概要
肺は肺胞という小部屋が集まってできており、肺胞に空気が入ることで酸素を血液中にとりこんでいます。小さい肺胞がたくさん集まっていることで、空気と接する表面積を増やしているわけです。
嚢胞性肺疾患とは、肺に大きな中空の袋のような構造ができることです。袋は1cm以下の場合もあれば、鶏の卵ぐらいの大きさのこともあります。また、肺がおさまる空間(胸腔、肋骨で囲まれたスペース)を押しつぶすほどの大きさのこともあります。
袋の中には、空気が入っていることもあれば、液体で満たされていることもあります。
原因
生まれつき、肺の構造に異常がある場合や細胞をつなぎ止める結合組織が弱い病気(マルファン症候群など)のために、肺が脆くなる場合もあります。
また、肺炎・肺結核・寄生虫感染などによる肺の炎症が起こったことで肺胞の壁が崩れ、袋ができる場合もあります。原因が不明の場合もあります。
生まれつき、肺の構造に異常がある場合、肺分画症、先天性嚢胞状腺腫様奇形、気管支原性嚢胞、気管支性嚢胞などと分類されます。
症状
袋(嚢胞)が小さければ特に症状はなく、偶然レントゲン写真を撮影したことで発見される場合があります。
袋が大きい場合、ほかの肺や周辺の臓器を押し、以下のような症状がみられることがあります。
- 息苦しい
- 呼吸がゼイゼイいう
- 胸が痛い
など
また、袋の壁は弱いため破裂することがあります。袋が破裂すると、口から吸いこんだ空気が胸腔の内部で肺の外に漏れ出し、胸腔内に溜まってしまいます(気胸)。気胸が増悪し、空気による肺の圧迫が強くなることでも息苦しさが現れます。
袋に感染症が起こることもあり、その場合は、熱・痰・咳などがみられます。
検査・診断
生まれつきの場合、妊娠中に胎児に対して行われる超音波検査でわかる場合があります。
生まれてからの検査では、単純レントゲン、CTなどで判明します。袋(嚢胞)には、通常とは違う血管から血液が送られている可能性もあり、どの血管から血流が届いているかを調べるために、血管造影検査が行われる場合もあります。
血管造影検査では、レントゲンを通しにくい造影剤を血管から注射し、造影剤が行き渡る様子をレントゲンで撮影します。さらに、呼吸機能検査で異常を認めることもあります。
治療
以下のような場合、手術で袋を切り取ることを検討することがあります。
- 息苦しさなどの症状がある場合
- 周辺の臓器を押している場合
- 破れて問題を起こしそうな場合
- 気胸を起こしている場合
など
生まれつきの嚢胞性肺疾患の場合、妊娠中に診断がつけば生まれてから治療の計画を立てるため、小児外科医のいる施設での精密検査が望ましいといわれています。
手術は胸を大きく切って行う開胸手術ではなく、胸に小さい穴を開け、細い器具を入れて手術を行う胸腔鏡手術が増えています。
感染症がある場合は、抗生物質や痰を取る薬を使います。感染症を繰り返す場合も手術の適応になります。
医師の方へ
「嚢胞性肺疾患」を登録すると、新着の情報をお知らせします