断、治療が行える方法の研究を続ける。
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