突然おなかが痛くなることを、急性腹症と呼びます。この急性腹症には緊急手術を含む迅速な対応が必要となる重篤な病気が隠れていることもあります。ここでは急性腹症の原因としてよく確認される病気を、おなかの痛みが生じるシーン別にご紹介します。
虫垂とは盲腸から細く伸びる器官で、硬い便や食事の残渣などにより虫垂の中が詰まり、感染を起こすことを急性虫垂炎といいます。急性腹症の原因として多く認められる病気のひとつで、一般に“もうちょう”と呼ばれることもあります。初期には吐き気や、食欲低下とともにみぞおちの痛みが出ることがあり、数時間後に右下のおなかの痛みに移動することがあります。
さまざまな原因で腸の内で消化物の通過が悪くなった状態のことを腸閉塞といいます。おなかの手術をしたことがある方に起こりやすく、おなかの張りを伴います。大腸がんが原因となることもあり、注意が必要です。中でも腸管の血流障害を伴うものは、腸管壊死や穴が開く穿孔の危険があり緊急手術が必要となることもあります。
ウイルスや細菌などが胃や腸に感染をおこすことを急性胃腸炎(感染性胃腸炎)といいます。原因となる病原体はさまざまで、カキなどの二枚貝を生で食べた際に感染するノロウイルスや、生の鶏肉を食べた際に感染するカンピロバクター菌などが知られています。
下痢が始まる前の差し込むようなおなかの痛みがでることが多く、病原体により症状は異なります。
脂肪分が多く含まれる食事をしてから数時間後に生じた腹痛は、胆石症の可能性があります。胆石症が原因の腹痛は、右上のおなかや、みぞおちに生じるという特徴があります。痛みは非常に強く、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、胆石が胆汁の出口を塞ぎ、胆嚢や胆管内で細菌が増殖すること炎症を引き起こすことを急性胆嚢炎、急性胆管炎といいます。右上のおなかに強い痛みとともに発熱や背中の痛みを伴うことが多く、ひどくなると黄疸が現れます。また、急激に悪化して腹膜炎に進行することもあります。
消化管の壁が一部分のみ袋状に外側へとび出た状態のことを憩室といい、大腸によく見られます。多くの憩室が無症状ですが、内部が便などで満たされ、細菌が増殖することで炎症を引き起こすことを大腸憩室炎といいます。中高年に多く認められ、右下のおなかが痛くなることもあるため、急性虫垂炎と区別することが大切です。
食後の腹痛は胃潰瘍の代表的な症状といわれており、吐き気や嘔吐が伴うこともあります。
十二指腸とは胃と小腸をつなぐ器官のことで、この十二指腸にできた潰瘍のことを十二指腸潰瘍といいます。空腹時におなかが痛くなるのは、十二指腸潰瘍の典型的な症状のひとつです。潰瘍がひどくなると、粘膜が大きくえぐれて出血し、吐血や 黒色便を引き起こすことがあります。また出血がない場合も、潰瘍が深くなると胃や十二指腸に穴が開く穿孔へ進行することがあり注意が必要です。
膵臓は膵液と呼ばれる消化酵素を分泌しています。急性膵炎は、膵液によって膵臓および周囲の臓器が消化されることにより炎症が生じる病気です。急性膵炎は、食後や飲酒後に胃痛のような症状が現れ、時間の経過とともに鋭く刺すような痛みが急激に広がり、やがて立っていられないほど激しいものになります。高熱や嘔吐などを伴うことが多く、重症化すると意識障害やショック状態を引き起こして死に至ることもある危険な病気です。
腎臓や尿管といった尿の通り道に結石が詰まった状態を尿路結石といい、結石が狭い尿管内を通るときに激しい痛みを引き起こし、血尿を伴うこともあります。その痛みの激しさは、ヒトが経験する痛みの度合いのなかでもトップクラスといわれています。また、結石によってダメージを受けた部位に細菌感染が生じると、腎臓まで波及して腎盂腎炎を引き起こすこともあります。
女性における急性腹症の原因として、産婦人科疾患も多く認められます。なかには骨盤内炎症性疾患、卵巣茎捻転、子宮外妊娠や卵巣出血など、迅速な治療が必要な病気の可能性もあるため注意が必要です。
東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 客員教授
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医日本消化器病学会 消化器病専門医・消化器病指導医日本消化管学会 胃腸科専門医
1970年生まれ。1995年、東京大学医学部を卒業後、東京大医学部附属病院研修医。1996年より、日立製作所日立総合病院研修医、国立がんセンター中央病院消化器内科レジデント等を経て2005年、東京大学医学部附属病院消化器内科助手(助教)。2009年、東京大学医学部附属病院光学医療診療部部長・准教授、2019年、名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、2021年東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、現職に至る。内視鏡機器や処置具の開発から携わることで患者の負担を減らし、かつ、早期発見・的確な診断、治療が行える方法の研究を続ける。
藤城 光弘 先生の所属医療機関
今井 則博 先生の所属医療機関
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大腸菌の尿道炎
先日泌尿器科に行って尿検査をしたら、大腸菌で尿道炎になっている、と言われました。ただ大腸菌は自然治癒するので、何もしなくても大丈夫と言われました。少し尿道に違和感ありますが、 本当に何もしなくても完治しますか? 大腸菌にならないために注意することは何ですか?
発熱、およびお尻や足の痛みについて
先週の火曜日あたり、お尻が痛いと言いだし椅子で打ったのだと思うのですが、食事中も途中で痛みだしたり、寝ている時もたまに痛いと言って気になっていました。今週の月曜(6日後)保育園から連絡があり、お尻が痛く座れず泣いている。発熱もあり(38℃)との事でお迎え。翌日形成外科にてお尻レントゲン撮ってもらったのですが異常なしで様子見とのことでした。帰宅後も痛みがひどそうで翌日もう一度受診したのですが変わらず。発熱の方は中々治らなず、中耳炎によくなるので今日(発熱から4日目)耳鼻科へ行ったところ中耳炎にはなっておらず、カロナールだけもらい様子見でした。帰り道で足も痛いと言うので(足が痛いも日常でもたまに言う)変だなと思いました。 歩いていてもよくすぐに抱っこというところがあるので、足が痛いのか?疲れるのか? 色々気になって、もしも癌などだったらと日々調べており、当てはまる節があったのでこちらで相談させていただきました。見解をお聞きしたいのと、かかりつけの小児科での受診で問題ないのか教えて頂きたいです。
コロナ感染後本調子が戻ってこない
次男が、先週コロナ感染(高熱、中耳炎併発、腹痛、食欲がない、味覚障害(味が濃く感じる))し、今は症状落ち着いたのですが、 •元々朝は強い方ではないのですが、起こそうとしてもなかなか起きず、起きても学校に行こうとせず、それでも何とか送り出しています。逆に日中は普通に元気に過ごし、夜はなかなか寝ず、23時を過ぎることもあります。 •食欲がないのが続いています。コロナ感染時は、お腹空いているのに味覚異常で食べられないことを本人気にしていました。 •数年楽しく続けて行ってた生物教室も行きたくないと言い出しています。(学習塾は楽しいからなのか、引き続き通っています) •普段は明るくおしゃべりする子なのですが、最近は大人しく、目がちょっとうつろなのが気になります。 •妻が専業主婦から最近仕事始めて不在になりがちなのと、私は在宅ワークですが仕事でテンパっててあまり構ってあげることができていないです。 •私自身、仕事が最近うまくいかず気持ちが不安定になりつつあって、それが影響してるのかもと思ったりもしています。 まだ抗生剤を服用してることもあり、コロナ後遺症の影響なのかもしれないですが、 息子の状況がコロナ感染前の状態になかなか戻らず、親として心配している次第です。
下痢と右下腹部の痛みの症状が有ります。
今朝から酷い下痢が有り、市販薬で少し治まっていますが、夕方頃から右下腹部(おへその右下あたり)が、つっぱるように痛むようになりました。 発熱はは有りませんが、軽い吐き気が有ります。 因みに、5年前に急性虫垂炎と診断され、点滴で散らしてもらったことが有りますが、再発することはあるのでしょうか。 また、何科を受診したら良いのでしょうか。 何卒宜しくお願いいたします。
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