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急性腹症とは?原因として考えられる九つの病気

急性腹症とは?原因として考えられる九つの病気
藤城 光弘 先生

東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 客員教授

藤城 光弘 先生

今井 則博 先生

名古屋大学医学部附属病院 光学医療診療部 病院助教

今井 則博 先生

目次
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突然おなかが痛くなることを、急性(きゅうせい)腹症(ふくしょう)と呼びます。この急性腹症には緊急手術を含む迅速な対応が必要となる重篤な病気が隠れていることもあります。ここでは急性腹症の原因としてよく確認される病気を、おなかの痛みが生じるシーン別にご紹介します。

虫垂とは盲腸から細く伸びる器官で、硬い便や食事の残渣などにより虫垂の中が詰まり、感染を起こすことを急性虫垂炎といいます。急性腹症の原因として多く認められる病気のひとつで、一般に“もうちょう”と呼ばれることもあります。初期には吐き気や、食欲低下とともにみぞおちの痛みが出ることがあり、数時間後に右下のおなかの痛みに移動することがあります。

さまざまな原因で腸の内で消化物の通過が悪くなった状態のことを腸閉塞といいます。おなかの手術をしたことがある方に起こりやすく、おなかの張りを伴います。大腸がんが原因となることもあり、注意が必要です。中でも腸管の血流障害を伴うものは、腸管壊死(えし)や穴が開く穿孔(せんこう)の危険があり緊急手術が必要となることもあります。

ウイルスや細菌などが胃や腸に感染をおこすことを急性胃腸炎感染性胃腸炎)といいます。原因となる病原体はさまざまで、カキなどの二枚貝を生で食べた際に感染するノロウイルスや、生の鶏肉を食べた際に感染するカンピロバクター菌などが知られています。

下痢が始まる前の差し込むようなおなかの痛みがでることが多く、病原体により症状は異なります。

脂肪分が多く含まれる食事をしてから数時間後に生じた腹痛は、胆石症の可能性があります。胆石症が原因の腹痛は、右上のおなかや、みぞおちに生じるという特徴があります。痛みは非常に強く、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、胆石が胆汁の出口を塞ぎ、胆嚢や胆管内で細菌が増殖すること炎症を引き起こすことを急性胆嚢炎、急性胆管炎といいます。右上のおなかに強い痛みとともに発熱や背中の痛みを伴うことが多く、ひどくなると黄疸が現れます。また、急激に悪化して腹膜炎に進行することもあります。

消化管の壁が一部分のみ袋状に外側へとび出た状態のことを憩室(けいしつ)といい、大腸によく見られます。多くの憩室が無症状ですが、内部が便などで満たされ、細菌が増殖することで炎症を引き起こすことを大腸憩室炎といいます。中高年に多く認められ、右下のおなかが痛くなることもあるため、急性虫垂炎と区別することが大切です。

食後の腹痛は胃潰瘍の代表的な症状といわれており、吐き気や嘔吐が伴うこともあります。

十二指腸とは胃と小腸をつなぐ器官のことで、この十二指腸にできた潰瘍のことを十二指腸潰瘍といいます。空腹時におなかが痛くなるのは、十二指腸潰瘍の典型的な症状のひとつです。潰瘍がひどくなると、粘膜が大きくえぐれて出血し、吐血や 黒色便を引き起こすことがあります。また出血がない場合も、潰瘍が深くなると胃や十二指腸に穴が開く穿孔(せんこう)へ進行することがあり注意が必要です。

膵臓は膵液と呼ばれる消化酵素を分泌しています。急性膵炎は、膵液によって膵臓および周囲の臓器が消化されることにより炎症が生じる病気です。急性膵炎は、食後や飲酒後に胃痛のような症状が現れ、時間の経過とともに鋭く刺すような痛みが急激に広がり、やがて立っていられないほど激しいものになります。高熱や嘔吐などを伴うことが多く、重症化すると意識障害やショック状態を引き起こして死に至ることもある危険な病気です。

腎臓や尿管といった尿の通り道に結石が詰まった状態を尿路結石といい、結石が狭い尿管内を通るときに激しい痛みを引き起こし、血尿を伴うこともあります。その痛みの激しさは、ヒトが経験する痛みの度合いのなかでもトップクラスといわれています。また、結石によってダメージを受けた部位に細菌感染が生じると、腎臓まで波及して腎盂(じんう)腎炎(じんえん)を引き起こすこともあります。

女性における急性腹症の原因として、産婦人科疾患も多く認められます。なかには骨盤内炎症性疾患卵巣茎捻転子宮外妊娠卵巣出血など、迅速な治療が必要な病気の可能性もあるため注意が必要です。

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