胆石症は、主にコレステロールなどを主成分とする結石(石)が胆のうや胆管に生じる疾患です。検診を行った10人から20人に1人程度の割合で発見されるメジャーなものです。しかしながら胆石があってもまったく無症状であるものから、強いみぞおちの痛み(胆石発作)など激しい症状を呈することがあります。胆石症の原因や種類、症状、検査について、山下病院 名誉院長 乾 和郎先生にお話しいただきました。
胆石症とは、胆のうや胆管に結石ができて、突然の激しい痛み(いわゆる胆石発作)や黄疸(おうだん)などの症状を呈する疾患です。胆石の多くは胆のうという、消化液の一種である胆汁を溜めておく袋状の臓器で発生します。胆汁をつくる肝臓と、十二指腸をつなぐ胆管という部分に胆石ができることがあります。
数は1個から多いときは数十個から数百個と、人により異なります。
胆石症は高齢化などから年々増加傾向にあり、検診では受診者の5〜10%程度に胆石が発見されています。
胆石は胆汁内に含まれる物質のバランスが崩れることにより発生します。胆汁はコレステロール、レシチン、胆汁酸、ビリルビンなどの物質で構成され、これらの成分のバランスが保たれていることで通常は液状です。
しかし、主に高脂肪食によって胆汁内のコレステロールの割合が増加すると、胆汁内のコレステロールが溶けきれずに固まってしまいます。これが胆石(コレステロール結石)です。胆石症の患者さんはこのコレステロール結石がほとんどです。
そのほかにも胆汁が十二指腸から胆管に逆流し大腸菌に感染することで発生するビリルビンカルシウム結石、まれに溶血(ヘモグロビンが赤血球外に出る現象)や肝障害が誘因となり発生する黒色石もあります。
胆石症を発症しやすい人の特徴として、5Fと呼ばれるものがあります。
しかしながら近年では食生活の変化などから男性の患者さんが増えてきているように感じます。そのほか、もともと脂質代謝に異常がある方(高コレステロール血症や高脂血症)、妊娠、急激なダイエットなども胆石症を誘発することがあるといわれています。
胆石症の種類は結石ができる場所により名称が異なります。
胆のうに結石が生じる胆のう結石が、胆石症の患者さんで最も多いです。胆のうは肝臓でできた胆汁を濃縮する場所で、胆のう内に一定の時間とどまっているため結石ができやすい環境にあります。
結石が胆管にある状態を胆管結石といいます。多くはビリルビンカルシウム結石ですが、胆のうでできた結石が何らかの拍子に胆管内に転げ落ち、詰まってしまうことで起こることもあります。胆管結石が起きると胆汁の流れが滞ってしまうことから黄疸が生じたり、胆管が結石を押し出そうとぜん動して激しい痛みが生じたりすることがあります。
まれですが、肝臓内にある胆管に結石ができることがあります。
結石が胆のう内にある状態では、痛みを感じることはあまりありません。しかし胆のう結石であっても、胆管部につながる胆のうの入り口の部分に結石が詰まってしまうと、胆のうがけいれんして痛みが生じます。胆石によって激しい痛みが生じる現象を「胆石発作」と呼びます。
この痛みは食後に起こることが多く、半数以上の人はみぞおちに痛みを訴えます。しかしながら、人によっては右上腹部や右肩の痛みを訴える場合もあります。
痛みが強いと、人によっては吐き気や、そのまま嘔吐してしまうことがあります。
胆汁は消化液です。胆石症によって胆のう内に多くの結石が溜まり濃縮された胆汁を産生できなくなったり、胆管が詰まって十二指腸へ胆汁が流れなくなったりすると消化不良を引き起こすことがあります。その結果、下痢となる場合があります。
胆のうの入り口や胆管が塞がってそこに菌が増えると、感染を起こします。胆のうが炎症を起こした状態を胆のう炎、胆管では胆管炎と呼ばれます。胆のう炎や胆管炎を発症すると、発熱や黄疸、悪寒(寒気)がします。
胆のう炎、胆管炎を発症したときは早期の治療が必要です。すぐに医療機関を受診してください。
確かに、胆のうがんの患者さんに胆石がある割合は高いです。胆のうがんの患者さんの40〜75%は胆のうがんと同時に胆石もあります。しかし、胆石がみつかったからといって必ず胆のうがんのリスクがあるかというとそうではありません。特に無症状の胆石症の患者さんでは、その後の経過観察でも胆のうがんが生じなかったケースが多々あります。
しかしながら、以下にあてはまる方は将来、胆のうがんになるリスクがあるといわれています。
今のところは胆石と胆のうがんの因果関係ははっきりと認められませんが、たとえ無症状であっても経過観察によって定期的に胆のうの様子を観察しておくことは大切です。具体的には1年に1回の検診でよいでしょう。
胆石があるかどうかは、超音波検査でみることができます。エコーでみると、胆石は白っぽく写ります。
胆管結石の場合は超音波検査では診断が困難な場合があるため、CTを用いることがあります。コレステロールが主成分のコレステロール結石は写りませんが、ビリルビンカルシウム結石はCT検査でみることができます。
手術を実施する際にはより細かく胆石の状態をみるためにMRI検査を実施します。
胆石症は無症状であれば積極的な治療を行わなくても、年に一度の検査だけで通常通りの生活を送ることができます。また、胆石がある=必ず胆のうがんになるというわけではないため、過剰に心配する必要はありません。しかしながら経過観察をしていても10〜15年経つと手術が必要になってくる場合もあるため、定期的な検査だけは継続して受けるようにしましょう。
そして胆石症の予防には、生活習慣の改善が第一です。正しい食生活と適度な運動で肥満を予防しましょう。
記事2『胆石症の治療―手術が根本的に治す治療となる』では、胆石症の治療について解説します。
山下病院 名誉院長
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