インタビュー

胆石症の治療―手術が根本的に治す治療となる

胆石症の治療―手術が根本的に治す治療となる
乾 和郎 先生

山下病院 名誉院長

乾 和郎 先生

記事1『胆石症の種類や症状とは―胆石が見つかると手術は必須?』では、胆石症の原因や症状などについてお伝えしました。胆石症は痛みなどを伴わない無症状のパターンであることも多く、胆石がみつかったからといって全例で治療を実施するわけではありません。では、どのような場合に治療の適応となり、どのような治療法があるのでしょうか。引き続き、山下病院 名誉院長 乾 和郎(いぬい かずお)先生にお話しをうかがいます。

はじめに、検診などで胆石がみつかったからといって必ず治療をしなければならないわけではありません。胆石が小さく、痛みなどの症状が特にない場合には経過観察にとどめます。年1回の検査を実施して、胆石が増えていないか、胆のうの壁が厚くなっていないかなどを確認します。

ですから、胆石症であるからといって過剰な心配は要りません。しかしながら、以下の条件のいずれかに該当する場合には治療が必要です。

  • 痛みなどの症状がある(重い発作や胆のう炎胆管炎のおそれがあるため)
  • 胆のうがんのおそれがある(ポリープがある、胆のうの壁が厚い)
  • 胆のうの機能の低下(石が充満していて収縮機能が悪いなど)

胆石症では、手術が根治治療です。「なかの胆石だけ取り除けばいいのではないか」と思われるかもしれませんが、胆石だけ取り除いても、胆石をつくる胆のうを残したままでは再発のおそれがあるためです。

そこで一般的に行われる手術が、腹腔鏡を用いた「腹腔鏡下胆のう摘出術」です。

腹腔鏡下胆のう摘出術ではお腹に3か所の穴を開け、それぞれの穴から器具を挿入し、胆のうを摘出します。小さな穴で済むため、大きな切開創が残らず、傷も目立ちません。

術後の入院期間は1週間で、回復の早い方では3〜4日で退院できます。

しかし、上腹部に癒着がみられる場合は途中から開腹手術に切り替えることがあります。

胆管結石では、詰まった胆石を除去するための手術を行います。まずは胆管に器具を挿入するため、十二指腸乳頭という胆管の出口を切開やバルーンを使い広げます。そこからバスケット鉗子という先端がバスケット状になった器具を入れ、胆石を掴んでバスケット内へ取り込みます(内視鏡的結石除去術)。

胆管結石
乾和郎先生よりご提供

胆管が詰まり胆汁が溜まっている際には、胆汁を排出するために内視鏡的経鼻胆管ドレナージを実施します。鼻から胆管へチューブを挿入し、チューブを通して溜まった胆汁を体外へ出します。

胆のうを摘出すると、肝臓で胆汁を濃縮することができなくなり胆汁の消化能力が低下します。そのため、特に脂っこい食事をとった後に十分に消化できず、下痢などを起こすことがあります。これを胆のう摘出後症候群といいます。

胆のう摘出後症候群は胆のうを摘出した2〜3%に起こる比較的まれなものです。数年経てば体が順応して症状は消失します。

そのほかに、手術のリスクとして胆管や周辺臓器の損傷や癒着、出血などが考えられます。

胆石症治療の第一選択は手術ですが、諸事情により手術を実施できない場合には内科的治療を行います。しかし内科的治療は多くの胆石の原因となっている胆のうを摘出しないため、治療をやめると再発のおそれがあります。

体外から衝撃波をあて、胆石を砕きます。破砕された胆石は自然に体外へ排泄されます。副作用はほとんどありません。

コレステロール結石では薬で溶かすことで治療できる場合があります。胆汁酸の一種であるウルソデオキシコール酸やケノデオキシコール酸を用いて胆石を溶かします。

しかしこの治療は1回のみ薬を服用しただけでは効果はありません。半年程度は薬を飲み続ける必要があります。

胆石溶解法の適応は、1.コレステロール結石であること 2.直径15mm未満の結石であることです。

この治療は課題もあります。それは100%胆石を溶解できるわけではないという点です。半年間の治療における消失率は24~38%であるといわれています。

胆石症の根治には手術が一番です。腹腔鏡を用いた胆のう摘出術が普及したことで今までよりもより安全に、そして患者さんの体の負担を少なくして治療が行えるようになってきています。

仮に手術が受けられない場合には、体外衝撃波による破砕や薬による溶解療法がありますが、これらは一定の確率で再発の可能性があります。

医師から胆石症の治療を勧められた方は、胆石症やその治療法についてよく理解をし、主治医と相談しながら治療を行ってください。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。
この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

    実績のある医師

    周辺で胆石症の実績がある医師

    東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科

    しまづ もとひで
    島津先生の医療記事

    1

    内科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、脳神経内科、老年内科、頭頸部外科、総合診療科、病理診断科

    東京都八王子市館町1163

    JR中央本線(東京~塩尻)「高尾」南口 京王バス 医療センター経由館ケ丘団地行き 医療センター下車  京王電鉄高尾線も利用可能 バス7分、JR横浜線「八王子みなみ野」無料シャトルバス運行 バス

    国立病院機構 東京病院 病棟診療部長

    なかやま ひろし

    国立病院機構 東京病院―患者さんの立場に立ち地域に根差したがん診療を提供

    東京都清瀬市の医療を支える国立病院機構 東京病院による肺がん・大腸がん・胃がんをテーマにした特集です。

    内科、リウマチ科、呼吸器外科、消化器外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、感染症内科、消化器内科、脳神経内科

    東京都清瀬市竹丘3丁目1-1

    西武池袋線「清瀬」南口 久米川駅行・所沢駅東口行 東京病院北下車  下里団地行・滝山営業所行・花小金井駅行 東京病院玄関前下車 バス5分、JR武蔵野線「新秋津」 車10分、西武新宿線「久米川」北口 清瀬駅南口行 東京病院北下車 バス

    ALOHA外科クリニック 院長

    にいや たかし

    消化器外科の日帰り手術を専門に、チーム医療でサポート

    ALOHA外科クリニック(東京都品川区西五反田4丁目27-10:東急目黒線「不動前」徒歩4分)の病院ページ。

    Web予約対応

    外科、消化器外科、緩和ケア内科、在宅診療科

    東京都品川区西五反田4丁目27-10

    東急目黒線「不動前」 徒歩4分

    関連の医療相談が10件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「胆石症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。

    メディカルノートをアプリで使おう

    iPhone版

    App Storeからダウンロード"
    Qr iphone

    Android版

    Google PLayで手に入れよう
    Qr android
    Img app