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急性虫垂炎の分類と診断の流れについて解説

急性虫垂炎の分類と診断の流れについて解説
川嶋 寛 先生

埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

川嶋 寛 先生

目次
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初期では胃腸炎などの病気と症状が似ているために、正確に診断することが難しい急性虫垂炎。特に小さなお子さんは症状をうまく言葉で伝えられないという点も診断が難しい要因の1つと考えられます。そのため、お子さんが急性虫垂炎で現れる症状を訴えたり、反応を示したりしたら、早期に病院を受診して、適切な検査を受けることが大切です。

今回は、埼玉県立小児医療センターの小児外科において科長を務める川嶋 寛(かわしま ひろし)先生に急性虫垂炎の分類と検査の流れについてお話を伺いました。

急性虫垂炎は、炎症の進行度によってカタル性・蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)壊疽性(えそせい)穿孔性(せんこうせい)とおおむね4つに分類されます。なお、穿孔(穴が空くこと)をきたした後は、腹膜炎を起こす、あるいは膿瘍(のうよう)を形成するという2通りの経過をたどることになります。いずれであってもいったん痛みが和らぎますが、後ほど痛みがぶり返すため、そこで放置しないで病院を受診することが重要です。

以下では、それぞれの分類の特徴と現れる症状について詳しくご説明します。

急性虫垂炎の初期であるカタル性では、炎症は粘膜のみに生じている状態です。カタル性の段階では腹部の痛みの位置や強弱が一定しません。

痛みの位置が右下腹部に限局してくる段階になると、カタル性から蜂窩織炎性に移行する時期と考えられます。蜂窩織炎性では、虫垂の壁(虫垂壁)の全層にわたって炎症が及んだ状態になります。

壊疽性まで炎症が進行すると虫垂が太く腫れ、虫垂壁の構造が壊れ始めます。この段階では、右下腹部に強い痛みが出たり、発熱したり、嘔吐や下痢などの消化器症状が悪化したりします。腹痛や発熱に加えて消化器症状がある場合には、急性虫垂炎を疑って小児科を受診ください。

炎症がさらに進むと虫垂に穿孔をきたします。穿孔すると、虫垂内にたまっていた膿がお腹全体に広がって腹膜炎が起こる場合と、虫垂の周りに膿がたまる膿瘍形成の状態になる場合があります。

腹膜炎

虫垂が穿孔したことによって、破裂寸前であった壊疽性の段階に比べると一瞬痛みが和らいだと感じてしまうことがあります。これは、穿孔してから腹膜炎が進行して痛みが出るまで数時間のタイムラグがあるからです。したがって、痛みが少し引いたからといって放置せず、速やかに小児科を受診しましょう。

膿瘍形成

穿孔した後、膿瘍を形成する場合には、腹膜炎を起こす場合よりも劇的な症状が現れません。腹痛や発熱は続きますが、少し軽くなるため、壊疽性のときよりも症状が穏やかになったように感じます。しかし、穿孔から1週間ほど経過すると固い膿のたまり(膿瘍)がお腹の中でだんだんと大きくなっていくので、下腹部に痛みや張り、違和感が現れます。

少し症状が穏やかになったと思って膿瘍をそのままにしてしまうと、最終的に腹膜炎を起こしますので、いったん腹痛などの症状が軽くなったからといってそのままにしないことが重要です。

PIXTA
画像提供:PIXTA

まずは問診でどういった症状が出ているかを確認します。次に、腹部X線を撮影してお腹に異常がないかを確認した後、超音波検査を行います。超音波検査では腸の裏に虫垂が隠れてしまっている症例などは見つけることが難しいので、その場合には造影CT検査を実施して、より詳細な画像を撮影します。

これらの検査と並行して、血液検査で炎症の有無、脱水症になっていないか、腎機能や肝機能に問題がないかなどを調べます。このように画像診断の結果と血液検査の結果で急性虫垂炎を診断していきます。

当院では、救急にいらしたお子さんをまずは救急診療科の医師が診察しますが、そこで急性虫垂炎を疑った患者さんに関しては、小児外科の医師に引き継ぐ体制を整えています。また、当院は放射線科の医師をはじめとするスタッフが積極的に検査・診断を行っています。画像診断の専門知識を有する放射線科の医師が診断に入ることで、正確な診断につながっているのが当院の特徴といえるでしょう。

これからも複数の診療科との連携を強化することで、診断精度の向上や適切な治療の提供に努めてまいります。

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