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大腸がんの手術に関するQ&A【後編】~手術時間や入院期間はどのくらい? 手術後の生活で気を付けるべきことは?~

大腸がんの手術に関するQ&A【後編】~手術時間や入院期間はどのくらい? 手術後の生活で気を付けるべきことは?~
河田 健二 先生

倉敷中央病院 外科 部長

河田 健二 先生

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開腹手術・腹腔鏡下手術()・ロボット支援手術のうち、一般的にもっとも手術時間が長くかかりやすいのはロボット支援手術です。しかし、実際の患者さんの状態(体型や腫瘍(しゅよう)の部位など)などによっても異なりますので、一概にはいえません。また、患者さんの負担する費用に関してはアプローチ方法で大きな差が出ることはあまりありません。

入院期間はもっとも体に負担のかかりやすい開腹手術が長くなりがちで、それに比べて腹腔鏡下手術やロボット支援下手術は短いことが一般的です。

大腸がん手術特有の注意点として、手術前は消化に負担のかかる食べ物を控え、低残渣食(ていざんさしょく)を食べることが挙げられます。具体的には、出血や腸閉塞(ちょうへいそく)などのリスクなども考えると、消化吸収されない食物繊維や消化に負荷がかかるお肉などを食べることは控えてください。

気になることがあれば担当医に相談することはもちろん、担当医には相談しにくいことなどがあれば、医療機関の“患者相談窓口”に相談することを検討しましょう。

また、担当医以外の医師に治療などの意見を聞く“セカンド・オピニオン”を希望される場合には、まずは担当医に申し出るようにしましょう。“別の医師の話を聞きに行きたいと言ったら、担当医が不快に思うのではないか”と心配する患者さんもいますが、医師としては患者さんに納得して治療を受けてもらうことが何よりなので、不快になることはありません。悩んでいることがあれば抱え込まず、相談してみるとよいでしょう。

術後の合併症としてよく見られるのは、縫合不全や排尿・排便障害です。どちらも特に直腸がんの手術で起こりやすい合併症として知られています。

縫合不全とは、切除した腸管と腸管のつなぎ目から便が漏れてしまうことをいいます。お腹の中に便が漏れると腹膜炎を起こし、発熱や腹痛の症状が現れます。近年は前述のICGの技術を用い、近赤外線カメラによって血流を見ながら縫合することができるため、以前と比べると縫合不全が生じにくくなってきています。

排尿・排便障害は手術によって骨盤内の神経が傷つくことで生じる合併症です。尿意を感じなくなったり、排便が不規則になったりすることがあります。こちらも近年は腹腔鏡下手術やロボット支援下手術で細かい作業ができるようになったため、生じる頻度は少なくなってきています。

手術後は食生活に注意し、体重を増やしすぎないようにしましょう。大腸がんの手術後は手術前と比べて食欲が増し、体重が増加してしまう方もいます。術後に急激に体重が増えると、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)()ヘルニア*が生じやすくなりますので、栄養吸収がよいものを少しずつ食べるようにしましょう。

また、手術後は再発の可能性も加味し最低でも5年間は経過観察のために通院することになります。通院の頻度はステージによっても異なりますが、一般的にはII期であれば半年に1回ほど、III期であれば3か月に1回ほどです。

*腹壁瘢痕ヘルニア:手術の傷部分の筋膜が裂けて腸が飛び出し、お腹の一部が膨らんでしまうこと。

大腸がん治療ガイドライン2022年版によれば、手術後の再発率はI期で5.7%、II期で15.0%、III期で31.8%といわれています。

大腸がんの5年生存率は全ステージを合わせると72.2~73.0%といわれています。各ステージ別に見ると、I期では94.5~95.7%、II期では87.8~89.2%、III期では75.8~77.3%、IV期では17.8~19.1%です。

数字だけを見ると手術のできないIV期の生存率が大きく下がっていますが、近年は抗がん剤治療や分子標的薬による治療の進歩などによって、IV期の患者さんの平均生存期間が延びてきています。今後、免疫チェックポイント阻害薬なども加われば、手術が適応でない患者さんもさらに長く生存できるようになるのではないでしょうか。

前述のとおり、大腸がん領域では腹腔鏡下手術やロボット支援下手術といった低侵襲(ていしんしゅう)アプローチの発展、ICGをはじめとするナビゲーション・テクノロジーの発展などさまざまな進歩が見受けられます。ロボット支援手術についていえば、本邦では2018年に“直腸切除・切断術”が、2022年に“結腸悪性腫瘍手術”が保険適用となり、全ての大腸がんの患者さんに保険適用が拡大されました。

これに加え、近年は手術治療、薬物療法、放射線治療を組み合わせた“集学的治療”が盛んに行われています。I~II期の比較的早期のがんであれば手術治療のみで根治がかなう場合もありますが、III期以降の進行がんでは複数の治療を組み合わせることによって治療成績が上がることが分かってきています。

特に手術前に放射線化学療法と全身化学療法を組み合わせるTNT治療は集学的治療の代表例であり、1/4~1/3くらいの患者さんでは切除した組織にがん細胞が認められなくなります。そのため、患者さんによってはすぐに手術を行わずに慎重に経過をみる治療(Watch and Wait療法)が生活の質の低下を最小限にする治療として、最近では世界的に注目されています。

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