たんのうえん

胆のう炎

胆のう

目次

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概要

脂肪の分解を助ける胆汁(たんじゅう)は、肝臓で作られます。肝臓から十二指腸に胆汁を運ぶ管を胆管といいますが、胆管の途中で枝分かれする形で胆のうという袋状の臓器があります。胆のうは一時的に胆汁を蓄積するとともに、食事の際に収縮して貯めておいた胆汁を十二指腸に排出します。胆のうが細菌感染することを、急性胆のう炎と呼びます。原因となる細菌の多くは消化管に存在する「グラム陰性桿菌」です。

原因

急性胆のう炎の原因の90~95%は、胆のう結石です。胆のう結石が胆のうの出口である胆のう管に嵌頓(かんとん)(はまり込む)することで、胆汁がうっ滞します。すると胆のう内側の粘膜が障害され、炎症が起こります。ここに細菌の感染が加わると、胆のう炎を発症します。

胆のう結石を持っていて症状がない方を「無症候性胆石保有者」といいます。胆石発作(胆石が原因となって腹痛が起こること)や胆のう炎など、何らかの症状が出る確率は15.5~51%とされています。

一方、胆のう結石を伴わない急性胆のう炎(無石胆のう炎)もあり、胆のう炎の3.7~14%を占めています。無石胆のう炎は、手術を受けた方、外傷や熱傷を起こした方、長期にわたってICU(集中治療室)に滞在していた患者さん、また経静脈栄養(点滴からの栄養投与)を行っている患者さんなどが起こしやすいと指摘されています。

症状

急性胆のう炎でもっとも多くみられる症状は、右季肋部(右わき腹)の痛みです。次いで、吐き気、嘔吐があります。38℃を超えるような高熱が出る患者さんもいます。患者さんが高齢あるいは糖尿病である場合、腹痛がはっきり出ないこともあるため、注意が必要です。

検査・診断

診察

右わき腹の痛みや発熱、吐き気、嘔吐といった自覚症状に加えて、腹部の診察ではマーフィー徴候(右脇腹を手で圧迫しながら患者さんが大きく息を吸ったとき、吸気で下に降りてきた胆のうが圧迫されて痛みが強くなる所見)や、圧痛(右上腹部を押すと痛みを生じる)といった所見をみます。

血液検査

全身の炎症を反映してCRPや白血球数といった値の上昇を認めます。(診断基準には含まれませんが、AST、ALT、ALPといった肝胆道系酵素と呼ばれる値の上昇を伴うこともあります。)こうした診察での所見や、血液検査での炎症反応の上昇に加えて、以下のような画像検査での胆のう炎に特徴的な所見があれば、急性胆のう炎と診断します。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)

お腹の表面から超音波装置をあてて行う検査で、負担が少なく簡単に行えます。胆のう炎では、胆のうの腫大や壁の肥厚した様子や、胆のう結石が胆のうの出口にはまり込んでいる様子(嵌頓:かんとん)などがみられます。

腹部CT検査(造影CT検査)

CT検査では、胆のう壁の肥厚した様子、炎症に伴って胆のうの周りに液体が貯留している様子、胆のう腫大などの所見を認めます。また超音波検査で診断がつけにくい胆のう壁の穿孔(せんこう:穴が開くこと)の診断に有効とされます。

腹部MRI検査

MRI検査では、CTと同様に胆のうの腫大した様子や胆のう周囲に液体が貯留した様子を認めるとともに、胆のう内の結石の有無についての評価に有用とされています。

治療

胆嚢炎診療ガイドライン2013(TG13)に基づいて胆のう炎の診断を行うとともに、軽症、中等症、重症という3つの重症度に分類して治療を選択していきます。いずれの重症度でも、まずは食事を中止して点滴を行い、抗菌薬の投与を開始します。そのうえで、重症度に沿って治療方法を選択していきます。

軽症胆のう炎

症状が出てから72時間以内であれば、手術治療で胆嚢を摘出する(胆のう摘出術)が推奨されます。状況が許せば、腹腔鏡下で胆のう摘出術を行います。腹腔鏡での手術は、開腹での手術と比較して患者さんへの負担が少なく術後の回復も早いというメリットがあります。

手術を選択しなかった場合でも、抗生剤治療の開始から24時間経過した時点で効果が乏しいケースでは、発症から72時間以内ならば胆のう摘出術を行います。72時間以上が経過している場合や、何らかの理由で手術ができない場合には、胆のうドレナージという処置を行います。

※胆のうドレナージ:一時的に胆のうの中の膿を外に排出するための処置です。胆のうドレナージの方法には、経皮経肝胆のうドレナージ術(PTGBD:皮膚から針を刺して胆のうに管を留置して胆のう内の膿を外に出す方法)、経皮経肝胆のう胆汁吸引術(PTGBA:皮膚から針を刺して胆のう内の膿を吸引して外に出す方法)、内視鏡的経鼻胆のうドレナージ(ENGBD:内視鏡を用いて、胆のうに管を留置して鼻を通して管を外に出し胆汁を排出させる方法)があり、状況に応じて適宜選択します。

中等症胆のう炎

軽症と同じく、症状が出てから72時間以内であれば胆のう摘出の手術が推奨されます。ただし、胆のう局所の炎症がとくに強いと考える場合、早期の手術が難しいことから、直ちに胆のうドレナージを行います。このような場合も、後日に待機的な胆のう摘出術を検討します。ただし、胆のうの周りや肝臓に膿瘍をつくっていたり(胆のう周囲膿瘍や肝膿瘍)、胆のうが壊死していたり(壊疽性胆のう炎)といった重篤な状態においては、全身状態を管理しながら緊急手術を行うこともあります。

重症胆のう炎

重症胆のう炎とは、循環の障害(血圧低下など)、中枢神経の障害(意識障害など)、呼吸障害、腎機能の障害(尿が出ないなど)、血液凝固異常のいずれかを伴う場合をさし、患者さんの全身状態が著しく低下した状態です。早期の段階では手術は選択せず、胆のうドレナージを直ちに行います。胆のう結石があるケースでは、後日に待機的に胆のう摘出術を行います。重症例の頻度は、急性胆のう炎のうち1.2~6.0%とされています。なお、急性胆のう炎は胆のうがんを合併していることもあります。特に高齢者の場合、その頻度は高くなるため注意が必要です。