盲腸とも呼ばれる急性虫垂炎は、お子さんの場合は特に進行が早いため、疑わしい症状がみられたら早い段階で病院を受診することが大切です。しかし、症状からは胃腸炎などの病気と判別しにくいため、早期発見が難しいといわれています。では、日頃からどういった症状やお子さんの変化に目を配ればよいのでしょうか。
今回は、埼玉県立小児医療センターの小児外科において科長を務める川嶋 寛先生に、急性虫垂炎の概要や着目すべき症状などを中心にお話を伺いました。
急性虫垂炎とは、腸管の一部である虫垂に炎症が起こる病気で、盲腸とも呼ばれています。虫垂は、右下腹部にある虫が垂れ下がったように見える袋状の臓器です。
虫垂に炎症が生じる原因はさまざまです。たとえば、腸炎から虫垂に炎症が波及したり、虫垂に糞便がたまってしまったりして炎症をきたすケースがあります。
小児の急性虫垂炎は、10歳~中学生あたりの年齢で比較的多く発症します。しかし、早いと4~5歳ほどで虫垂炎を発症するお子さんもいるため、年齢に捉われずお子さんの変化を見ることが大切でしょう。
虫垂がどのような役割を担っているのかまだ解明できていません。しかし、草食動物は虫垂が非常に大きく発達しており、虫垂を取ってしまうと死んでしまいます。したがって、食物繊維を溶かすのに必要な酵素、または消化液の分泌に関わる臓器ではないかと考えられています。
人間においては虫垂がなくても機能的に問題ありませんが、草食動物の例からも何かしらの役割は担っていると推察されています。
小児の急性虫垂炎は進行が早いため、なるべく早く見つけて、適切な治療を行うことが大切です。しかし、早期の急性虫垂炎の症状は胃腸炎などの病気と似ているので、症状から発見・診断することが難しいとされています。また、小さなお子さんが急性虫垂炎になったとしても、症状や違和感をうまく言葉で伝えることが難しいため、親御さんがお子さんの変化に注意する必要があります。
そこで、特徴的な症状や親御さんが着目すべき点を押さえながら急性虫垂炎の症状についてご説明します。
みぞおち(おへその上あたり)の痛みや気持ち悪さが初期症状として現れます。ただし、これらの症状は胃腸炎の症状と似ているため、初期症状の段階で的確に急性虫垂炎と判断することは患者さんも医師も難しいといえます。
初期の急性虫垂炎では、お腹の痛い場所が転々と変わることに加え、痛みの強さが一定しません。このような特徴的な痛がり方をお子さんがしたときは、急性虫垂炎を疑っていただいてよいでしょう。
時間の経過とともに徐々に腹部の痛みが右下腹部に集中していきます。また、炎症の進行によって軽い腹膜炎になると、腹膜の刺激症状や熱が出ます。すると、全体的に腸の動きが悪くなるので、気持ち悪さや嘔吐、下痢といった症状が現れるようになります。
特に、お子さんの場合は脱水症状を起こしてしまうと怖いので、発熱に加えて、食欲が落ちたり、吐いてしまったり、水を飲みたがらなかったりする様子がみられたら、急性虫垂炎を疑って病院を受診ください。
さらに症状が進むと、虫垂に穿孔(穴が空くこと)をきたします。穿孔すると、虫垂の中にたまっていた膿や腸の中のものがお腹の中にばらまかれることになり、急激に腹膜炎の症状が出ます。
腹膜炎になると、脱水症や敗血症(血液中に入り込んだ細菌によって引き起こされる全身感染症)を引き起こす恐れがあります。敗血症になると、低血圧や意識障害などになる危険があるだけでなく、術後の回復に時間がかかってしまうため、なるべく早い段階で急性虫垂炎に気付いて病院を受診することが大切です。
お子さんは脱水症になりやすいので、それを防ぐためにも嘔吐や下痢といった消化器症状がみられたら急性虫垂炎を疑って積極的に小児科を受診いただきたいと思います。ただし、先ほどお話ししたように初期の急性虫垂炎はほかの病気との鑑別が難しいため、診断がつかないことがあります。たとえ胃腸炎と診断されたとしても症状の改善がみられなかったら、何度も病院を受診いただくことが重要であると思います。
埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長
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