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先天性嚢胞性肺疾患の種類――肺分画症や肺気道奇形などそれぞれの特徴は?

先天性嚢胞性肺疾患の種類――肺分画症や肺気道奇形などそれぞれの特徴は?
川嶋 寛 先生

埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

川嶋 寛 先生

目次
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嚢胞性肺疾患(のうほうせいはいしっかん)とは、肺の中に袋のような変化がみられる病気で、生まれつき発症する先天性嚢胞性肺疾患と、生後なんらかの原因で発症する後天性嚢胞性肺疾患があります。嚢胞性肺疾患はほとんどが先天性であり、肺が作られていく過程で起こります。基本的に良性の病気ではあるものの、きちんと診断を行い、適切な時期に治療を行う必要があります。また、病変の位置(肺の中だけなのか、肺の外にも広がっているのか)や程度によって、肺分画症や先天性肺気道奇形(Congenital Pulmonary Airway Malformation:CPAM)などさまざまな種類に分けられるのが特徴です。今回は埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長である川嶋 寛(かわしま ひろし)先生に、嚢胞性肺疾患の種類についてお話を伺いました。

肺は呼吸をつかさどる器官で、胸の部分に左右1つずつあります。肺葉というブロックに分かれており、右肺は上葉・中葉・下葉の3つ、左肺は上葉と下葉の2つから構成されています。また、右肺と左肺の間は縦隔(じゅうかく)と呼ばれ、心臓や気管などが存在します。肺の中には気管から分かれた気管支が広がり木の枝のように細かく分かれていき、その末端には肺胞(はいほう)という小さな袋があります。

口や鼻から吸った空気は、気管・気管支を通って肺胞に入ります。この肺胞で空気中の酸素を血液中に取り入れ、体内で作られた二酸化炭素を排出するガス交換を行います。ガス交換は、生命を維持していくうえでは欠かせない機能で、肺はその重要な役割を担っているのです。

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画像提供:PIXTA

嚢胞性肺疾患とは、肺の中に嚢胞(のうほう)という、空気で膨らんだ袋のような構造がみられる病気で、生まれつき発症する先天性嚢胞性肺疾患と、生後なんらかの原因で発症する後天性嚢胞性肺疾患があります。後天性嚢胞性肺疾患は、気管支炎を長期にわたり繰り返し起こした方や免疫疾患に起因して発症する場合が多いため割合としては少なく、小児の場合はそのほとんどが先天性嚢胞性肺疾患です。

先天性嚢胞性肺疾患は、大きく肺分画症と先天性肺気道奇形(Congenital Pulmonary Airway Malformation:CPAM)に分けられます。

肺分画症の中には肺葉内肺分画症と肺葉外肺分画症があり、CPAMの中には気管支閉鎖症や気管支性嚢胞などがあります。肺分画症とCPAMの大きな違いは、病変の位置と異常血管の有無です。肺分画症では肺の外にも病変がみられ、異常血管が大動脈から分画肺(異常肺)へ向かって入っていきます。一方CPAMでは、病変は肺の中だけにみられ、異常血管がありません。

上記の主な先天性嚢胞性肺疾患について、その特徴を1つずつご説明します。

異常な血管と異常な肺(分画肺)が形成される病気です。分画肺は口から肺へと続く空気の通り道がつながっておらず、通常の肺とは異なり大動脈から直接栄養を受け取っています。

肺葉内肺分画症

肺葉内に別の肺(分画肺)ができる病気です。分画肺と正常な肺はつながって存在しているため、肺静脈が肺の血管を通り、肺静脈と分画肺の血流が肺静脈側に全て流れるのが特徴です。

肺葉外肺分画症

肺の外にまったく別の肺(分画肺)ができる病気です。肺葉内肺分画症とは異なり、分画肺は正常な肺から独立した形で存在しているため、分画肺へ入ってくる血管や出ていく血管が正常な肺を通りません。

肺の中の狭い範囲に、もしくはあちらこちらに肺胞病変が発生する病気です。ほとんどの場合が片肺に発生しており、右肺・左肺どちらにおいても下葉に病変がみられることが多いです。画像診断上では、比較的小さい嚢胞が1か所に集まり、塊となった病変が肺の中にみられるという特徴があります。

気管支閉鎖症

嚢胞によって、気管支が塞がれてしまう病気です。CPAMに比較して大きな嚢胞ができる傾向にありますが、気管支のどの分岐部分が閉鎖するかによって病変の大きさは変わります。また、非常に限られた場所に病変があるのが特徴です。

気管支性嚢胞

気管支に嚢胞ができますが、閉鎖を伴わない病気です。病態としては気管支閉鎖症と類似していますが、気管支閉鎖症は中枢に近くて比較的大きい気管に嚢胞ができるのに対して、気管支性嚢胞では比較的末梢(まっしょう)の気管の閉塞(へいそく)、もしくは気道の狭窄(きょうさく)(狭くすぼまること)に伴って嚢胞ができます。また、嚢胞はCPAMよりも大きいのが特徴です。

後天性嚢胞性肺疾患は、後天的な要因(肺炎を繰り返す、免疫に異常がある、喘息気管支炎を起こしやすい、肺に腫瘍(しゅよう)があるなど)によって起こる嚢胞性肺疾患です。小児期ではほとんどみられず、性差は特にみられません。成人期の発症が比較的多く、喫煙や職業、地域差などが発症に関係する可能性があると考えられています。

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  • 埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

    川嶋 寛 先生

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